脳が塩分と水分の欲求を管理する仕組みを解明
Decoding How the Brain manages the Appetite for Salt and Water
https://www.sciencedaily.com/
Source: Tokyo Institute of Technology 2024.01.26
水分補給と適量の塩分の摂取は、人間を含む陸生動物の生存に不可欠である。人間の脳には、興味深い方法で喉の渇きと塩摂取の欲求を調節する神経回路を構成する領域がいくつかある。
これまでの研究では水や塩の摂取は、消化器系が摂取した物質を吸収する前に喉の渇きと塩分への欲求を急速に抑制することが示唆されており、飲水や摂食に応じて喉の渇きと塩分への欲求をリアルタイムで調製するのに役立つ感知およびフィードバック機構が消化器系に存在することを示している。残念ながら、この主題に関する広範な研究にもかかわらず、これらの根本的なメカニズムの詳細は依然として不明のままである。
この問題を解明するために、日本の研究チームは最近、消化器官から送られる摂取信号を脳に中継する中枢である傍腕核について詳細な研究を行なった。東京工業大学の松田隆志助教授が筆頭著者である最初の論文は、2024年1月23日にCell Reportsに掲載された。
研究者達は遺伝子操作されたマウスを使用して一連の生体内実験を行なった。研究者達はこれらのマウスにオプトジェネチックス(およびケモジェネティクス)改変と生体内カルシウム・イメージング技術を導入し、光(および化学物質)を使用して側方PBNの特定のニューロンの活性化または抑制を視覚化し、制御できるようにした。実験中、研究者達はマウスに(通常の状態、または水分や塩分が不足した状態で)水および/または塩水を与え、対応する飲水行動とともに神経活動をモニタリングした。
このようにして研究チームは、水と塩の摂取時に活性化するLPBN内のコレシストキニンmRNA陽性ニューロンの2つの異なるサブポピュレーションを特定した。水摂取に反応するニューロン集団はLPBNから正中視索前核に投射し、塩摂取に反応するニューロン集団は分界条の腹側床核に投射する。興味深いことに、研究者が光遺伝学(光を使用した遺伝子制御)実験を通じてこれらのニューロン集団を人工的に活性化すると、マウスは以前に水や塩が不足していた場合でも、飲む水の量が大幅に減り、摂取する塩の量も減った。同様に研究者がこれらのニューロンを化学的に阻害すると、マウスは通常よりも多くの水と塩を摂取した。
したがって、LPBNのこれらのニューロン集団は、水分や塩分の摂取時に喉の渇きや塩欲求を減らすフィードバック機構に関与しており、水分や塩分の過剰摂取を防ぐのに役立つ可能性がある。これらの結果は、これまでの神経学的研究と併せて、MnPOとvBNSTが喉の渇きや塩欲求の制御センターであり、他のいくつかの脳領域からの促進信号と抑制信号を統合していることも明らかにしている。「水分と塩分の摂取行動を制御する脳のメカニズムを理解することは、神経科学と生理学の分野における重要な発見であるだけでなく、水中毒、多飲症、塩感受性高血圧など、水分と塩分の過剰摂取によって引き起こされる疾患の根底にあるメカニズムを理解するための貴重な洞察にもつながる。」と松田博士は述べている。
野田教授は「体液恒常性を司る神経機構には未解明な点が多く残されている。MnPOやvBNSTに蓄積された水分や塩分の摂取を促したり抑制したりするシグナルがどのように統合され、摂取行動を制御するのかを解明する必要がある。