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塩の結晶がリアルタイムで形成される様子を原子解像度で

撮影したビデオ

Atomic Resolution Video of Salt Crystals Forming in Real Time

https://www.sciencedaily.com/

Source: University of Tokyo   2021.01.21

 

原子分解能のリアルタイム・ビデオと円錐状のカーボン・ナノチューブの閉じ込めという2つの新しい技術により、研究者達は結晶形成に関するこれまで見たことのない詳細を見ることができる。この観察は、塩の結晶がどのように形成されるかについての理論的予測を裏付けるものであり、結晶形成が、無秩序な化学混合物から異なる秩序ある構造を生み出す方法に関する一般理論に情報を提供する可能性がある。

 

 結晶には、雪の結晶、塩の粒、さらにはダイヤモンドなど、身近な物が沢山ある。結晶は、構造分子の規則的で反復的な配列であり、それらの分子の混沌とした海から成長する。この無秩序な状態から秩序のある状態への成長プロセスは核形成として知られており、何世紀にもわたって研究されてきたが、原子レベルでの正確な進行は、これまで実験的に確認されたことはなかった。

 分子を原子レベルで観察できるだけでは十分でなない。その能力は数十年前から存在している。結晶の成長は動的なプロセスであり、その成長の観察は構造の観察と同じくらい重要である。幸いなことに、東京大学科学部の研究者達、単一分子原子分離能リアルタイム電子顕微鏡法、つまりSMART-EMでこの問題を解決した。これは化学プロセスの詳細を毎秒25枚の画像でキャプチャする。

 「我々の修士課程の学生の1人、Masaya SakakibaraSMART-EMを使用して塩化ナトリウム(NaCl)の挙動を研究した」と特任助教授のTakayuki Nakamuroは述べている。「サンプルを固定するために、我々は以前に発明した原子の厚さのカーボンナノホーンを使用している。Sakakibaraが撮影した素晴しいビデオを見て、我々はすぐに結晶核形成の構造的および統計的側面をこれまでにない詳細さで研究する機会があることに気付いた。」

 Nakamuroと彼のチームは、Sakakibaraが撮影した動画を見て、ナトリウム・イオンと塩化物イオンの混沌とした混合物から数十個の塩化ナトリウム分子でできた小さな直方体の結晶が出現するのを初めて目撃した。彼等はすぐに結晶が出現する頻度に統計的なパターンがあることに気付いた。それは、長い間理論化されてきたが、実験的に検証されたのは今になってからである。

 「塩は核形成現象の基礎を探るための最初のモデル物質にすぎない。」とEiichi Nakamura教授は語った。「塩は一方向にしか結晶化しない。しかし、炭素などの他の分子は複数の方法で結晶化でき、グラファイトやダイヤモンドになる。これは多形性と呼ばれ、これにつながる核形成の初期段階を見た人はいない。我々の研究が多形のメカニズムを理解する第一歩となることを願っている。」

 ただし、研究チームはダイヤモンドだけを念頭に置いているわけだはない。結晶成長における多形性は、一部の医薬品や電子部品の製造にも不可欠なプロセスである。