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ナトリウム・ベースの電池技術

Sodium-Based Battery Technology

By Erik D. Spoerke, Martha M. Gross, Leo J. Small, Stephen J. Percival ,

 Sandia National Laboratories

https://www.sandia.gov/ より

 

要約

 低コスト電気エネルギー貯蔵に対する需要の高まりは、大型貯蔵システムで安価なナトリウムを使用する電池技術への大きな関心を高めている。今日の潜在的に実行可能な候補技術には、比較的成熟した溶融ナトリウム電池と新しいナトリウム・イオン電池が含まれる。まだ比較的高価であるが、ナトリウム-硫黄(NaS)や塩化ナトリウム・ニッケル(Na-NiCl2)何百万ドルの溶融ナトリウム電池の化学的性質は数百メガワット時の規模で世界に展開するに十分なほど技術的に成熟している。これらの技術の重要な用途には消費者、商業、および産業用エネルギーの利害関係者の需要に応えながら、再生可能エネルギーの統合、バックアップ電源、および追加の電力網サービスが含まれる。学界、国立研究所、業界で研究開発の努力が続区中で、安全で費用対効果の高い溶融ナトリウム電池の普及と新しいナトリウム・イオン・ベース電池の導入は進化するエネルギー貯蔵業界の重要な要素になると予想される。

 

1.    はじめに

 ナトリウムは地球上で6番目に多い元素で、世界的に幅広く分布しており、産業物質として大規模に既に生産されているので、コスト効果のある大規模エネルギー貯蔵用の魅力的な成分である。今日、商業的に関連するナトリウム電池は大きく2つの主要なクラスに分類される:溶融ナトリウム電池とナトリウム・イオン電池である。ここではナトリウム利用への両方のアプローチについて説明するが、溶融ナトリウム電池の商業化と展開は現在ナトリウム・イオン・システムよりも進んでいる。

11.溶融ナトリウム電池

 溶融ナトリウム電池の研究開発は1960年代後半にナトリウム-硫黄(NaS)電池で始まり、続いて1970年代にナトリウム金属ハロゲン化物電池(最も一般的にはナトリウム-ニッケル塩化物)で、ZEBRA電池(ゼオライト電池研究アフリカ・プロジェクトまたはごく最近ではゼロ・エミッション電池研究活動)としても知られている。図1に概略的に示されているように、両方のシステムは溶融ナトリウム陽極とセラミック・ナトリウムイオン伝導性固体分離器、最も一般的にはβアルミナを利用するが、いずれの場合も溶融陰極の化学的性質は下に説明するように大きく異なる。

   原報コピーできないため図1は省略

 

12.ナトリウム-硫黄(NaS)電池

 電池の電気化学的サイクリング中に、NaS電池はナトリウムを酸化 (放電) と還元(充電)し、溶融硫黄の可逆的還元(放電)と酸化(充電)に依存している。典型的な放電反応中に酸化されたNa+は陽極からイオン伝導性セラミック・セパレーターを通過し陰極で還元された溶融硫黄(または多硫化物)と反応する。この反応により、化学的に循環される溶融多硫化物(例えば、Na2S5)が生成される。

    xS + 2Na Na2Sx( 3 x 5 )      Ecell ~ 2.08 V  at 350℃   (1)

< 3の値で不溶性(固体)の多硫化物が形成され電池の性能が低下する。その結果、これらの電池は理論的な容量の約半分に制限される。しかし、反応物としての硫黄の低コストは、容量制限を回避するために陰極を過剰構築することが合理的である。

13.塩化ナトリウム・ニッケル(Na-NiCl2またはZEBRA)電池

 NaS電池のようにZEBRA電池は陽極でのナトリウムの酸化還元に依存し、BASEセパレーターを使用するが、陰極でのニッケル金属の酸化還元に依存している。特に陰極反応は金属ハロゲン化物溶融塩電解質でサポートされている。伝統的にNaCl(塩化ナトリウム)AlCl3(三塩化アルミニウム)が結合してNaACl4(テトラクロロアルミン酸ナトリウム)を形成する。そのためこれらの電池はナトリウム金属ハロゲン化物電池または溶融塩電池あるいは単に塩電池とも呼ばれる。このシステムの総合的な電気化学反応は下記のようになる。

NiCl2(s) + 2Na(l) 2NaCl + Ni(s) Ecell ~ 2.58 V  at 300℃   (2)

この場合、陰極の化学的性質は完全に液体のままではない;電気化学サイクリングは固体(塩化ニッケルでコーティングされた)ニッケル粒子および固体塩化ナトリウム粒子さえも生成させる結果となる。これらの電池はBASEセパレーターの高い誘電率を維持し、溶融塩陰極液の溶融状態を確保するために300℃付近でも動作する。これらの高温(270300)では、NaSシステムに見られる多硫化ナトリウムよりも腐食性は低いけれど、溶融塩の潜在的な腐食性について懸念がある。高温では、電気化学サイクル中の固相の不可逆的な成長(粗大化)に関連する問題もあり、これは時間経過とともに容量の損失につながる可能性がある。

14.ナトリウム・イオン電池(NAIBs)

 溶融ナトリウム電池は比較的成熟した技術として成長し続けているが、ナトリウム・イオン電池は大規模商品化に向けて進歩し続けている。多くの開発者はリチウム・イオン電池に対するより安全な代替品として、携帯用電化製品や電気自動車用の用途を含めてナトリウム・イオン電池を構想している。しかし、本節で焦点は電力網用途用のシステム開発に残る。ナトリウム・イオン電池は上述した溶融ナトリウム電池とは動作が違って、電気化学はリチウム・イオン電池のそれにより緊密に似ている。これらの電池は通常室温で動作し、遷移金属陰極、非選択性で電気的に絶縁性の多孔質ポリマー・セパレーター、カーボンまたはチタン酸陽極および有機性または水溶液電解質を採用している。電池機能は放電中にナトリウム・イオンを陰極に、充電中には陽極に交互に挿入することを含んでいる。前に述べた溶融ナトリウム電池と違って、セパレーターは選択的な固体材料である必要はない;これらの電池はより成熟したリチウム・イオン技術で使用されているのと同じタイプの多孔質ポリマー材料を使用できる。セパレーターは主として陽極と陰極との間の物理的接触と電気的短絡を防ぐのに役立つ。

 リチウム・イオン電池との類似性にもかかわらず、これらのシステムと対応するリチウム・イオン電池にはいくつかの重要な相違がある。第一に、リチウム・イオン・システムよりも一般的により安全であると考えられている。主に揮発性のより低い電解質と陰極用に異なった酸化物を使用しているためである。さらに、一部のナトリウム・イオン電池は完全に放電できるため、システムを例えば空気で移動させられる。ナトリウム・イオン電池の陰極はリチウム・イオン・システムのそれらとも異なっており、しばしばコバルトまたはニッケルの使用に依存しない。これら2つは潜在的に高価で多くのリチウム・イオン・システムの地政学的に限られた成分である。これらのシステムのカーボン陽極は市販のリチウム・イオン電池で好まれているグラファイト・カーボンとも異なる。これらが重要なナトリウム・イオンの挿入に対応していないためである。その代わり、無定形の「硬質炭素」がナトリウム・イオン電池でしばしば使われる。最後に、リチウム・イオンと比較してナトリウム・イオンのサイズが大きいこととナトリウムのわずかに小さい還元電位により、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオンの対応物よりもエネルギー密度が低いと一般的に予想されるが、個の測定基準は様々な程度のイオン挿入と電池技術によって対応できる。重要なことに、電池組成のこれらの微妙な違いにもかかわらず、ナトリウム・イオン電池は大規模なリチウム・イオン電池生産ラインで製造される可能性があると期待されることは合理的である。

 

.    現在の最先端

 現在、NaSNa-NiCl2だけが商業的に成熟した電力網技術である。これらの両方の技術はエネルギーの数メガワット時から数十メガワット時までのエネルギーを蓄えるために拡大できるモジュラー・ユニットとして建設される。これらのシステムは図1に示す簡略された「平面」電池設計を採用していない。今日広く使用されている両方の商業用システムでは、製造者は末端を封鎖した管状(しばしばクローバーの葉の断面)セパレーター設計を使用している。日本ガイシ株式会社により開発された「NAS」システム (2) の場合、ナトリウム陽極はセラミック・セパレーター管の内側に配置され、硫黄陰極は管の外側を囲んでいる。次に、これらのセルの多くは1つのモジュールにまとめられ、モジュールは外部の電力変換システムを介して取り付けられて制御されるより大きく拡大できるコンテナ内にまとめられる。これらの設計は拡大可能な高パッケージ・エネルギー密度を提供しながら電池組立と操作を簡素化する。

      原報コピーできないため図2は省略

 これらの電池の主要な諸元を表1にまとめる。これらの数値が示すように、NaSシステムは高いエネルギー密度、拡大性(数十から数百メガワット)、迅速な応答時間(1秒以下)6 – 7時間にわたる放電能力(定格電力)、および合理的な往復エネルギー効率となっている。堅牢で自己完結型システムとして10 15年間「メンテナンス・フリー」と見做され、合計4,000 – 4,500サイクルが見込まれる (80%の放電深度) (日本ガイシは15年間について年間300サイクルを見込んでいる)

 

表1 市販溶融ナトリウム電池の典型的な諸元の比較

 

実用エネルギー密度

予想サイクル寿命 (80%放電深度でのサイクル)

予想運用寿命  ()

運用温度 ()

放電時間 (定格電力)

往復効率

NaS

300 - 400

4,000 - 4,500

15

300 - 350

6 - 7時間

80%

Na-NiCl2

150 - 190

3,500 - 4,500

20

270 - 300

2 - 4時間

80 - 85

 

2.1.ナトリウム-硫黄電池

 今日までNaS電池の普及は幾つかの選択された要因によって制限されてきた。第一に、これらの電池は300℃付近またはそれ以上で動作し、そのことによりナトリウムおよび硫黄/多硫化物陰極液の溶融特性だけでなく、BASEセパレーターの低いイオン抵抗も保証される。直感に反するかもしれないが、システムはこの高温を効率的に制御および維持するように設計されているため、他のほとんどの技術(-20℃~+40)よりも広い範囲の環境温度で機能する。しかし、あまり望ましくないが、高い作動温度では硫黄/多硫化物陰極液は非常に腐食性であり、セパレーターの故障、溶融ナトリウムと硫黄陰極液との反応は大規模システムで熱暴走を引き起こす可能性がある有毒で高発熱性の火災を引き起こす可能性がある。セパレーターの故障や短絡が発生した場合の発熱暴走状態をさらに制限するために、追加のセルとともにこのような腐食に耐性のあるハウジング材料、それらのコーティングおよびシーリング材料のエンジニアリングに多大な努力が払われてきた。事実、20119月にNASつくば工場(茨城県常総市)で発生した「火災事件」以来、この技術による大規模な火災は認められていない。残念ながら、高温材料の要件に対応するために必要な技術的な解決策とシステムの安全性向上はこれらの電池の比較的高いコストに貢献している。現在のコストは、2025年までに500ドル/kWh以下にコストを低下させられるプロジェクトで600 – 700ドル/kWhと推定される。これらの先行資本支出コストは現在のリチウム・イオンまたは鉛酸の代替品よりも比較的高くなるが、これらのシステムの長期間の放電、最小限のメンテナンス、および長いサイクル寿命によりこれらのシステムが実現するはずである。システムの存続期間にわたってコストを償却できるように長期的な用途にとってより魅力的である。

2.2.塩化ナトリウム・ニッケル電池

 表1に要約されているように、Na-NiCl2電池はNaSシステムの多くの優れた特性を共有しており、好ましいエネルギー密度、長いサイクル寿命、メンテナンスがほとんど、または全く要らない長いカレンダー寿命、および優れた往復効率を備えている。再び、これらの電池は270℃付近で動作するが、周囲の温度が著しく変動する環境(-40℃~60)で使用できる。ただし重要なことに、Na-NiCl2電池はNaS電池よりも「本質的に」安全であると見做されている。溶融塩と溶融ナトリウム陽極との間の反応は暴走する発熱挙動を引き起こさず、有毒な副作用を生成し、または危険な揮発性物質を生成しない。最近Na-NiCl2電池システムを発表した電池生産者のFZSoNick (3)UL 9540A (電池エネルギー貯蔵システムにおける熱暴走火災電波を評価するための試験方法)の認定を受け、相対的な固有の火災安全性を証明している。FZSoNickはこれらの電池は無害で安全にリサイクル可能であると見做されていることも宣伝している。クラスとしての溶融ナトリウム電池は金属ナトリウムと空気および水との強い反応性に関連する懸念を引き起こすことが多いことに注意する必要がある。ただし、これらの懸念は環境への暴露を防ぐためにセルを適切にパッケージ化して密封することで大幅に対処できる。さらに電池組立あるいは輸送などの問題については、電池が放電状態で組立および/または輸送される場合、大量の金属ナトリウムを必ずしも処理する必要はない。

      原報コピーできないため図3は省略

 NaSシステムと同様に、Na-NiCl2電池のコストが比較的高いため普及が制限されている。高温運転は依然としてより高価な材料と工学的要件を必要とし、ニッケルの比較的高いコストは他の技術よりもコストを高くする。それらは現在、年間100万セル以上の製造能力を維持しているFZSoNickによって製造および供給されている。これらの電池の推定コストは約700ドル/kWhであり、これらのコストは2025年までに500ドル/kWh未満に低下する可能性があると予測されている。ゼネラル・エレクトリック社は当初Durathonとして知られているZEBRA電池製品を開発したが、この技術が商業的に大幅に普及することはなかった。中国のエネルギー貯蔵会社Chilweeは最近、Durathon技術を買収し、より総合的な電池製造努力の一環として、これらの電池の製造を開始する計画を発表した。ドイツのFraunhofer Institute for Ceramic Technologies and Systemsは配電網用のエネルギー貯蔵用に独自のNa-NiCl2電池プラットホーム(Cerenergy)も開発した。彼等はセル設計を適応させてこれらのシステムの材料化学を改善し、コストを削減する取り組みを宣伝しているが、現在、これらのシステムは広く展開されていない。

23.ナトリウム・イオン電池

 配電網規模の用途向けの商業的に成熟した技術とはまだ考えられていないが、現在開発中または生産中のナトリウム・イオン電池にはいくつかの種類がある。ここで説明する技術は実用に向けて大幅な進歩を遂げているが、これらは学界、国立研究所、および新興産業で開発中のすべてのナトリウム・イオン電池の完全なリストを表すものではない。ここでは、電極材料としてプルシアン・ブルー・アナログ(PBAs)を使用したナトリウム・イオン電池、リチウム・イオン電池で使用されているものと直接類似した電極材料をした電池、および水性電解質を使用した電池について簡単に説明する。

 PBAsは陰極として主に使用されるフェロシアン化第二鉄塩で構成される材料であるが、陽極材料としても使用できる。PBAsは体積変化を最小限に抑えて、材料に出入りするNa+イオンの急速な移動に対応するために大きなチャネルを備えた立方晶構造で構成されている。これはこれらの材料に高い比容量、高い比能力、および高いサイクル安定性という利点を与える。さらに製造に必要な水性共沈法により製造コストが低くなる。シアン物イオンが存在するにもかかわらず、シアン物は鉄にしっかりと結合しているため、PBRはほとんど毒性がない。それらの主な欠点である低い結晶密度は体積エネルギー密度が比較的低くなる可能性がある特定の配電網貯蔵用途に受け入れられる。カリフォルニアを拠点とするスタートアップのNatron Energyは現在様々なグレードのPBRを使用するナトリウム・イオン電池を開発しており、データ・サーバーのバックアップ電源に8 kwユニットを導入している。

 リチウム・イオン電池の類似品は既存の大規模なリチウム・イオン電池生産ラインを使用することで迅速な展開と低CAPEXの可能性があるため、人気のある開発分野である。ある会社、中国を拠点とするNiNa Battery Technologyはこれを活用して設立から2年以内に10,000を来れるプロトタイプを作成し、現在、熱分解された無煙炭陽極とコバルトおよびニッケルを含まない層状遷移金属酸化物陰極を備えた100 kWhナトリウム・イオン電池システムを実証している。初期のナトリウム・イオン電池スタートアップ企業の1つであるイギリスを拠点とするFaradion2011年の設立以来、ナトリウム-ニッケル層状酸化物陰極を備えた50 kWhを超えるプロトタイプの製造に成功している。

 水性電解質を使用するナトリウム・イオン電池は水性電解質に起因する低コストと高い安全性、および水性媒体内でのより速いイオン輸送のために電力網貯蔵用途にとって特に魅力的である。このようなシステムは環境に優しい化学作用を誇り、「塩水電池」と呼ばれることが良くある。ペンシルヴァニアを拠点とする企業であるAquion Energy2017年に第11章の破産とリストラを申請する前に、MW規模の水性「Aspen」電池システムの世界的な展開に成功した。彼等のシステムは炭素チタンリン酸複合陽極、過塩素酸ナトリウム水性電解質、および酸化マンガン陰極を使用していた。非常に良く似たシステム(Greenrock Saltwater Battery)はオーストラリアのBlueSky Energyによって販売されているようである。

 ナトリウム・イオン電池は配電網規模のエネルギー貯蔵スペースにおける比較的新しい技術であり、主に研究開発および実証段階にある。多くの企業が電池を市場に出すための最初の一歩を踏み出しており、前述のものは包括的なリストではない。バックアップ電力システムやマイクログリッド用のエネルギー裁定取引などの電力網貯蔵のデモンストレーションは進行中であり、ナトリウム・イオン電池技術が近い将来にエネルギー貯蔵パズルの別のピースを提供するという楽観的な味方を示している。

 

3.配電網規模の電池導入

魅力的な高性能、長いサイクル寿命、および溶融ナトリウム電池の最小限のメンテナンスにより、これらのシステムは世界的に大幅に展開された。一般的にこれらの電池は負荷シフト、ピークシェービング、周波数調整、再生可能エネルギーの場合、電圧制御、およびバックアップ電源に適しているが、高速応答時間と長期間の保存を利用する実行可能な追加の用途が存在する場合がある。

31ナトリウム-硫黄電池導入

 現在、日本ガイシはNaS技術で唯一の重要な製造者のようである。2020年初頭の時点で、日本ガイシは世界中の200を超える場所で560 MW/4,000MWh貯蔵所を報告しており、これ等の設備の一部は10年以上にわたって正常に動作している。この技術を使用する用途は大きく異なり、産業用、商業用、および住宅用の貯蔵用途に対応している。現在のユーティリティの特定領域には再生可能エネルギーの安定化、投資の延期および補助サービス、マイクログリッドおよび遠隔地または島のコミュニティへの電力供給が含まれる。

 NaS展開の例として大規模な施設は日本の再生可能な風力および太陽光資産の統合をサポートする。34 MW/245 MWhシステムは日本の青森県六ヶ所村の51 MW風力発電所をサポートし、50 MW/300 MWhシステムは日本の九州、福岡の大型太陽光設備をサポートする(4)。福岡の太陽光設備は世界最大のNaSシステムであり、断続的な太陽エネルギー供給と変動するエネルギー需要のバランスをとるのに役立つ。福岡の設備は比較的新しい (2016) が、六カ所NaSシステムは2008年以来、断続的な風力発電の需給バランスをとるために運用されている旗艦プロジェクトである。

       原報コピーできないため図4は省略

 島やマイクログリッド用途の場合、日本ガイシのNaS電池は地域の再生可能資源(フランスのレユニオン諸島など)からのエネルギーを統合して安定させるために使用されているだけでなく、アメリカカリフォルニア州カタリナ島でのマイクログリッド操作のサポートも実証されている。この1 MWシステムは、需要がディーゼル発電を許容動作範囲(80100%の容量)外に押しやる場合に、ディーゼル駆動のエネルギー網をサポートする代替電力を提供する。

 イタリアでは、日本ガイシは取り組みの一環として送電システム・オペラのTerna S.p.A.と協力している。ディープ・サイクルが可能なNaS電池は送電混雑時に貯蔵バッファーを提供することにより長距離送電を容易にすることができた(5)

 これらはNaSシステムが送電網規模の貯蔵用途を実現する方法の一例である。これらの貯蔵機能の需要の高まり、研究開発が電池コストの削減に役立つため、展開の増加が予想される場合がある。

       原報コピーできないため図5は省略

32.塩化ナトリウム・ニッケル電池導入

 FZSoNickは周波数調整、負荷変動、ピーク・シェービング、バックアップ電力、再生可能エネルギーの統合に適した電池を備えた現在のモジュラー・システムを多数の大容量貯蔵用途用に展開し続けている。彼等は技術分野をエネルギー・バックアップ(48 V – 110 Vモジュール)、移動用途(車両) (300 V – 700 Vモジュール)、およびエネルギー貯蔵(48 V および620 Vモジュール)に分類している(6)。車両用途はこのハンドブックの焦点ではないが、これらのシステムは十分に安全であり、選択された車両用途に十分なエネルギー密度を持っていることに注意する。

       原報コピーできないため図6は省略

 FZSoNickNa-NiCl2システムを使用して電気通信、公共交通機関、および遠隔地用途にバックアップ電源を提供している。現在、FZSoNickは約100 MWhのエネルギー貯蔵と約2 MAhのバックアップ貯蔵容量を展開しており、元も重点を置いているのは電気通信のバックアップである。彼等は再生可能エネルギーの統合、マイクログリッド用途、および電力網サービス(電力網バランシング、電圧調整など)を可能にする「エネルギー貯蔵システム」で使用するために14 MWhを超える追加の貯蔵を展開した。

 バックアップ・エネルギー市場はこれらの電池が大規模システムとして最も重要な用途を見出している場所があり、北米、南米(7)、ヨーロッパ、そして程度が低いがアジアでの用途がある。例えば、アメリカではNa-NiCl2電池は2つの主要な携帯電話プロバイダーの17サイトにあるテレコム・データ・センターにスタンド・アロンのバックアップ電源を提供している。メキシコ、ザンビア、フィリピンでは、Na-NiCl2電池が通信システムのバックアップ電源を提供している。

        原報コピーできないため図7は省略

 大規模なエネルギー貯蔵システム用に、太陽光発電や風力などの再生可能エネルギーを支えるために、Na-NiCl2電池はモルティブ諸島(1.2MW)、チリのオヤグエ(560 kWh)、ギリシャのティロス(2.88 MWh)およびギアナのフレンチ(4.5 MWh)で使用されている。日本ガイシのNaSシステムについて前述したものと同様のプログラムで、FZSoNickTerna S.p.A.とも連携し、4.5 MWhシステムを使用してシチリア島とサルデーニャ島での送電を促進している。

 

4.新たな取組み

 現在、NaS電池とNa-NiCl2電池の両方が配電網規模の技術として展開されているが、研究開発の努力によりコストを削減し、溶融ナトリウム電池の安全で信頼性の高い性能を向上させる進歩が求められる。北西太平洋国立研究所(PNNL)は勧告のパートナーである韓国エネルギー技術評価計画研究所(KETEP)および産業科学技術研究所(RIST)と共同研究プログラムを実施しており、200℃未満で動作し、陰極での高価なニッケルの使用を排除し、ニッケルを鉄に置き換える。サンディア国立研究所の研究者達は溶融ナトリウム陽極とNaIベースの金属ハロゲン化物溶融塩陰極を使用する代替の低温から中温の電池を積極的に開発している。これらの電池の電気化学は陰極でのヨウ化物の酸化または還元に依存しており、全体的な電池の化学的性質は次の通りである:

   2Na + I-3  ↔ 2Na+ + 3I- Ecell3.24 V    120 – 180 ℃   (3)

 個のアプローチにより、NaSまたはNa-NiCl2の化学的性質と比較してセル電圧が増加し(エネルギー密度が増加する可能性がある)、ナトリウムの融解温度(97.8 )に近い温度で可能になる。

 これらの国立研究所主導の取組みは両方とも(熱暴走ではなく)安全のために設計された化学物質を使用し、これらの電池の作動温度を下げることを明確に目的としている。これにより高温で安定した電池構成要素の必要性が減少または排除され、保守に関するコストが削減される。電池の作動温度を酸素原子、電池の長期性能に悪影響を与える劣化や副作用を減らす。最終的には、より低温の解決策を見つけることで、このクラスの電池をより広く採用できるようになるが、これらの低から中程度のアプローチはいずれもまだ商業的な技術的成熟に達していない。

 水性または有機陰極液を使用して低温用途にアクセスする溶融ナトリウム電池の開発を提案する幾つかの報告がある。これらのシステムは電池性能に関するいくつかの重要な学術的洞察を提供する可能性があるが、セパレーターが故障した場合に溶融ナトリウムとこれらの材料との潜在的に激しい反応性により、商業開発の好捕となる可能性が低くなる。それでもこの問題を軽減できれば、これらは将来的にも実行可能な技術になる可能性がある。

 

5.要約と結論

 大規模な配電網規模のナトリウムをベースにした電池は溶融ナトリウム化学と様々なナトリウム・イオン化学の両方を使用して様々な形態を取ることが出来る。ナトリウム・イオン化学は急速に商業的に関連性が高まっているが、現在の成熟した技術には溶融ナトリウム硫黄(NaS)および溶融ナトリウム・ニッケル塩化物(Na-NiCl2)が含まれる。とのシステムでも国内で豊富なナトリウム金属陽極、セラミック・イオン伝導性セパレーター、および電気化学的に活性な溶融(または溶融懸濁液)陰極を使用している。これらの化学物質はそれぞれ300 ℃近くの高温で動作するため、選択した電池材料の候補とシステム設計が必要であり、その結果、比較的高いコストになる。しかし、これらの電池は数十年にわたるメンテナンスの少ない使用で、迅速な応答時間、数時間の放電時間、ディープ・サイクル放電、および長いサイクル寿命を提供することが期待される。これらの属性により2つの確立された一次電池製造者である日本ガイシ絶縁器やFZSoNickはそれぞれ数百MWhNaSおよびNa-NiCl2電池貯蔵を世界中に展開することができた。これらの電池は負荷変動、ピークシェービング、周波数調整、再生可能エネルギーの統合、電圧制御、およびバックアップ電源に適しており、産業、商業、および住宅の幅広いエネルギー貯蔵プロジェクトを可能にした。需要の継続的な成長と溶融ナトリウム電池とナトリウム・イオン電池の両方の技術における新たな革新により、ナトリウム電池が世界的なエネルギー貯蔵を推進する新たな機会が約束されている。