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塩摂取量:よく知られた物語のアドバイスを考える

最適な健康についての塩目標値はあるか?

Salt Intake: Taking Advice with That Proverbial Grain

Is There a Salt Setpoint for Optimal Health?

By Sylvia R. Karasu

Psychology Today 2017.05.09

 

  インドの海岸で製塩や塩の販売をインドに禁止し、経済力のないインド人が高価な輸入塩を購入するように要求したイギリスの規則に怒った60歳のマハトマ・ガンジーは1930年に西インドのスウォースからアラビア海まで240マイルを行進するグループを率いた(塩の無抵抗不服従運動)。“海岸で一握りの塩”を採取しようと彼と仲間達は“技術的に塩を作り”植民地法に従わなかった。彼が逮捕、投獄されたこの反抗はインドにおけるイギリスの規則に対する市民不服従運動でガンジーの最初の大きな一歩と考えられた。

 はるか古代から近代まで歴史は貴重で用途の広い日用品として塩の重要性の事例であふれている。少なくとも5,000年間、中国は塩の食品を保存する性質を認識していた。ローマ時代に塩は交易に使われた:‘サラリー’と言う言葉はラテン語の“サラリウム”に由来し、“塩を買うためにローマ兵士に与えられた給金”であった。歴史を通して、塩の不当な制限に対して反対する立場をガンジーのように人々は取ってきた。何世紀も前に始まった塩に掛けた税金(ガベル)は最終的にフランス革命を引き起こした一つの要因と信じている人々さえいる。

 聖書でも塩について多くの記述がある。多分、最も有名な物は旧約聖書のロトの妻の物語である。火と硫黄で破壊されていくソドムを振り返って見ないと言う神との約束に従わなかった妻は直ちに塩の柱に変えられる。新約聖書ではイエスは“山上の垂訓”で“地の塩であれ”と彼の弟子達に言っている。

 もっと最近では、望めば塩に関連した表現で英語の言葉を引き締める。例えば、“塩の価値”を持つことは能力または効率を示し;“傷に塩を擦りつける”は“創傷に痛みを加える”とこと意味し;“控え目に聞く”は“疑っている”ことを示唆している。ローリング・ストーンも1968年にアルバムBeggars Banquetで歌“地の塩”を書いた。

 それでは正確に塩とは何?我々の意図では一般的な食卓塩は塩化ナトリウム(ナトリウム40%、塩化物60)である。ナトリウムは“必須栄養素”であり、体液の重要な調整物である。ガンジーは政治目的のために“塩の行進”を使ったが、体に“空気や水の次に塩が多分、命に一番必要な物である”ことを直感的に彼は知っていた、と彼は書いた。激しい嘔吐、発汗、脱水、または下痢で生ずるナトリウム欠乏(すなわち、低ナトリウム血症)またはナトリウム過剰(高ナトリウム血症)のいずれかは潜在的に生命の脅威となる。毎日食べるナトリウム量の約90%は尿中に排泄される。ナトリウム量は厳密に制御されており、腎臓は交感神経活性と同様にアルドステロン、アンジオテンシンⅡ、レニンを含めた複雑なシステムによってナトリウム量を維持する中心である。

 ナトリウムは任意の給源(例えば、料理中に加えられる塩または食事中に個人が加える塩)と決まった給源(例えば、加工食品または調理済食品)から来る。事実、今や毎日のナトリウム摂取量の約80%は加工食品からくる。さらに、供給食品から入ってくるモノグルタミン酸ソーダ、クエン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムのような全て食品保存剤として使われ、加工食品中の成分となっているナトリウムを含む多くの化合物がある。

 近年、冷凍が食品保存に役立っているが、何世紀もの間、多くの細菌(例えば、ボツリヌス毒素や大腸菌)や幾つかのビールスに対しても塩化ナトリウムが最も有効な保存剤の一つであったし、残っている。“そして安全で衛生的な食品製品の開発に最も有効な手段の一つとして残っている。”塩は重要な食品保存剤であるだけでなく、塩は味を強化し、食品のテクスチャー、粘性、水分含有量さえも変えられる。例えば、肉の中の水分量を増加させることによって塩は重量を20%も増加させられる。塩は発酵工程でも役立つ。

 ほとんどの人々は何の苦もなく実質的な毎日の塩摂取量を変化させられる。しかし、ある者は他の者よりも“塩感受性”である。塩感受性については一致した定義はない。塩摂取量に対する血圧応答は個人によって変化する:応答に従って、ある者は塩感受性と考えられ、他のある者は塩抵抗性と考えられる。人口全体では高血圧患者の51%は塩感受性で、正常血圧者の中で26%は塩感受性である。塩感受性の危険因子は黒人、内因性の腎臓疾患、加齢にある。RustEkmekciogluは、正常血圧成人の塩感受性は将来の高血圧を予測し、正常血圧者と高血圧者の両方で死亡率増加と関係してきた。塩感受性者については減塩と同様にカリウム摂取量を増加させる勧告がある。

 しかし、塩化ナトリウムが我々の体のホメオスタシスについて“生命に不可欠”であるにもかかわらず、塩は過去の世紀で“毒でなければ、悪者とされる状態”になった。例えば、メディアの注目を集めた最近の研究で、高塩摂取量は研究された10件の食品と栄養素の中で“重要な目標”となり、2012年で66,500人以上のアメリカ人の死亡-“食事に関連していると推定される心臓代謝による死亡に関連した最大の数値”に影響を与えた。著者らは因果関係を証明されていないことを知っており、研究者達も“食事習慣の変化が疾患危険率を減らすことを危険率調査は証明していないことを承知していた。”さらに、この研究は塩摂取量を正確に実際に測定しなかった。

 塩がいわゆる“悪者”になったことで、高血圧の潜在的な原因として過剰なナトリウムを関連させた1940年代と1950年代の動物と人間の両方で研究が進んだ。しかし、数年間かけて減塩が血圧を下げる役割を解析するランダム化比較試験は矛盾した結果を出した。しばしばこれは試料数が少なく、研究がしばしば6ヶ月以下と言う短期間であったためであった。さらに、これらの研究の多くは果物や野菜からのカリウム摂取量、運動量、血圧に影響を及ぼすかもしれない過剰なアルコール摂取量を含めて他の食事要因から特別にナトリウムの効果を分離できなかった。さらに、新鮮な魚からのナトリウム摂取量は高度に加工された“ジャンクフード”からの摂取量と多分異なっている。

 一般的に、過剰な塩摂取量は全人口の血圧を上昇させ、減塩は多くの人々で血圧を下げる主要な要因であると言う概念を今やヒトと動物研究が支持している。塩が血圧を上昇させる機構は完全に解明されていない:腎臓、中枢神経系、血管に作用する物質、神経液性の因子が全て関連している。

 減塩食は血圧を下げると言う考えを支持するエビデンスのほとんどはDASH食から来ている。そこでは400人以上が登録され、異なった塩摂取量にランダムに割り当てられた。しかし、DASH食はコントロール食とはかなり異なっており、多くの果物、野菜、低脂肪乳製品、全穀粒、少ない赤身肉、少ないスィートなどを含んでいた。別の研究では、異なった食事も使われ、例えば、介入コホ-トはもっとスパイスを使うように勧告され、スパイスの使用はそれ自身の効果があるようだ。

 減塩食が高血圧患者でない人々で心血管疾患イベントの可能性を下げる決定的なエビデンスはないことを研究者達は述べており、減塩は鬱血性心不全または二型糖尿病患者を悪化させることさえ彼等は示唆している。同様にメンテらは正常血圧者と高血圧者で7.6 g/d以下の塩摂取量で心血管疾患イベントの危険率増加のエビデンスでU字型曲線があることを明らかにしたが、高塩摂取量(15.2 g/d以上)に関係した害は高血圧者に限られるように思える。これらの研究者達は“このことはほとんどの国々で、人口全体に減塩を勧めることに反対している”と信じており、高塩摂取量者と高血圧者だけに減塩を勧めることは“慎重で”ある。さらに、必須栄養素のヨードはしばしば食卓塩に加えられる;減塩はヨード欠乏症を引き起こし甲状腺不全になるかもしれない。

 時間が経過すると血圧に及ぼす減塩の効果が減るかもしれず、減塩に固執することは長期間継続できないかもしれないことも研究者達は気付いた。さらに、世界の塩摂取量には著しい変動があることを研究者達は明らかにしてきた:例えば、インターソルト・スタディでは北部中国人が最高の塩摂取量であることが分かった。

 塩摂取量の一番良い測定基準は反復24時間尿収集中の排泄量を測定することである。日々の変動は20%もある。一回以上の24時間尿試料を集めた研究はほとんど行われず、ほとんどの研究は自己申告(例えば、食事頻度アンケートまたは24時間食事日記)によっており、それらは全ての栄養調査で不正確であることはよく知られており、特にこれらの研究では食品中に多くの隠れたナトリウム源があるためである。別の複雑さは、これらの測定では捕らえられないナトリウム蓄積に含まれる24時間周期のリズムがあることである。

 著しい臨床研究にもかかわらず、研究者達は正常または十分と考えられる塩摂取量の範囲に関して同意もできない:明らかにナトリウムは必須で有益であるが、どれくらい多いいと有害なのか?Rozinと同僚達は、我々は栄養で簡潔化された分類別かされた考え方を使っていることを述べている:食品は“健康に良いか悪いか”のいずれかで、我々は“摂取量を考慮しない”すなわち、“多摂取量で有害な物であれば、少量または微量でも有害であると思っている。”彼等は単調な思考で栄養研究におけるエビデンスも明らかにしている、すなわち、少量と多量は反対の効果を持っているかもしれない考えを我々は受け入れたがらない。“塩はしばしば‘悪い’と考えられ、多量ではしばしばそのことは真実である;しかし、正に多量の塩が悪いことは少量の塩が悪いことを意味しないからである。”

 塩摂取量についてWHO5.1 g/d以下を勧めており;アメリカ心臓協会は3.8 g/d以下を;そして2013年の医学研究所によるエビデンスに基づいた2013年報告書は、“5.8 g/d以下への減塩には十分なエビデンス”がないことを示唆している。平均塩摂取量は約8.6 g/dまたはカナダ、アメリカ、イギリスで8.5 g/dあたりをさまよっている。

 スェーデンの研究者フォルコウは、塩摂取量については“生物学的に決められた設定点”が実際にあると信じている。-研究者達が血圧と脈拍数の両方を考え、これは生理学的に動かされるらしいとき、その設定点は“快楽的な悪習”の反映ではない10 g/dと言う“塩欲求”と彼は呼んでいる。“塩は容易に食品に加えられ除去できない”ので、加工食品中の塩量を表示し、低く維持することを彼は支持している。ほとんどの他の研究者達は心血管の健康に最適として3 – 5 g/dと言う著しい低い量を勧めており、研究はあまりにも矛盾しているので塩摂取量を5.1 g/d以下に下げることを保証していない。さらに、ほとんど170件の研究のメタアナリシスは、減塩は正常血圧者で血圧をわずか1 – 3%、高血圧者で3.5 – 7%しか下げないことを明らかにし、我々は“悪い白い結晶を原因としてきた”かもしれず:塩よりも砂糖の方がもっと悪く、塩感受性の人々で特に塩の影響を“強めている”らしいことをある人々は信じている。

 塩摂取量増加は骨粗鬆症、肥満、糖尿病のような幾つかの病状と関係付けられてきた。例えば、塩摂取量が増加したとき、尿中にカルシウム損失の増加が現れ、骨損失を増加させ易くして負のカルシウム収支になる。肥満に対する関係は複雑で間接的であるかもしれない:塩は喉の渇きを増し、高カロリーで甘いソフトドリンクで癒されるだろう。しかし、マらは塩摂取量とエネルギー摂取量とは関係のない肥満との直接的な関係を見出せなかった:高塩摂取量は脂質代謝を変え、脂肪蓄積を増加させることになるかもしれないことの示唆がある。Moosavianらは18件の横断的研究をレビューし、塩摂取量と大きな体格指数(BMI)およびウエスト周りとの関係を見出しが、彼等は何の“投与量応答”関係を確定できなかったことを認めた;さらに、幾つかの研究は塩摂取量をも正確に測定できず、肥満と関係した不健康な行動は混乱因子であるかもしれない。最近の研究でRadzevicienceOstrauskasは調理済食に塩を加える人々で糖尿病に2倍の増加を明らかにしたが、自己申告値を使った。

 Jaenkeらは“消費者の受け入れを損なうことなく減塩できる程度”を調査するために減塩食品を評価した。これらの研究で、塩はパンで37%まで、加工肉製品で67%まで減らされることが分かった。しかし、減塩すると食品は苦くなった。しばしばカリウムは塩代替物として使われる。例えば、チーズで使う時、塩は熟成工程で使われ、酸味を生み出す。しかし、舌の上にある我々の塩味覚受容器は時間が経つと低塩に多少感受性になる。

 最低線:減塩ガイドラインは同じではなく、研究はしばしば方法論的に間違っている。論争が続き、どの程度の摂取量が有益かについての同意はなく、減塩はそれ自身有害な結果をもたらすかもしれない。今日まで、中程度のまたはもっと低い減塩が実際に心血管疾患を減らすことを結論的に示すランダム化比較試験はなく;結局、血圧は心血管疾患罹患率についての“代用終点”でしかない。ウエール・コーネル大学の医学教授アランM.ウエインスタイン博士は次のように付け加えている、“塩摂取量が寿命を制限する明らかな危険があれば、良い科学はその増加する危険率を推定すべきである。私はそのような推定を知らない。”