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機械学習を活用してナトリウム・イオン電池の有望な構成を見つける

Leveraging Machine Learning to Find Promising Compositions for Sodium-Ion Batteries

https://www.power-and-beyond.com/       2024.11.07

 

 現在の市場はリチウム・イオン電池が主流であるが、リチウムは比較的希少で高価な元素であるため、経済的にも供給安定性にも課題がある。そのため、研究者達は現在、多元素遷移金属酸化物の組成を最適化し、ナトリウム・イオン電池で並外れたエネルギー密度を実現しようとしている。

 

 ナトリウム・イオンをエネルギー・キャリアーとして使用するナトリウム・イオン電池は、ナトリウムが豊富に含まれ、安全性が高く、潜在的に低コストであるため、リチウム・イオン電池の有望な代替品である。特に、ナトリウム含有量遷移金属層状酸化物(NaMeO2)は、ナトリウム・イオン電池の正極に強力な材料であり、並外れたエネルギー密度と容量を提供する。しかし、複数の遷移金属で構成される多元素層状酸化物の場合、可能な組み合わせの数が非常に多いため、最適な組成を見つけるのは複雑で時間がかかる。遷移金属の選択と割合を少し変更するだけで、結晶形態に顕著な変化が生じ、電池の性能に影響を与える可能性がある。

 現在、最近の研究では、駒場慎一が率いる研究チームが、東京理科大学とチャルマーズ工科大学の関根紗綾、保阪知宙博士、名古屋工業大学の中山将伸教授とともに、機械学習を活用して有望な組成の探索を効率化した。研究結果は、202495日に未訂正の校正で受理され、校正後、2024116日にJournal of Materials Chemistry Aにオンラインで公開された。この研究は資金提供機関であるJST-CRESTDX-GEM、およびJST-GteXによってサポートされている。

 研究チームはさまざまなNaMeO2 O3型材料の元素組成のスクリーニングを自動化しようとした。この目的のために、彼等は先ず、駒場グループが11年かけて収集した68種類の組成を持つO3型ナトリウム半電池の100個のサンプルのデータベースを作成した。「データベースには、NaMeO2サンプルの組成(MeMnTiZnNiZnFeSnなどの遷移金属)、充放電テストの上限電圧と下限電圧、初期放電容量、平均放電電圧、20サイクル後の容量保持率などが含まれていた。」と、駒場は説明する。

 次に、研究者達はその後、このデータベースを使用して、複数の機械学習アルゴリズムとベイズ最適化を組み込んだモデルをトレーニングし、効率的な検索を実行した。このモデルの目標は、動作電圧、容量保持(寿命)、エネルギー密度などの特性がNaMeO2層状酸化物の組成とどのように関連しているかを学習し、これらの特性間の望ましいバランスを達成するために必要な元素の最適な比率を予測することであった。

 結果を分析した結果、研究チームは電極材料において最も重要な特性の1つである最高のエネルギー密度を達成するために、Na[Mn0.36Ni0.44Ti0.15Fe0.05]O2が最適な組成であると予測していることを発見した。モデルの予測の精度を確認するために、研究チームは古代の組成のサンプルを合成し、標準的なコインセルを組み立てて充放電テストを実施した。

 測定値は、大部分が予測値と一致しており、モデルの精度と新しい電池材料の探索の可能性を浮き彫りにしている。「我々の研究で確立されたアプローチは、幅広い候補の中から有望な組成を特定するための効率的な方法を提供する。」と駒場は述べる。「さらに、この方法論は、5元遷移金属酸化物などのより複雑な材料システムにも拡張できる。」

 機械学習を使用して有望な研究の道筋を特定することは、材料科学においてますますトレンドになっている。これは、科学者達が新しい材料をスクリーニングするために必要な実験の数と時間を大幅に削減するのに役立つためである。この研究で示された戦略は、再生可能エネルギー発電や電気自動車やハイブリッド車だけでなく、ノートパソコンやスマートフォンなどの消費者向け電子機器も含め、エネルギー貯蔵技術全般に革命を起こす可能性のある次世代電池の開発を加速させる可能性がある。さらに、電池研究における機械学習の応用が成功すれば、他の分野の材料開発のテンプレートとして役立ち、より広範な材料科学の分野でイノベーションを加速させる可能性がある。

 「機械学習を使用することで実験回数を減らすことができ、材料開発のスタートアップとコスト削減に一歩近づく。さらに、ナトリウム・イオン電池の電極材料の性能が向上し続けることで、将来的には大容量で長寿命の電池がより低コストで利用できるようになると期待される。」と、駒場は結論付けている。

 商業的に実現可能なナトリウム・イオン電池が早く実現することを期待しよう!