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砂糖は高血圧の本当の犯人か?

Is Sugar the Real Culprit Behind Hypertension?

By Lara C. Pullen and Charles P. Vega

Medscape January 01, 2016

 

臨床事情

 塩は血圧上昇、したがって心血管疾患の危険率について伝統的に原因とされてきた。現在のレビューで、ディニコラントニオとルカンはこの仮説に挑戦している。過去50年間、西洋の食事による塩摂取量の変化は平均8.9 – 10.2 g/dと言う変化に限られてきた、と彼等は述べている。低塩食はせいぜい高血圧成人で取るに足りない5 mmHgの収縮期血圧低下、正常血圧者では多分もっと小さい低下であることも彼等は報告している。高血圧者の低塩食と関係している拡張期血圧の平均低下は2.5 mmHgである。

 事実、低塩食は心不全成人の中で入院と死亡率の高い危険率と糖尿病患者で心血管死亡率の高い危険率と関係している、とある研究は明らかにした。他方、糖類、特に加工食品中にある糖類が高血圧と心血管疾患を促進させる上で塩よりも重要であることを示唆するエビデンスの量が増えている。ディニコラントニオとルカンによる現在の研究は、糖類とこれらの結果との間の関係について知られていることを要約している。

 

研究概要と展望

 加えられる糖類と特に加工食品の消費量低下は心臓代謝疾患の低下と同様に高血圧発症率の低下に言い換えられるかもしれない。特に新しいレビュー論文は、塩ではなく砂糖が加工食品と関係した高血圧危険率の大部分に寄与しているように思えることを示唆している。

 ミズリー州カンサスシティのセントリュークスの中部アメリカ心臓研究所のジェ-ムスJ.ディニコランタニオとニューヨーク州ブロンクスのアルバート・アインシュタイン医科大学のシーンC.ルカンはOpen Heartに疫学研究と実験研究のレビューを発表した。高糖食は心臓代謝危険率にかなり寄与しているかもしれない、と著者らは結論を下している。将来の食事ガイドラインは、高度に精製された加工食品は自然食品に置き換えることを勧めていることも彼等は示唆している。

 “長い間我々は塩に焦点を置いてきたことはちょっとした驚きである、”とオハイオ州クリーブランド・クリニックのリチャード・クラススキはMedscape Medical Newsに語った。クラススキ博士は研究に参加しなかった。レビュー論文は2種類の研究:疫学研究と小規模の介入研究からの結果を要約している、とクラススキ博士は説明した。両種類の研究には限界があるが、共にそれらはむしろ強い事例となっている。“これら2種類の疫学研究を行うとき、混乱因子を本当に管理できない。”したがって、クラススキ博士は主として仮説の創造として疫学研究を述べた。

 対照的に、小規模の介入研究は熱心に短期間について単一要因の操作を通して仮説をテストしている。この種の研究で、限界は、“これらの急性効果を長期継続効果に移せるかどうかを我々は知らない”ことである、と彼は説明した。科学は完全ではないけれども、全体としてそれは良いことであることが最低線である、とクラススキ博士は言った。しかし、結論を読むとき、彼は読者に研究事情を理解するように注意した。

 砂糖が心臓に対して塩よりも大きな危険性を表していると言う結論は“目からうろこ”であった、とクラススキ博士は言った。もっとも彼は研究に参加すべきであったことを認識していた。次第に塩摂取量を下げていく勧告は期待されるポジティブな心血管結果となっていないことを彼と他の心臓学者達は気付いていた。

 ディニコランタニオ博士とルカン博士による論文は論争となりがちである。食事と心血管疾患との間の関係についての現在の仮説と論文が矛盾しているからである。“この論争は塩であるか、あるいは砂糖であるか…多分、それ以上でなければ少なくとも部分的に砂糖摂取量に関係している、”と論文を読んだ後でクラススキ博士は結論を下した。それにもかかわらず、論文が勧告している最低線はほとんどの臨床医によく馴染まれ不安のないことであるべきである:加工食品をあまり食べない。

 クラススキ博士が患者に語ることについて尋ねられたとき、彼の勧めることは現在の論文の著者らの論文と一致しているとクラススキ博士は述べた。彼は全穀粒や果物、野菜の豊富な食事を勧めており、患者は加工食品を避けるように努めることも勧めている。規則正しい運動、禁煙、目標に近い体重の維持も心血管の健康に全て重要であり、これらの勧めは本レビューの領域を超えていることをクラススキ博士は付け加えた。

 

研究の要点

  アメリカ人の砂糖摂取量の推定値は年間77 - 152ポンドで変化する。アメリカ人の推定13%は加えられた糖類から総カロリー摂取量の少なくとも25%を得ている。

  1000人以上のアメリカ青年の研究で、彼等の半分以上の総カロリー摂取量は加えられた糖類から得ている。

  アメリカ心臓協会は婦人には1日当たり6匙以下の加えられた糖類を、男性には9匙以下を勧めている。現在の平均砂糖摂取量はこれらの制限値よりも高く4 – 5倍である。

  食事に加えられた糖類は肥満とインスリン抵抗性を促進する。インスリン抵抗性は成人の25%と本態性高血圧症者の80%以上で見られる。インスリン抵抗性は高血圧を促進させることで肥満よりも大きな要因であるかもしれない。

  加えられた糖類からカロリー摂取量の10%以下を摂取している患者と比較すると、総カロリー摂取量の10%-24.9%を摂取している患者は付随する心血管疾患について30%高い経験をする。

  1日当たり12オンス以上の砂糖入り飲料の摂取は付随する高血圧の危険率で少なくとも6%増加と関係している。

  高い砂糖摂取量はそれぞれ6.9 mmHgの収縮期血圧と5.6 mmHgの拡張期血圧上昇と関係していた。

  フラクトースは特に心血管疾患についての危険率を増加させるかもしれない。スクロースはフラクトースとグルコースの等分化合物であるが、高いフラクトースのコーンシロップは約55%のフラクトースを一般的に含んでいる。

  ランダム化された試験で、フラクトース溶液の摂取は収縮期血圧で平均6.8 mmHgの上昇と関係しており、一方、グルコース溶液を飲むことは血圧をあまり上昇させなかった。

  加えられた糖類の高い摂取量は血清脂質濃度に及ぼすネガティブな結果と関係しており、フラクトースはメタボリック症候群を促進させることでも関係している。

  フラクトースとグルコースは両方とも血圧変化と心筋酸素要求量を増加させる。

  果物のような食品に自然に存在する糖類は心血管疾患についての重要な危険性を表しているようには見えない。反対に、平均的な西洋食の代わりに多くの果物を食べることは血圧を下げるのに役立つかもしれない。

 

臨床的な関係

  低塩食は高血圧成人の血圧を下げることに関して限られた効果を持っており、減塩食は糖尿病や心不全患者で死亡率の危険率も増加させるかもしれないことを前の研究は示している。塩摂取量は過去50年間にあまり変わらなかった。

  ディニコラントニオとルカンによる本レビューは、加えられた糖類、特にフラクトースは多分、塩よりも大きく高血圧や脂質異常を促進させることを示唆している。