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塩のDASH食は我々全てに必要か

Is a DASH of Salt All We Need?

By Thomas J. Wang; Deepak K. Gupta

Medscape 2017

 

 高血圧は世界中で最も一般的な慢性疾患で、10億人に影響を及ぼし、年間8件の死亡の内1件に該当する。心不全、脳卒中、冠状動脈疾患、腎不全、失明についての主要な危険因子として高血圧は実質的な罹患と死亡を引き起こす。高血圧の罹患率は増加し、制御できない高血圧が一般的な問題として残る。したがって、高血圧を予防し、治療するためには効果的で、広く利用でき、低コストで持続的な戦略が必要である。

 食事を含め生活様式の修正が高血圧の予防と治療についての基礎である。世界中で食べられている典型的な食事の塩含有量以下に塩摂取量を減らすことは血圧を下げる。DASH(Dietary Approaches to Stopping Hypertension)食は果物、野菜、低脂肪乳製品、飽和脂肪酸やコレステロールの低い食品からなり、それも血圧を下げることが示されている。DASH食のランダム化された交絡試験で、低塩食とDASH食との組合せは血圧低下に付加的であった。

 雑誌の本号でジュラシェックらはDASHナトリウム試験の二次解析を報告している。彼等の重要な結果は、典型的な“アメリカ人”の非DASH食+高塩食(3,450 mg)30日間の試験と比較してDASH食+低塩食(1,150 mg)との組み合わせで30日間の試験は基準血圧が最高の人々のほとんどで血圧を低下させたことであった。非DASH食+高塩食と比べて、DASH食+低塩食は、ベースラインの収縮期血圧が130 mmHg以下、130 – 139140 – 149 150 mmHg以上のそれぞれで、収縮期血圧を平均5 mmHg71021 mmHg低下させた。拡張期血圧は、ベースラインの拡張期血圧が80 mmHg以下、80 – 84 85 – 89 90 mmHg以上の人々でそれぞれ4 mmHg248 mmHg低下した。

 DASH-ナトリウム試験は興味をそそるデータを提供し続けている。DASH食+低塩食の組合せで達成された血圧低下の程度は、前の試験で観察された薬物治療だけの程度と比較できるか、それより上回った。血圧低下の程度はベースライン血圧が最高の人々で劇的(20 mmHg以上の収縮期血圧)であった。これは他の治療(例えば、脂質とグルコース低下)について発見されたパターンと一致しており、すなわち、最高危険率の人々は介入で最高の利益をもたらしている。現在の結果が血圧が最高の人々の間でより大きな塩感受性を反映しているかどうか、測定されていない特性値による残りの混乱事項や他の機構は不明確である。

 他の極端な状態で、一部は“下限”効果(すなわち、体は低血圧に反して防御する)のためにベースラインの血圧が最低の人々は血圧の大きな低下を経験しないと思われた。それにもかかわらず、ベースラインの収縮期血圧が130 mmHg以下の被験者はDASH食+低塩食で収縮期血圧に平均5 mmHgの低下であった。収縮期血圧でそれぞれ5 mmHgの増加は血管死亡率の25%危険率増加と関係しているとの存在するエビデンスとの関係で、前高血圧グループのDASH食+低塩食の潜在的な臨床的影響は実質的である。

 DASH-ナトリウム試験も幾つかの挑発的な疑問を挙げている。第一に、我々はどれだけの多くの塩を摂取する必要があるか?DASH-ナトリウム試験でテストされた低塩食(1,150 mg 茶さじ半分の塩)は全集団に勧められている量(5.8 g/d以下)よりも実質的に低く、高い危険率グループ、例えば、中年から老齢者、黒人、前高血圧者、高血圧者、糖尿病者、あるいは慢性腎臓疾患者に現在勧められている量(3.8 g/d以下)よりも低かった。しかし、3.8 gの塩は正常血圧を維持するに必要と仮定されている最低1日塩量よりもまだ十分に多い。ブラジルのヤノマモ・インディアンは超低塩食(0.5 g/d以下)で、年を取っても高血圧にならず、正常血圧を維持するには全て我々の体が必要としているのは1日当たり非常に僅かな塩(茶さじ1/16)であるらしいことを示唆している。非常に低い塩摂取量の安全性はまだ論争中であるが、典型的な食事をしているほとんどの人々については、中程度の減塩が有益であるかもしれない。

 DASH-ナトリウム試験結果の中心的な他の疑問はどれくらい過剰の塩摂取量が血圧を上昇させるかである。驚いたことに、塩摂取量と高血圧とを関係付ける病態生理学的機構は完全に理解されていない。必要な水分貯留とホメオスタシスの範囲内で循環している塩分濃度を維持するための血漿量の増加により、過剰な塩摂取量は血管内塩分を上昇させることを通常のモデルは示唆している。増加した血漿量は心臓拍出量と静水圧を増加させ、高血圧と血管平滑筋肥大を導く(図1省略)。体中の塩と水とのバランスを持ってこの平衡理論は水貯留によって起こる体重増加を伴う。しかし、DASH-ナトリウム試験では、低塩食による血圧変化は体重変化がない状態で起こった。

 最近まで、血管外塩貯留が高血圧に及ぼす役割を演ずる可能性についての考察はほとんどなかった。閉鎖された宇宙ステーションを模した環境の宇宙飛行士による長期間研究は、塩摂取量が水貯留と体重増加に関係なく継続時間のために排泄量を超えさせることを示している。この過剰な塩分は血管外に溜まり、水貯留と比例せず、高血圧の血管外環境をもたらす結果となることを実験研究とヒト研究は示唆している。これらの結果は、細胞外液は血管内区画と血管外区画との間を直ちに平衡させる(すなわち、ナトリウムと水は体内中で緊密に連携している)という従来の意見に反している。さらに、高血圧を維持するに必要なT細胞を含む免疫系を活性化することを実験データは示している。最近、病原性のTヘルパー細胞の誘発はこのプロセスの鍵となる媒介物として明らかにされた。Tヘルパー17細胞はインターロイキン-17を分泌し、それは血管炎症、繊維症、高血圧を促進させる。したがって、ナトリウムがどのように血圧に影響を及ぼすについての提案されているモデルは、過剰なナトリウムが血管外に溜まるが、それに比例した水貯留なしに炎症、血管繊維症、血管抵抗の増加を刺激する高張環境を作り出す(図1省略)と言うものである。

 DASH-ナトリウム試験で生じた第三の疑問は、どうしてある人々が他の人々よりも塩感受性であるかと言うことである。塩感受性は多因子的で人口統計的因子、社会的因子、環境因子、食事因子、遺伝因子、神経ホルモン因子によって影響される。例えば、黒人の間では、遺伝変異体や神経ホルモン欠陥が塩感受性高血圧に対する寄与因子として報告されてきた。ごく最近、我々は循環しているナトリウム利尿ペプチドの人種的な差異、白人と比較して黒人で低いことを示した。ナトリウム利尿ペプチドはナトリウム貯留に対する基本的なカウンター制御ホルモンであるので、黒人で相対的な欠乏が全体内ナトリウムを過剰の素因を作っている。

 DASH-ナトリウム試験は非常に有益な情報を出し続けている画期的な研究であった。それにもかかわらず、どうして食事や塩摂取量が血圧に影響を及ぼし、どうして広い規模と合理的なコストで食事変更を維持できるかに関して疑問が残る。DASH食+低塩食は患者に提案できる重要な基礎であるが、世界中の高血圧問題を解決するには十分ではない。加工食品のミネラルや栄養含有量を制御する社会政策、健康に良い食事と運動を促進する計画、どうして塩が血圧を調整するかを深く機構的に理解することは世界中の高血圧症を減らすために必要な正に数ステップである。