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老人では非常に低いナトリウム摂取量には死亡や

心臓血管疾患予防の利益はない:健康ABC

No Mortality or CVD Benefit to Very Low Sodium Levels

among Older Adults: Health ABC

By Michael O’Riordan

Medscape 2015.01.21

 

ジョージア州アトランタ

 新しい研究結果によると、1日当たり1,500 mgから2,300 mgのナトリウム摂取量の人々と比べて、1,500 mg以下のナトリウム摂取量の老人は心臓血管疾患のイベントまたは10年後の心不全危険率を低くすることもなく、死亡の危険率を低くすることもなかった。

 “我々は何のメリットも見出せなかったが、何の害も見出せなかった、と言った。しかし、今ではエビデンスを全体的に考えると、老人にはもっと穏やかなナトリウム勧告値を目標にする方が良いかもしれない。低い量を目標にすることは難しく、何らかの利益を示すしっかりしたデータを持っていない。特に、多くの薬を服用していれば、食事や依存疾患と言った他の点との相互作用の機会もある。”と1日当たり1,500 mg以下のナトリウム量に下げることを勧めているheartwireに主任研究者のアンドレアス・カロゲロポウロス博士(ジョージア州アトランタ、エモリー大学)は言った。

 ナトリウム摂取量を巡る戦いで最新の一斉射撃にあたる新しい研究はJAMAInternal Medicine2015119日号で発表されており、心臓血管疾患の予防と死亡率減少のためのナトリウム制限量を巡る論争をさらに燃え上がらせている。

 例えば、疾病予防管理センターのアメリカ人のための食事ガイドライン2010年は一般的な人々に1日当たり最高2,300 mgの摂取量、51歳以上の人々、アフリカ系アメリカ人、または高血圧者、糖尿病者、または慢性腎臓疾患者には1,500 mgを勧めている。有名なアメリカ心臓協会を含む他の機関もナトリウム摂取量を減らすことを支持しているが、もっと積極的に全ての人々に目標値をせいぜい1日当たり1,500 mgにしている。

 2013年にアメリカ心臓協会と他の機関の積極的な目標値が要求された。当時、医学研究所が文献の総合的なレビューを行い、現在、連邦の食事ガイドラインで示唆されている低いナトリウム摂取量を勧めるエビデンスは明らかになかった、と結論を下した。医学研究所は1,500 – 2,300 mg/dの範囲にナトリウム摂取量を下げることを勧めるほどエビデンスは十分強くなかったとも述べた。heartwireで報告したように、MI、脳卒中のような厳しい心臓血管疾患イベントまたは死亡を減らすために“中間範囲”を超えた低いナトリウム摂取量を支持するエビデンスはなかった、と医学研究所は結論を下した。

 

データで別の欠陥を取り上げる

 最新の結果は健康、老化、身体組成(健康ABC)研究に参加した71 – 80歳の老人2,642人を10年間追跡したデータに基づいている。健康ABC研究で塩の平均摂取量は1日当たり約茶さじ1杯であった、とカロゲロポウロスは言った。大匙1杯の塩は約2,300 mgのナトリウムを含んでいる。食事頻度アンケートから得られたデータを使って、291人の老人が1,500 mg/d以下のナトリウム、779人が1,500 – 2,300 mg/d1,572人が2,300 mg/d以上を摂取していた、と研究者達は報告している。

 前述したように、1日当たりナトリウム摂取量1,500 mg以下の老人では死亡率、心臓血管疾患発症率、または心不全を減らすことでは何の利益もないことを研究者達は観察した。これらの結果は男女、黒人、白人の参加者で同じ様に通常の状態で高血圧の有無に関わらず老人については同じであった。

 

ナトリウムと10年間の死亡、心臓血管疾患、心不全との関係

 

ナトリウム摂取量(mg/d)    10年間の死亡    10年間の心臓血管疾患、心不全の発症

  1,500 mg以下           1.12 (0.98-1.42)            1.11 (0.77 – 1.61)

  1,500 – 2,300 mg    1.0 (参考)        1.0 (参考)

  2,300 mg以上     1.15 (0.99-1.35)           1.08 (0.86 – 1.36)

                     注:(  )内は調整ハザード比で95%信頼区間

 

 1,500 mg/d以下の摂取量に利益はないけれども、2,300 mg/d以上を摂取している老人についての10年後の死亡危険率が増加する傾向があった。1,500 mg/d以下、1,500 – 2,300 mg/d2,300 mg/d以上を摂取する人々についての死亡率はそれぞれ33.8%、30.7%、35.2%であった。この傾向は女性と黒人参加者で特に顕著であった。しかし、集団全体とサブグループではナトリウム摂取量の増加に伴う死亡の増加率は統計的に有意ではなかった。

 “イベント率の増加に向けていくつかの明らかな傾向があった。”とカロゲロポウロスはheartwireに語った。死亡率とナトリウム摂取量との総合的な関係は重要でないとすると、サブグループ間のイベント率で差を検出するには研究はパワー不足で、2,300 mg/d以上のナトリウム摂取量は有害であると明らかに述べることは出来ない。

 “さらなるデータがない限り、現在の疾病予防管理センターの勧告は最も安全である、と私は思う。潜在的な例外は、老人が1日当たり2,300 mgを目標にするかもしれないことである。このナトリウム量は1日当たり1,500 mg以下の低い勧告値の代わりでは良いかもしれない。”とカロゲロポウロスは言った。

 心不全者ような特別な人々で最適のナトリウム目標値をさらに研究する必要がある、と彼は付け加えた。そのような研究が計画され、国立衛生研究所の資金援助を受けてきた、とカロゲロポウロスは言った。その研究はジェイブド・バトラー博士(ニューヨーク、ストニー・ブルック大学医学部)によって行われるだろう。