戻る

塩代替物は全死因と心血管系死亡を減らす可能性がある

Alt Salt May Cut All-Cause and Cardiovascular Mortality

By Diana Swift

Medscape   2024.04.17

 

大規模な塩代替は、特に心血管疾患リスクが高い高齢者にとって、重篤な危害のリスクを高めることなく死亡率を低下させる可能性があることが、オーストラリアの研究者達による系統的レビューとメタ分析で示唆された。

Annals of Internal Medicineに掲載されたこの研究は、カリウムを豊富に含む塩代替品を食品調理に広く採用すると、国民の健康に重大な影響を与える可能性があるというさらなる証拠を追加する物である。

 裏付けとなる証拠の確実性は低いものの、35,321人の参加者を対象としたさまざまな介入に関する16件の国際ランダム化対照試験の分析では、塩代替が全死因死亡率の1000人中5人と心血管疾患死亡率は1000人に3人の絶対減少と関連していることが判明した。

 クイーンズランド州ゴールドコーストのボンド大学の科学的根拠に基づく医療研究所の心臓血管研究者Hannah Greenwoodが率いる研究者達は、重大な心血管イベント、同じ集団におけるより重篤な有害事象は1000分の1に減少する。

 16件の研究のうち7件は台湾で実施され、7件は高齢者(平均年齢62)および/または心血管リスクの高い集団を対象に実施された。データのほとんどは、平均より高い心血管疾患リスクを持つ高齢者および/またはアジア系の食事を摂っている高齢者の集団から得られたものであるため、西洋的な食生活を送っている集団および/または平均的な心血管疾患リスクを持つ集団に対する研究結果の一般化可能性は限られている、と研究者達は認めた。

 「西洋の若年層や健康な集団における影響については、あまり確信が持てない。」と責任著者で科学的根拠に基づいたヘルスケア研究所の助教授であるLoai Albarqouni医師はインタビューで語った。「心血管死亡や心血管イベントの臨床的に意味のある減少はわずかながらも見られたが、塩代替品は有望ではあるが、より広範に推奨される前に有効性がいり確立される必要がある。」

 さらに、代替使用の最長追跡調査は10年であったため、「この期間を超えて利益や害について離すことはできない。」と同氏は述べた。それでも、医師が塩代替品を推奨することは、特に投薬開始をためらっている患者の心血管リスクを軽減する効果的な方法かもしれない、と同氏は述べた。「しかし、医師は塩代替品を推奨する前に、個々の状況や腎臓病などの他の要因を考慮する必要がある。食事や運動など、心血管リスクを軽減する他の非薬物療法も考慮されるかもしれない。」

 Albarqouni博士は、ナトリウム摂取量が心血管疾患の唯一の要因ではなく、摂取量を減らすことはパズルの1ピースにすぎないと強調した。同氏は、塩代替品自体に高レベルのナトリウムが含まれている可能性があるため、「人々が代替品を大量に使用している場合でも、通常の塩に含まれるナトリウムと同様のリスクが存在する可能性がある。」と警告した。

 高カリウム血症や腎機能障害の発生率が低いことからも分かるように、代替品は安全であるように見えるが、証拠は乏しく、不均一で、弱いと著者らは強調した。

 「腎臓病、糖尿病、心不全を患っている人、またはACE阻止剤やカリウム保持性利尿薬などの特定の薬を服用している人にとって、それらは健康上のリスクを引き起こす可能性がある。」とアテネのジョージア大学の栄養学部長Emma Laing博士は述べていた。そして、その塩味によりこれらは塩化ナトリウムの合理的な代替品になるが、「欠点としては、コストが高く、大量に使用すると苦いまたは金属的な味がすることが挙げられる。これらの塩代替品は、塩化カリウムの含有量が30%未満の場合、患者により受け入れられる傾向がある。」

 彼女は風味豊かな無塩のスパイス、ハーブ、レモンとライムのジュース、酢を食用塩の代わりに使用すると、食事のナトリウムを減らすのに効果的である可能性があると指摘した。同様の発見として、住宅介護施設の正常血圧の高齢者を対象とした最近の中国の研究でも、塩の代替により高血圧の発症率が減少することが観察された。

 健康な人の3分の1が塩感受性で、高血圧症の人は50%以上に上がり、世界中で年間500万人近くの死亡の原因は過剰な塩分摂取であると推定されている。

 ナトリウム消費量が主に加工食品や持ち帰り食品によって左右される北米では、代替塩を使用した家庭の食品の調理は実際にどの程度の影響を与える可能性があるのだろうか?「家庭料理を塩代替品に切り替える人もいるかもしれないが、加工食品や持ち帰り食品を多く食べると、塩摂取量が依然として非常に高くなる可能性がある。」とAlbarqouni医師は述べた。「人口への大きな影響を確認するには、個人が通常の塩から塩代替品に切り替えるのとへ並行して、食品加工でのナトリウムの使用方法に関する政策と制度レベルの変更が必要になる可能性がある。」

 これに同意し、シドニー大学、ニューサウスウェールズ大学、サンディエゴのカリフォルニア大学の研究者達による付随社説は、2025年までに世界のナトリウム消費量を30%削減するという世界保健機関の呼び掛けに政府と産業界が対応できないことを指摘した。高血圧は世界的な健康上の大きな負担となっているため、シドニー大学シドニー公衆衛生大学院のJ. Jamie Miranda医師、博士が率いる論説委員らは、塩代替品は食品製造会社にとってその目標に近づくための近道となる可能性がある。

 「塩摂取量を減らすことの利点は何十年も前から知られているが、既存の規制手段を使って産業界や商業面で塩摂取量を減らすと言う取り組みはほとんどの進んでいない。」と研究者達は書いている。「したがって、我々はカリウムを豊富に含む塩の使用など、効果的な証拠に基づいた代替手段に注意を向けなければならない。」

 降圧薬の不履行率が高いことを考慮すると、血圧管理を改善するための非薬理学的対策が必要であると研究者達は付け加えた。「家庭や食品産業界全体でカリウムを豊富に含む塩の日常的な使用を拡大すれば、高血圧患者だけでなく、家庭や地域社会のすべてのメンバーにも利益がもたらされるであろう。人口の血圧曲線全体が変化する可能性がある。」

 研究者達は、アジアの高齢者集団における塩代替の費用対効果と、平均的な心血管リスクのある集団または西洋型の食生活を送っている集団における塩代替の有効性を判断するための研究を求めた。

 この研究は、オーストラリア国立保健医療研究評議会およびオーストラリア政府研究訓練プログラム奨学金によって支援された。共著者のLauren Ball博士は、オーストラリア国立健康医学研究評議会からの支援を明らかにした。Hannah Greenwoodはオーストラリア政府とボンド大学から支援を受けた。Miranda博士は政府、学術、慈善団体、非営利団体との数多くのコンサルティング、助言、研究資金提供関係を明らかにした。論説委員のKathy Trieu博士は、複数の政府および非営利研究資金提供団体からの研究支援を報告した。Cheryl Anderson博士は、Weight WatchersMcCormick Science Instituteとの関係や、多数の政府、学術、非営利の研究資金提供機関からの支援を明らかにした。