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全てに減塩させる公衆保健政策のメリットを巡って

研究は不一致を再指摘

Study Reopens Rift Over Merits of Low-Sodium-for-All Public-Health Policies

By Patrice Wendling

www.medscape.com  2016.05.27

 

オンタリオ州ハミルトン発-49ヶ国から130,000人以上のプールされた解析は、減塩が有害であるかもしれないと言う増大中のエビデンスに加わったが、万人には受け入れられていない。平均ナトリウム摂取量(3 – 6 g/d)と比較して、低ナトリウム摂取量(<3 g/d)は患者が高血圧である無しに関わらず心臓血管疾患や死亡の危険率増加と関係していた。対照的に、高ナトリウム摂取量(>6 g/d)は、アンドリュー・メンテ博士(オンタリオ州ハミルトンのマックマスタ―大学)が率いた研究によると、高血圧患者だけの危険率増加と関係していた。

 “集団全体の減塩は多分、軽率であると言うメッセージで、高血圧で高摂取量の人々を簡単に見分けて、彼らに中程度まで減塩させる必要がある。それが理想的な方法である。”とメンテはMedscapeからのheartwireに語り、集団の約10%だけが高血圧で高塩摂取量であることを述べた。

 

進歩を逆行させる

 ランセットのオンラインで2016520日に発表されたとき、研究は素早い応答を受けた。声明で、アメリカ心臓協会会長のマーク・クリーガー博士(ニューハンプシャー州レバノンのダートマウス-ヒッチコック・メディカルセンター)は、著者らの勧告を採用することは“食事からの塩摂取量を減らし、高血圧やと心疾患や脳卒中に及ぼす減塩の危険性を減らすことが起こっている進歩を逆行させるかもしれない”と言う関心を示した。

アメリカ高血圧協会前会長エリオット・アントマン博士(マサチューセッツ州ボストンのブリンガム)は、研究は無視されるべきで、ナトリウム摂取量を調査するために1回の尿テストの使用は批判されるべきである、と言った。“これは間違った研究で、どれくらい食べているかを知るためにその結果、方法を使うべきではない。アメリカ高血圧協会は全体のエビデンスをレビューしてきて、1日当たり1,500 mg以下は理想的な心臓保健に最高であることを我々は維持し続ける。”

この批判を予想して、彼ら自身の国際的な確認研究と同様に健常人と高血圧者による事前研究で、最高の標準である24時間尿収集に対して一夜尿試料の使用が確認されたてきたことを著者らは指摘した。分析は日々の変動についても調整された。

研究者達はナトリウム摂取量の推定にグループレベルの摂取量測定値を使っているが、これはあまり正確でない方法の使用に関連した全ての問題を解決できない、とガイ・デ・ベイカー博士(ベルギーのゲント大学)heartwireに語った。ナトリウム摂取量の最低範疇が<3 gと言う上限値であり、それは非常に低い(<3 g/d)、低い(3 – 5 g/d)、高い摂取量と心臓血管疾患や総死亡率との関係を調べることを不可能にしている、と言う驚きを彼は表した。“この研究は研究者達には関心があるが、ヨーロッパの公衆保健に及ぼす影響はほとんどない、と言うのが概して私の意見である。減塩は高血圧者だけに勧められるべきであることが結論で、高塩摂取量は私の意見ではヨーロッパ社会には受け入れられない。そこでは実際の塩摂取量は平均して8 – 10 g/dである。”と彼は言った。

解析には4件の展望的研究から133,118人の参加者のデータを使った。4件の研究はONTARGETTRANSCENDEPIDREAM、進行中のPUREである。後者は多くの被験者を提供し、高いレベルと低いレベルのナトリウム排泄量は死亡と心臓血管疾患の危険率増加と関係していることを報告した。

現在の結果も最近のPREVEND研究と一致しており、メタアナリシスもナトリウム摂取量と心臓血管疾患との間にU字型関係を示している。

 

固定概念

 “パラダイムシフトをする時には何時でも、抵抗があり、誰でも初めに賛同されないのは普通のことである。1980年代のトランス脂肪酸問題を振り返って見ると、トランス脂肪酸は実際には有害であると言う何人かの研究者達によってもたらされた全くわずかなデータがあったが、人々はその結果を忘れてしまった。”とメンテは言った。減塩を勧める各種の機関は、減塩は血圧を下げ、それにより下がった血圧は心臓血管疾患を下げると、と言う試験を信じている、と彼は言った。しかし、“それは全く簡単ではない。体はもっと複雑である。”

 データが増えると、減塩がレニンーアンジオテンシン系、カテコラミン、アルドステロンを活性化させることが分かった。それらの物質は心臓血管疾患と死亡の増加に関係している。“ナトリウムだけでなく、体が必要とするもっと他の必須な栄養素に着目すれば、それらは全て健康との関係でU字型をしているので、ナトリウムも他の栄養素と同じである。”

 また、ナトリウム摂取量といろいろな要素を含む結果との関係は、血圧と関係しない機構を含む普段の血圧値についてさらに調整した後でも変わらなかった。

 研究に関連した論説で、“非常に多くの生理学的システムがナトリウム陽イオンに依存していることを考えると、万人に減塩を勧める政策はある者には有益であり、他の者には有害であることは驚くことではない。したがって、食品中の塩含有量を減らしてきたポジティブな努力を払い除けようとする反対のエビデンスに従うよりも、少数派に歩み寄ることなく社会の多数派に利益をもたらす政策を公式化することに我々は直接努力しなければならない。”とエオイン・オブライアン博士は書いた。

 

ランダム化されたデータ

 アメリカ心臓協会とアメリカ高血圧協会の元会長スザンヌ・オパリル博士(バーミンガムのアラバマ大学)は、プールされた分析は“減塩は有害であると言うより多くのエビデンス”を提供する、とheartwireに語った。集団研究で塩摂取量は実際には正確に測れない、と主張する批判家達は問題を持っているが、PURE研究者達が自分たちの方法を確認した時でも、その確認に批判が加えられた、と彼女は言った。

 現在の反動はほとんどが同じである。“反発は防御的な応答である。これまで皆に語ってきたことと全体的に反していたので、彼等は反発を信じようとはしなかった。”

 PREVEND著者のミッチェル・ジョーステン博士(オランダ、グローニンゲン大学医療センター)heartwireに次のように語った。プールされた分析はPUREや共著者のマーチン・オドンネル博士(アイルランドゲイルウエイ国立大学)が報告書した観察的分析と一致している。その分析はもっと強制的な事例となってしまったが、3件の研究全てが約4年間という比較的短い追跡研究であった。高血圧の発症やその後の心臓血管疾患または死亡までには短すぎる。

 それでも、もっともらしくあまりに低く減塩を推し進めることは健康に有害な効果をもたらすことになる。しかし、低いとはどれくらいか、と言う疑問が残る。“個人的には、メンテやオドンネルの研究によって示唆されるように、1日当たり3 g以下のナトリウム(7.5 g)と思っている。少なくとも我々は利用できる全てのエビデンスを開示すべきで、話題について偏見をなくし続けるべきである、と私も思っている。多分、人口全体で減塩が関心を持たれる限り、低過ぎる摂取量に進む。”

 ジョ―ステン、オパリル、オブライアンは、減塩問題はランダム化比較試験を行うことによってのみ解決されるかもしれないことを示唆している。そのような大規模で決定的な研究の前座として、研究者達は、通常ケアーとナトリウム摂取量を<2.3 g/dを目標にしてカウンセリングした場合を比較するパイロット・ランダム化試験の慢性腎臓疾患におけるナトリウム摂取量(STICK)を始めた。予想完了時期は20183月である。