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科学に反するアメリカ心臓協会のスタンス

The American Heart Association’s Stance Against Science

By Larry Husten

MEDPAGETODAY  2016.05.27

 

- 塩摂取量の疑問が明らかに解決されていなくても、グループは解決されたと主張する

 

 再びアメリカ心臓協会は科学に反して強いスタンスを取った。もちろん、アメリカ心臓協会がそれを言ったと言うことではない。自身の言葉では、“食べ方について自分に知らせるために…使うべきでない間違った研究の結果を強く論破している、”とアメリカ心臓協会は言っている。

 しかし事実、アメリカ心臓協会の立場は科学や科学的なプロセスに本当に強く反抗している。

 現在の事例はランセットで先週の金曜日に発表された研究に向けられている。その研究は、減塩はほとんどの人々で利益はなく、実際には害になるかもしれないことを示唆した。しかし、減塩は高血圧者や高塩食者の11%を救うかも知れないことも研究は示唆した。

 平均的なアメリカ人は1日当たり3,400 mgのナトリウムを摂取している。アメリカ心臓協会はナトリウム摂取量を半分以上の1,500 mg/dまで減らすことを勧めている。いくつかの他の保健機関も減塩を勧めている。しかし、それらの機関の勧告値はアメリカ心臓協会よりももっと厳しい(それ自身も科学的コンセンサスのない良い事例である)

 第一に、アメリカ心臓協会が持っている合理的な観点を認めることは重要である:ランセットの研究は決して完全ではなく、減塩に対する問題を確かに証明していない。私は誰もが同意していると思っているが、研究は観察研究の通常の限界点をすべて持っている。相関や関係を検出できるが、因果関係を示すことは出来ない。さらに、ナトリウム排泄量を計算し、ナトリウム摂取量を推定するために早朝尿収集に依存していることは研究を弱くする。この技術はこれまでの研究で有効であるとされてきたが、これは不完全な方法であることを知ることは重要である、と著者らは主張している。

 ここで鍵となる点は、ランセット研究の著者らが彼等の研究を完全であるとは主張していないことである。その代わり、厳しい減塩に関係した潜在的な害を匂わした比較的早いそれほど決定的でない研究で最初に行われた研究であることを彼等は指摘している。

 アメリカ心臓協会はランセット研究の限界点をいち早く知ったが、減塩自身が非常に不完全であることを支持するエビデンスがあることを知らなかった。事実、全ての減塩事例は、塩が血圧を上げ、血圧上昇は心臓血管疾患を発症させると言う観察に基づいている。今や、高血圧は心臓血管疾患の原因になることは完全に真実とされている。これは厄介な薬の世界で見られるような事実を十分に確立していることと大体同じである。しかし、血圧を下げるどんな方法でも有益な効果を持っているとは必ずしも限らない。

 例えば、降圧剤は血圧を下げる能力を基にしてだけ選ばれるべきではないことを今や我々は知っている。承認を得る前に、新しい血圧の薬は血圧を下げることだけでなく、安定性をも示す必要がある。この理由は、血圧を下げる効果があるにもかかわらず、安全でないことが示されたために降圧剤にならなかったいくつかの事例があったからである。これらの薬が安全であることを証明する唯一の方法はランダム化比較試験をすることだ。

 薬と食事介入との間の主な差は、我々が栄養についてほとんど知らないことである。目隠ししてランダム化比較試験をすることは比較的容易である。しかし、栄養素になると自由に生活しているヒトで大規模に、長時間、ランダム化して、十分に管理して、上手く設計された試験を行うことはほとんど不可能である。ナトリウムのような必須栄養素を含む大規模介入の長期間効果を確実に知っている人は誰もいないのが事実である。

 アメリカ心臓協会の前会長エリオット・アントマンはアメリカ心臓協会を“命を救い健康を増進させる目的で科学に基づいた機関” として述べた。“過剰なナトリウムと同様に危険な何かについての混乱は受け入れられない。我々は最も科学的に健全な食事アドバイスを社会に提供する義務を負っている。”

 しかし、ナトリウムについての混乱は受け入れられないかもしれないが、少なくとも今のところ混乱は避けられない。アントマンやアメリカ心臓協会が言っているにもかかわらず、塩についての広く行きわたった科学的コンセンサスはない。アメリカ心臓協会の声明で、塩について活発に行われている論争を決して認めない。

 フィールドはどのように分かれているか?ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンがランセット研究の初期の論文を発表した時、アメリカ心臓協会の減塩勧告に反対を示した論説も同時に掲載した。より良いエビデンスがなければ、それが出てくるまで、“結果は他に類のない公衆保健勧告としての減塩に反する主張をしている。”と論評者のスザンヌ・オパリルは書いた。今やここに本当に驚くべき事実がある:当時私が書いた時、オパリルはアメリカ心臓協会の前会長であり、同時にアメリカ高血圧協会の会長でもあった。これはアメリカ心臓協会の立場が悪いことやアメリカ心臓協会の対抗者が正しいことを意味しているのではなく、科学的疑問が解決されたと主張することは明らかに非常識であることを意味していない。

 例えば、ランセット研究の筆頭者がサリム・ユスフであることも注目に値する。彼は世界で最も頻繁に引用される科学者の一人であるトップ心臓専門医である。再び引用の数または斯界の卓越した人は、誰が正しいか間違っているかを決定すべきでない。しかし、アメリカ心臓協会とアントマンが我々に無視してほしい話にはもう一つの面があることを少なくとも示唆している。

このようなことを間違ったことにすると言う潜在的な危険性を誇張することは難しい。過去に私が何回も述べたように、アメリカ心臓協会はこの点で特に注意すべきである。アメリカ心臓協会は前に悲惨な結果を招いて既にこの道を歩いてきたからだ。1980年代に遡ると、アメリカ心臓協会はコレステロールと食事に関して非常に影響力のあるガイドラインを作成した。これらのガイドラインは食事の脂肪を抑える運動を促進させ、人々に脂肪やタンパク質の代わりに砂糖を含む炭水化物をもっと摂取するように促すと言う壊滅的な結果をもたらした。多分、我々は損害の全容を知ることは出来ないが、これは肥満や糖尿病の流行に寄与したかもしれないことを多くの人々が推測してきた。このようなことが塩で再び起こらないように気を付けよう。

明確にしておこう:アメリカ心臓協会は減塩の事例を作るべきではなく、勧告値を出すべきではない理由が私にはわからない。しかし、彼等はまず第一に、これは自分達自身の専門家達の意見であり、同意しない多くの他の高名な科学者達がいることを認めるべきである。アメリカ心臓協会は科学と言う法廷で裁き、審査し、簡単に自分達を勝者と宣言できない。

科学は知識の蓄積したものであり、地球が太陽の周りを公転し、他の周りの道ではないと言う事実のように多くのことがあり、我々が前に知らなかったことを今は知っている。しかし、減塩の健康効果は決して同じではなく、科学は出来るだけ多くの知識を集める工程を経て知識自身となったものである。ランセットの論文はその蓄積における一つの小さなステップの優れた例である。蓄積は間違っていることを明らかにするかもしれないが、正しいことも証明するかもしれない。