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減塩は高血圧症だけに有益か?

Salt Restriction Only Beneficial in HTN?

By Larry Husten

MEDPAGETODAY  2016.05.23

 

- 幅広い減塩は不必要と研究は示唆しているが、論争は続いている。

 

 幅広い減塩はほとんどの人々に有益ではなく、ある人々には有害でこそあるかもしれないと言うエビデンスを大規模な新しい解析は提供している。減塩は高塩摂取量のほとんどの高血圧者に有益であるかもしれないことを研究は明らかにした。

 決して決定的な研究ではないが、オンラインで配信されたランセットの論文は、集団全体に減塩させる努力は間違った方向に進んでいるかもしれないと言う関心が高まっていることを付記している。しかし、アメリカ心臓協会は“間違った研究によって社会を混乱させるべきではない”と言い、研究は低塩食の支持を見過ごしていると言った。

 アメリカの平均ナトリウム摂取量は1日当たり3,400 mgである。アメリカ心臓協会は1日当たり1,500 mg以下のナトリウム量を勧めており、他のいくつかの機関は2,300 mg以下のナトリウム量を勧めている。

 新しい解析は4件の大規模で展望的な研究に参加した133,000人以上の高血圧者と正常血圧者からのデータを一緒にしている。塩摂取量は尿試料からナトリウムを測定して推定された。高血圧者と正常血圧者の両方について、1日当たり3,000 mg以下の塩摂取量は心臓血管疾患と死亡の危険率増加と関係していた。しかし、最高の塩摂取量(1日当たり7,000 mg以上)では、高血圧者に危険率増加があり、正常血圧者にはそれがなかった。

 “我々のデータは高血圧者で高い塩摂取量を減らすことの重要性を強調しているが、塩摂取量を低い量まで下げることを支持していない、”とマクマスターのプレス・リリースで研究の筆頭者でオンタリオ州ハミルトンのマックマスタ―大学教授のアンドリュー・メンテは言った。“高塩食の高血圧者で減塩が最高の目標であることを結果は示しているので、我々の結果は重要である。”

 平均塩摂取量が非常に高い中央アジアや中国のような地域で集団全体の減塩努力をすべきであることを著者らは勧めていた。

 

論争は続く

 アメリカ心臓協会を代表して言うと、ボストンのブリンガムと婦人病院のエリオット・アントマンは研究の結論と一緒に方法にも強く反対すると言った:

 “塩摂取量と心臓血管疾患による死亡との関係に関する重要な疑問に対する間違った方法論がこの最近の出版でも用いられていることを知って失望した。朝一番に採取されたスポット尿試料の使用は連続24時間尿測定である黄金基準用の良い代替法ではない。したがって、正に最初から基準となる24時間尿中ナトリウム排泄量の信頼できない推定値となっている。すなわち、この報告書に蓄積されている研究を始めるに当たっての基準値である。”

 “さらに、蓄積されている研究を始める時の尿中ナトリウム排泄量の測定値が研究続行中にナトリウム摂取量の信頼できる推定値を提供できることを期待することは現実的ではない。したがって、ナトリウムとこの論文に報告されている結果との関係に我々は信頼を持てない。我々はこの論文の情報を公共政策をガイドするためには使えない。アメリカ心臓協会はそのような解析で用いられた方法についての懸念についてこれまでの声明を維持しており、全ての給源について1日当たり1,500 mg以下のナトリウム摂取量を勧め続けている。

 アンドリュー・メンテと他の研究著者であるマーチン・オドンネルはアントマンに対して次のような返答を返した:

 “公共政策の策定に際して、塩摂取量と集団全体の健康結果との関係を述べるために大規模な集団研究が要求される。24時間反復尿収集は個人または小さなグループでナトリウム摂取量を測定するための参考基準であるかもしれないが、大規模集団研究については完全に実行できないし、間違いなく不必要である。集団でナトリウム摂取量を推定するために空腹時早朝尿の使用は信頼できる推定値(24時間尿と比較して)を提供できることが示され、主要な医学雑誌(ランセット、NEJM, JAMA)や集団の摂取量測定に対する実際的な方法としてWHOでも受け入れられている。空腹時尿を使用する研究の総合性は24時間尿収集よりも優れている。後者は完全実施が難しいからである。集団における危険因子のある一回の測定値を使用することは医学研究では一般的である。血圧、糖尿病、コレステロールの重要性についての我々の理解で大きな進歩は大規模疫学研究(例えば、フラミンガム、INTERHEART)でこれらの危険因子一回の測定値に基づいていることで、…これらの研究を無視した結果を考えて見よ!

 “全集団に低ナトリウム摂取量(1.5 g/d以下)を勧めることは、矛盾した研究を単に論破しようと試みるよりもむしろ有益性の決定的証拠に基づくべきである。(中程度と比較して)1.5 g/d以下のナトリウム摂取量が全集団で最低の心臓血管疾患罹患率と有意に関係していることを示した研究を我々は知らないが、減塩した人々で比較的高い危険率を報告している数多くの研究(24時間尿収集を使った研究を含めて)を知っている。

 “スポット尿測定値を使用した研究を除いた時でも、これら以前の研究のメタアナリシスは最低の心臓血管疾患危険率に関係した中程度のナトリウム摂取量を報告している。減塩についての現在の勧告は小規模の血圧試験から推定して仮定した心臓血管疾患の利益に基づいている。過去6年間に行われた国際研究から現在のエビデンスは、それらの仮定が間違っているかもしれないことを示唆しており、最新のエビデンスを反映させるために更新される必要がある。”