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高血圧:適度な塩制限は血圧の改善に役立つか?

Hypertension: Can Moderate Dietary Salt Restriction Help Improve Blood Pressure?

By Robby Berman

Medical News Today     2023.03.24

 

  新しい研究によると、塩摂取量を大幅に減らすと血圧が改善する可能性がある。

  この研究の主な焦点は、高血圧の一般的な二次的原因である原発性アルドステロン症に対処することであった。

  研究者達はまた、ナトリウム摂取量が低いと参加者のうつ病や不安の症状が軽減されることも観察した。

 

新しい研究では、食事によるナトリウム摂取量の適度な減少が高血圧に及ぼす影響を調査している。塩はナトリウムと塩化物という2つの化学物質の組み合わせである。塩に含まれるナトリウムは高血圧と密接に関係しており、その摂取量を減らすと高血圧の低下につながる。

平均的なアメリカ人は毎日約3,600 mgのナトリウムを摂取しているが、アメリカ心臓協会は、成人のナトリウム摂取量は1日当たり小さじ約1杯、つまり約2,300 mgまでにすべきであると推奨している。

高血圧症の人については、1日のナトリウム摂取量の推奨制限値はこれより低く、約1,500 mgである。これは小さじ約3分の2である。

この研究では、高血圧の特定の原因の1つである原発性アルドステロン症に対する減塩の利益に特に注目している。

 この研究の参加者は、12週間、ナトリウム摂取量を半分に減らすと、血圧値だけでなく、うつ病や不安症の病状も大幅に減少した。

この非ランダム化単群研究の参加者41人は、調理済み食品、包装食品、ファーストフードのナトリウム濃度を追跡できるスマートフォン・アプリを使用してナトリウム摂取量をモニタリングした。

 研究者達は、個々のアプリを使用すると、提案された減塩レシピ、報酬システム、参加者が専門家に質問できるチャット機能を通じて参加者のモチベーションを維持できることが分かった。

 

原発性アルドステロン症

 「ほとんどの人は本態性高血圧、つまり治療可能な特定の根本原因のない高血圧に苦しんでいる。」と研究筆頭著者のHolger Schneider博士は述べた。

 しかし、「症例の最大15%は二次性高血圧に起因する可能性がある。原発性アルドステロン症は、二次性動脈性高血圧症の最も一般的な内分泌原因である。」と彼は言った。

 高血圧で薬が十分に効かない人の場合、原発性アルドステロン症が原因である可能性がある。原発性アルドステロン症では、副腎がナトリウムとカリウムのバランスを保つアルドステロンというホルモンを過剰に産生する。アルドステロン過剰と食事によるナトリウム摂取量の多さは心血管障害を悪化させる。

 カリフォルニア州ファウンテンバレーにあるオレンジ・コースト医療センターのメモリアルケア心臓血管研究所の予防心臓専門医であるYu-Ming博士によると、原発性アルドステロン症の診断には血液検査の頻度が低すぎるが、この研究には関与していない。

 「これはあまり人々に聞かれることではないが、我々が思っているよりも一般的なことであることは確かである。我々は患者に血圧の薬を服用させることが良くあるが、患者の血圧をコントロールできるようになり、満足している。」とNi博士は言った。

 

塩が血圧に与える影響

 Schneider博士によると、何十年にもわたって多数の大規模な集団ベースの研究により、塩摂取量と高血圧との関連性が確立されてきたと言う。それでも、この2つの間の機構的なつながりはまだ完全には理解されていない。

 Ni博士は古典的なガイトン・モデルについて説明した。このモデルでは、塩が水、つまり心臓からの血液を動脈内の血管に引き込み、血管壁に押し出す圧力を増加させると主張している。「しかし、腎臓のホルモン機能にも影響を及ぼす。」と彼は言う。

 腎臓はこれを管理し、血圧を健康なレベルに回復できるはずであるが、「このフィードバック機構の影響により、塩感受性高血圧が促進される可能性がある。」とSchneider博士は述べた。

 それでもSchneider博士はこう警告した:

 「注目すべきは、ラットが実際に心拍出量を減少させ、末梢抵抗を増加させたことが示されたごく最近の研究で示されているように、上記で述べた最も基本的な仮定、例えば、塩が心拍出量を増加させるというものですら、依然として議論があり、低ナトリウム食から高ナトリウム食に切り替えたとき、ラットの心拍出量が実際に減少し、完全に解決されていないことである。」

 

ナトリウムを少し減らすだけでも効果がある

 この研究の著者らは、適度な減塩でも有益であるかどうかを確認したいと考えており、例え適度に高いレベルまでナトリウム摂取量を減らすことでも実際に効果があることを発見した。

 研究参加者のナトリウム摂取量は、ベースラインの1日当たり9 g以上から5 g強、つまり5,000 mgまで減少した。しかし、その量でさえ、1日のナトリウム推奨量の2倍である。「塩が多すぎる。」とNi博士は言った。

 

うつ病や不安症の改善

 この研究の驚くべき発見の1つは、ナトリウム摂取量を減らすと参加者のうつ病や不安が軽減されるということであった。Schneider博士は、原発性アルドステロン症の患者には不安やうつ病が良く見られると説明した。「この研究では、過度な塩摂取量の終了時にうつ病の病理学的スコアが正常化することが示された。」とEntirelyNourished.comの心臓健康管理栄養士であるMichelle Routhensteinは述べた。「これまでの研究では、高ナトリウムが神経伝達物質、神経機能、そしておそらく腸内微生物叢への直接的な影響を通じてうつ病の一因となる可能性があることが示されている。」と彼女は述べた。

 

塩分とナトリウムは目に見えないところに隠されている

 「食品中にどれだけの塩が含まれているかは信じられないほどである。」とNi博士は言った。一方、Routhensteinは、人々が塩分を含んでいるとはあまり考えられないあらゆる食品を指摘した。「ナトリウムは、調理済み食品や加工食品として我々が食べる食品に添加されることが多く、朝食用シリアル、特定のスパイスラブ、インスタント・プディング・ミックスパック、焼き菓子、パン、サラダ・ドレッシングなど、予期せぬ場所に含まれる可能性がある。」と彼女は言う。

 Ni博士は、ファーストフードなどのレストランや食品メーカーは、「食物を美味しくしたいという理由から、同じ食事を作る場合に加える塩よりも多くの塩を加えている。」と指摘した。その結果、調理中や食卓で食品に手動で加える塩だけでは、個人が時本のナトリウム摂取量を正確に評価することはできない。

 

塩代替品

 Routhensteinはまた、塩は健康リスクを伴う可能性があるため、塩を代替品に置き換えないよう警告した。例えば、塩化カリウムが多すぎると、カリウム濃度が危険なほど上昇し、特に心臓病や腎不全を持つ人において、突然の心停止や不整脈の可能性が高かまる。

 「代わりに、クミン、バジル、ターメリック、オレガノなどの新鮮なハーブやスパイスをさらに追加することに重点を置き、食事中の塩分を減らすだけでなく、抗酸化物質や抗炎症化合物も加える。」とRouthensteinはアドバイスした。

 醤油などの塩濃度の高い調味料を、ナトリウム半分で同様のうま味が得られるココナッツ・アミノに置き換えてみると、Routhensteinは提案した。