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心不全:減塩食は良いことよりも害を及ぼすことがあるか?

Heart Failure: Could a Low Sodium Diet Sometimes Do More Harm Than Good?

By Clarissa Brincat

Medical News Today     2023.03.03

 

  現在の診療ガイドラインでは、心不全の管理には減塩食が推奨されているが、研究者達は食事中の塩分を制限することの有用性について議論している。

  新しいメタアナリシスでは、研究者達は心不全患者の減塩食と通常のケアを比較した9件のランダム化比較試験のデータを検討した。

  彼等は、塩分を制限し過ぎると有益ではなく害が増大すると結論付けた。

  しかし、メタ分析に含まれる研究の選択は専門家から批判されている。

 

塩は約40%のナトリウムと60%の塩化物で構成されている。少量のナトリウムは、神経インパルスを伝達し、筋肉を収縮および弛緩させ、水分とミネラルの適切なバランスを維持するために体に必要である。しかし、ナトリウムを過剰に摂取すると、脳卒中や心臓病の主な原因である高血圧を発症するリスクの増加と関連している。

 アメリカ人の食事ガイドラインでは、成人のナトリウム摂取量を1日当たり2,300 mg未満にするよう推奨している。これは小さじ約1杯の塩に相当する。しかし、CDCTrusted Sourceによると、アメリカ人は毎日平均3,400 mg以上のナトリウムを摂取している。多くの人は加工食品、特にパン、に比べて、ソースを通じて知らず知らずのうちに大量の塩分を摂取している。

 歴史的に心不全の人はその状態を管理するためにナトリウム摂取量に特別な注意を払うように言われてきた。2010年、アメリカ心不全協会は、中程度から重度の心不全症状のある患者に対して1日のナトリウム摂取量を2,000 mg未満にすることを推奨した。

 しかし、心不全における食事によるナトリウム制限の有用性については議論が続いている。

 2013年に発表された臨床試験では、低ナトリウム食が心不全と診断された患者の病気の進行を防ぐ可能性があることが分った。しかし、心不全患者を対象とした最近の臨床試験(ナトリウム-心不全試験)では、ナトリウム摂取量を減らしても臨床事象は減少しないことが判明した。

 アメリカ心臓協会/アメリカ心臓病学会/アメリカ心不全協会の2022年ガイドラインでは、ステージCの心不全患者の症状を軽減するために「過剰なナトリウム摂取を避ける」ことを推奨しているが、具体的な制限は示唆していない。

 今回、MBBSAnirudh Palicherlaとクレイトン大学医学部の同僚達は、心不全患者における減塩食と通常の治療を比較するランダム化臨床試験のメタ分析を実施した。高濃度メタ分析はアメリカ心臓病学会で発表された。

 

塩分が少なすぎるのは問題か?

 Palichera博士のチームは、心不全患者における減塩食と通常の治療を比較するランダム化臨床試験のために複数のデータベースを検索した。

 メタ分析には、3,499人の患者を対象とした合計9件の研究が含まれていた。通常の治療と比較して、ナトリウム制限群では院内死亡率が有意に増加したが、2つのグループ間には入院期間に有意差はなかった。

 メタ分析の結果に基づいて、研究者達は心不全患者のナトリウム制限が死亡率の増加をもたらしたと結論付けた。「塩制限による利益が得られず、害が増大するのであれば、そのような推奨事項は再検討されるべきである。」と研究者達は指摘している。

 

先行研究の検証

 数人の専門家は、検証不足のために撤回された研究が含まれていたとして、Medical News Today(MNT)に対し、このレビューに対する批判を表明した。

 C. David Molina医学教授でジョーンズ・ホプキンス大学のウェルチ予防・疫学・臨床研究センター所長のLawrence J. Appel博士はMNTに次のように語った:

 「このメタ分析には大きな問題がある。なぜなら、このメタ分析はイタリアの単一グループによって行われた4つの試験(パテルナ研究とパリネッロ研究)に依存しているからである。彼等の研究の誠実さには大きな懸念があり、多くの研究が行われている。」不正行為や原稿の撤回も同様である。」

 「これらの研究の別のメタ分析は、研究者からの生データを作成できなかったため、撤回されたことに注意する。このメタ分析の結果が制作の指針となるべきでは決してない。」と彼は述べた。

 ハーバード大学心血管疾患予防教授Frank M. Sacks博士Chan公衆衛生大学院も同様の懸念を表明した。「問題は、メタ分析がその構成要素の研究と同程度にしか優れていないことである。パテルナ研究など、個々の研究のいくつかには深刻な問題がある。さらに、イベントの大部分はパテルナが主催したため、メタ分析の結果は主にパテルナによってもたらされた。」