ヒマラヤのソルトランプ:それは何か(そして本当に効果があるか)?
Himalayan Salt Lamps: What Are They (and Do They Really Work)?
By Tia Ghose
Live Science 2017.06.01
新しい流行が国を席巻している。ヒマラヤのソルトランプ-世界中のほとんどの山岳地域から赤く色付いた塩結晶は電球や熱ランプを入れるために中央をくり抜かれている。これらの温泉風室内装飾の販売人が主張していることは、“電子スモッグの空気をきれいにでき、”脳に酸素を供給し、季節性情動障害のような気分障害の症状を軽減し、免疫系の改善さえできることである。提案者はこれらのランプの作用を二通り主張している:ランプは大気からのアレルギー源や汚染物を表面に引き付け、陰イオンを発生する。“ランプはきれいである。マントルの上やベッド脇に置く魅力的な物である、”とアメリカ化学協会を退職した元化学者のジョン・マリンは言った。
しかし、これらのランプがマイナスに帯電した粒子、またはイオンの意味ある量を生ずるエビデンスはなく、または大気中の汚染物を減らすエビデンスはない。健康主張を調べるために、科学者達は3つの基本的な疑問に答える必要がある:ヒマラヤのソルト(塩)は健康にポジティブに影響を及ぼす何らかの特別な成分を含んでいるか?陰イオンが健康に利益をもたらすか?健康に利益をもたらすとすれば、これらのランプはどれくらいの量でイオンを生ずるか?とマリンは言った。3点の全ての問題点に関して、主張を支持するエビデンスはほとんどか、全くないと彼は言った。“私は空振り三振アウトのように思える、”とマリンはライブ・サイエンスに語った。“この嘘を暴いてすまないが、私はその中に何の科学的根拠も全く見出せない”
作用仮説
ヒマラヤのソルトランプは本来ヒマラヤ(一般的にパキスタン)から採鉱された岩塩の塊で、電球または熱源を入れられるような空間がある。点灯すると柔らかく赤い光を放つ。しかし、どのようにして販売者が宣伝している無数の健康利益を美しい塩の塊が正確に発揮するのだろうか?これらのランプを販売しているSolay Wellness Inc.によると、ヒマラヤ・ソルトランプの一つの鍵は陰イオンを発生させることである。“塩結晶は本来吸湿性で、大気中の水分子を吸収する。塩塊を長い間点灯しないでおくと、湿り始めることに気付くであろう。小さな電球からの熱はこれらの美しい結晶を乾燥状態に保ち、次には大気中に陰イオン(海洋、滝、シャワーのような場所で健康に良いイオンが多く見つかる)を放出する、”とサイトに記載されている。
大気中の水分子は汚染物、カビ、アレルギー源も伴っているので、結晶は毒物や汚染物を岩塩表面に引き付ける、と他のサイトは主張している。水蒸気は塩の表面に付着し、これらの汚染物を残して水蒸気は蒸発する、とDrAxe.com.は記載している。
ランプの実際の作用
しかし、これらの主張にはそれら作用を裏付けるエビデンスはほとんどなく、基本的な化学見地から道理にかなっていない、とマリンは言った。一つの主張は、ランプが健康を直接的に改善する陰イオンを発生させることである。ヒマラヤの海塩が通常の食卓塩と比較して他の痕跡ミネラルを高濃度で含んでいなければ、ソルトランプから発生する主要なイオンはナトリウム・イオンと塩化物イオンである、マリンは言った。“しかし、塩は実際には安定で、それを少し加熱しても実際には何も起こらない、”とマリンは言った。二つのイオンを解離させるためには、約816 ℃に温度を上げる必要があり、15ワットの電球では上げられない。(ランプが二つのイオンを解離させるに十分熱ければ、火事になるだろう。)
発生した陰イオンが塩の痕跡ミネラルから来るのであれば、ヒマラヤの塩はこれらの他のイオンを意味のある量で含んでいることを塩販売者は示すべきである、と彼は付け加えた。これまでパキスタンの岩塩が高濃度で独特の痕跡ミネラル含んでいるかどうかをテストすることに困った科学者はいない、と彼は言った。
大気中の少量の水蒸気が塩の表面に付着し、水蒸気は塩をナトリウム・イオンと塩化物イオンに解離させる。しかし、水蒸気が蒸発すれば直ぐに、二つのイオンは直ちに再結合し塩を形成する、したがって、工程はいずれの陰イオンも生じさせることはない、と彼は言った。
室内の水蒸気が汚染物を引き付けるという考えに関する限り、その後ランプの表面に付着してもほとんど意味がない、と彼は言った。大気中のなにがしかの汚染物が生ぬるい岩塩の表面上の水蒸気にたまたま付着しても、電球によって生じたわずかな熱がかなりの量の汚染物を処理できるエビデンスはない、と彼は言った。“大気から汚染物の大部分除去に関して、私はそれが起こるとは思えない、”とマリンは言った。その代わり、ファンで吹き付けられた木炭はずっと良いろ過性能を示す、と彼は付け加えた。
その上、室内に滞留している汚染物のわずかな量が岩塩表面に付着する岩塩結晶の大きさに比べて、室内の大気量は非常に大きい。ランプが汚染物を引き付けられるとしても、岩塩の表面は素早く汚染物で覆われ、汚染物はもはや付着できない。一方、大気供給は換気装置または開けた戸や窓から常に補充され、室内に常に大気汚染物を持ってくる、と彼は言った。
陰イオン
ソルトランプが意味のある濃度の陰イオンを発生しなかったとすれば、それは良いことか?数十年にわたる研究で、健康に及ぼす陰イオンの利益についてのエビデンスは非常に弱い。幾つかの研究からのデータをレビューしたBMC Psychiatry誌の2013年の研究は、結局、大気中の陰イオンは不安、不機嫌、睡眠または個人的な安楽に及ぼす総合的な効果はないことを明らかにした。しかし、それらの研究は高い濃度の陰イオンからの高い影響度で抑鬱性症候群をわずかに低下させたことを述べた。低いイオン濃度でも季節性情動障害でわずかな改善を解析は示した。この弱い効果についての説明は、夏の強い太陽光が冬よりも多くの陰イオンを生成させることで、陰イオン発生器は夏のような条件を潜在的に真似ている、とニューヨーク市のレノックスヒル病院の精神科医であるアラン・マネビッツ博士は言った。しかし、夏季条件を真似るもっと確立された方法は光線療法で、それはもっと幅広く研究されてきた、と彼は言った。しかし、結局、主要な抑鬱症について“現在抑鬱症のためになることを述べている強い研究エビデンスはない、”とマネビッツは言った。
他に類のない2, 3の研究は陰イオン発生器からのささやかで疑わしい効果を示した。例えば、1981年にイングランドのサリー大学の研究者達は事務所環境にいる人々で息苦しさ、吐き気、めまい、頭痛の症候を見た。彼等は、事務所の空気が一般的な外の空気よりも陰イオンが少ないことを明らかにした。そこでチームは二重盲検研究を行い、イオンの再導入は12週間にわたってこれらの症候群の発症を減らしたことを明らかにした。その結果は環境心理学誌に発表された。人間工学誌に発表された1993年の研究は、陰イオンが人々の概日リズムにわずかに影響を及ぼしたが、不安や運動レベルには何の影響も及ぼさなかったことを明らかにした。
陰イオンの何らかの利益を支持する最強のエビデンスは抗菌剤としてである。ネイチャー誌の1979年の研究は高濃度の負に帯電した酸素イオンは細菌を殺すことを示した。2009年の研究によると、イオン発生器は冷蔵庫中の表面や空気中細菌の繁殖も減らした。しかし、その研究は食品表面または作業表面を消毒するためだけに適用され、健康利益については何の主張もされなかった。
陰イオン研究で見られたポジティブな結果はプラセボ効果によって引き起こされるかもしれない;認められた利益とイオン濃度との間の明らかな関係を示した研究はなかった、とマリンは言った。“1立方センチメータ当たり300個のイオンまたは100万あり、人々は‘うん、気分が良くなった’、”とマリンは言った。
このことは空気中に加えられたイオンがなくても、人々は、空気はイオン化されたと言い、気分が良くなったとも報告すると結論することが合理的であることを意味している、と彼は付け加えた。
“全身性の副作用を引き起こすようには見えず、表面上は健康に見える‘全身的な’治療を人々は常に探している。しかし、消費者は注意しなければならない、”とマネビッツはLive Scienceに語った。