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塩大論争:食事でどれくらいのナトリウムが多過ぎるのか?

The Great Salt Debate: How much Sodium Is Too Much for Your Diet?

By Sara G. Miller

Live Science  2015.11.11

 

フロリダ州オーランド-平均してアメリカ人は毎日3,400 mg以上のナトリウムを摂取しており、多くの人々に勧められている現在の限界値2,300 mgよりずっと多い。しかし、この量が人々の心疾患危険率を増加させるかどうかは現在、研究者達によって激しく論争中である。

 塩の食べ過ぎは疑いもなく高血圧を発症させる、とトゥーラン大学の全体的な公衆衛生教授のポール・ウェルトン博士は言った。そしてナトリウムは高血圧を発症させるので、心疾患の危険率を下げるためにナトリウム摂取量を減らすことが重要である、と今年のアメリカ心臓協会年会の科学セッションで火曜日(1110)に行われた論争で言った。

 ウェルトンは最近の収縮期血圧介入試験(SPRINT)に関して主任研究者であった。結果が非常に重要であったので、その試験が急に終わらされた時、ニュースになった。試験では、血圧を140 mmHgに下げることを目指すよりもむしろ薬物療法で人々の血圧を120 mmHgに下げることが研究期間中の人々の死亡危険率を有意に下げたことを研究者達は知った。

 しかし、ニューヨーク市のアルバート・アインシュタイン医科大学の疫学と集団医学の著名な名誉教授であるミカエル・アルダーマン博士は、アメリカ人が摂取しているナトリウム量は危険であるという考えに賛同しない、と言った。

 アルダーマンの意見では、ナトリウム摂取量と心疾患との関係を示すエビデンスは弱い。そして事実、人々のナトリウム摂取量があまりに低くなれば、彼等は心疾患危険率の増加に実際に遭遇するかもしれない、とアルダーマンは言った。

 研究者達の論争を見てみよう

ナトリウムは減らすべきである

 ナトリウムと血圧に関する科学は良く解決されている、とウェルトンは言った。“減塩が血圧を下げることには疑問はない”そして高血圧は心疾患の非常に重要な予防できる危険因子である、と彼は言った。

 そして人々の塩摂取量と血圧を見てきた臨床試験で、減塩が行われた時、心疾患危険率の低下もあるように思われる、とウェルトンは言った。例えば、心臓発作や脳卒中は減塩に伴って低下する傾向があることを研究は示唆してきた、と彼は言った。しかし、これらん試験で心疾患の危険率を特に見てきた結果は統計的に有意ではなかった(結果は偶然によるであったことを意味している)、と彼は言った。

 事実、塩摂取量と心臓発作、脳卒中、死亡の危険率とを特に観察している品質の高い研究はこれまでなかった、とウェルトンは言った。この可能性のある関係に関する報告されてきた研究で、結果は矛盾している、と彼は言った。これらの結果の危険率に関してナトリウムの効果を観察するように設計された研究は元々なかったことが一つの問題である、と彼は言った。事実に基づくと、報告書は他の理由で元々集められたデータを解析するための研究者達の試みの結果である、と彼は言った。

 塩摂取量の測定が難しいので、話題に関する研究は難しい、と彼は言った。多くの研究は食品摂取頻度のアンケートを使っている。人々に食べた物を思い出すように尋ねており、アンケートは間違いを起こし易い、と彼は言った。人々の塩摂取量を測定する一番の基準法(尿中のナトリウム量を測定するテスト法)でも不正確である、と彼は言った。

 人々の体が機能するために実際に必要とするナトリウム量は非常に少ない、とウェルトンは言った。腎臓は食事中のナトリウムを非常に良く保持する、と彼は言った。

 主要な団体が勧める範囲は1日当たり1,500 mgから2,300 mgである。例えば、WHOはナトリウム摂取量を1日当たり2,000 mg以下に維持することを勧めている。一方、51歳以下で、高血圧、糖尿病、慢性腎臓疾患がなく、アフリカ系アメリカ人でない成人についてアメリカ人の食事ガイドラインは1日当たり2,300 mgの線を引いている。これらのグループについては、勧告限界値は1,500 mgである。

 しかし、ほとんどの人々はガイドラインで勧められている量よりもずっと多いナトリウムを摂取している、とウェルトンは言った。

 アメリカ人の塩摂取量を下げるために、食品産業界は変化しなければならない。アメリカ人の塩摂取量の75%は加工食品から来ている、とウェルトンは言った。食品に加えるナトリウム量を次第に中程度に減らして行くことが有望な心疾患予防戦術である、と彼は言った。

我々は塩摂取量に安全である

 しかし、アルダーマンは非常に異なった意見を持っており、アメリカ人が毎日摂取している塩摂取量は危険ではない、と主張している。むしろ“多すぎる”と考えるべきナトリウム量はもっと多い5,000 mgと、彼は考えている。

 さらに、安全と考えられるべきナトリウム量の範囲があり、2,500 mgから5,000 mgである、とアルダーマンは言った。1日当たり2,500 mg以下のナトリウム摂取量では心臓血管疾患の危険率は上昇する、と彼は主張した。

 アルダーマンが共著者である一つのメタアナリシス研究で、塩摂取量と死亡率との間には“J字型曲線”があることを研究者達は知った。研究期間中に死んだ危険率は、2,500 mg – 5,000 mgの間としてメタアナリシスが定義している中程度のナトリウム量を摂取している人々で最低であったことをJ字型曲線は意味している。

 変動範囲の両端にいる人々(2,500 mg以下と5,000 mg以上を摂取している人々)については、心臓血管疾患危険率は上昇した、とアルダーマンは言った。(ウェルトンはこのメタアナリシスの結論に賛同しないと言った。)

 人々の塩摂取量が低過ぎると、健康に悪い影響がある、とアルダーマンは言った。不十分な塩摂取量は腎臓の酵素量を増加させる結果となり、それは血圧を上昇させ、交感神経を活性化し(戦闘または飛行応答としても知られている)、インスリン抵抗性を増加させ、脂質量を増加させるが、それらの全ては心臓の健康に悪い、と彼は言った。

 もちろん、塩摂取量は血圧に影響を及ぼさない、とはアルダーマンは主張していなかった。“過剰な”塩摂取量は確かに人々の血圧を上昇させることがある、と彼は言った。

 しかし、食事中の塩量と心疾患の危険率増加とを関係させる十分なエビデンスはない、とアルダーマンは主張した。その代わり、ウェルトンの意見は、塩摂取量と心疾患との直接的な関係の代わりに塩摂取量と心疾患との関係として血圧を使うことに依存している、と彼は信じている。塩摂取量と心疾患のような健康結果との間に直接的な関係があるかどうかを見るために研究者達は研究をすることが必要である、とアルダーマンは言った。

 最終的な彼の主張としては、他の全ての必須栄養素のように、多すぎる塩摂取量も少なすぎる塩摂取量も両方とも危険であり、健康に良い塩摂取量の範囲があり、現在のアメリカ人は過剰な範囲にはいない、とアルダーマンは言った。