ナトリウム・イオン電気自動車電池のブレークスルーにより、
性能が理論上の限界に到達
Sodium-Ion EV Battery Breakthrough Pushes Performance to Theoretical Limits
By Aman Tripathi
https://interestingengineering.comより 2025.02.20
この開発により、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池に匹敵する性能と効率を実現できる。
プリンストン大学のDincăグループの研究者達は、新しい有機カソード材料であるビステトラ・アミノベンゾキノン(TAQ)を使用したナトリウム・イオン電池を開発し、驚くべきエネルギー性能を示した。
「この電池は、同じ量のエネルギーをより短い充電時間で蓄えることができるか、同じ充電時間でより多くのエネルギーを蓄えることができる。」と、論文の筆頭著者でDincăグループの博士号を持つTianyang Chenは述べた。
現在の電池の限界に対処する
「この電池は、はるかに短い充電時間で同じ量のエネルギーを蓄えたり、同じ充電時間ではるかに多くのエネルギーを蓄えたりすることができる。この開発は、現在のエネルギー貯蔵技術に関連する制限に対処する。リチウム・イオン電池は広く使用されているが、リチウムに依存している。リチウムは、入手が限られており、サプライチェーンが複雑である。
一方、ナトリウム・イオン電池は、より持続可能で手頃な解決策を提供する。ナトリウムは豊富で広く入手可能であるため、希少資源への依存度が減る。
ナトリウム・イオン技術を利用することで、エネルギー貯蔵による環境への悪影響を軽減し、より安定したサプライチェーンを確保できる。しかし、いくつかの課題もある。
「科学者達はナトリウム・イオン電池である程度進歩を遂げてきたが、そのエネルギー密度の低さが主な障害となっている。サイズに比べて電池の駆動時間が短いのである。」と研究者達はプレス・リリースで付け加えた。この制限により、さまざまな用途での広範な
採用が妨げられている。
「エネルギー密度は、電池に蓄えられる電力量と同等であるため、多くの人が気にしている。エネルギー密度が高いほど、充電しないで車が走行できる距離が長くなる。」と、Alexander Stewart 1886化学教授のMircea Dincăは述べた。
TAQカソード材料が解決策になるかもしれない
Dincăグループの新しいカソード材料であるビステトラ・アミノベンゾキノン(TAQ)は、これらの制限に対抗する。TAQは、エネルギー密度と電力密度の両方で優れた性能を示し、従来のリチウム・イオン電池を凌ぐこともある。
この画期的な進歩により、ナトリウム・イオン電池は性能と効率の点でリチウム・イオン電池と競合できるようになる。
同グループによる以前の研究では、TAQのリチウム・イオン電池での使用について調査した。この調査では、不溶性や導電性など、TAQの特定の特性が明らかになった。
これらの性能は、電池内での材料の性能に関係している。不溶性はカソードの安定性に寄与し、電池動作中のカソードの破壊を防ぐ。導電性は電子の流れを促進し、エネルギーの貯蔵と放出に不可欠なプロセスである。
これらの発見により、ナトリウム・イオン電池におけるTAQの可能性についてさらに研究を進められた。TAQを使用したナトリウム・イオン電池の構築は、設計の変更が必要であった。リチウム・イオンからナトリウム・イオン技術への移行には、明確なエンジニアリング上の考慮事項が伴う。
研究者達はmナトリウム・イオン化学の特定の要件に対応するために、既存の方法を適応させるのに1年を費やした。
パフォーマンス指標と可能性
結果として得られた電池は、理論上の最大容量に近い性能を示した。これは、TAQの実用化の可能性を示唆している。「我々が選んだバインダーであるカーボン・ナノチューブは、TAQ微結晶とカーボン・ブラック粒子の混合を促進し、均質な電極を実現する。」とChenは説明する。
この最適化された構造により、活物質をほぼ100%利用でき、電池の性能を理論上の限界に近付けることができる。さらにこの新しい電池は優れた性能指標を示した。
「4電子酸化還元プロセスにより、フォーミュラ単位当り355 mAh/gという高い理論容量を示し、電極レベルのエネルギー密度606 mAh/g(活性物質の90重量%
を達成している。」と研究は結論付けている。
これらの数値は、この技術がさまざまな用途で既存のリチウム・イオン電池と7競合し、最終的にはそれを上回る可能性を秘めていることを強調している。