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世界初の溶融塩エネルギー貯蔵施設がデンマークで稼働開始

この施設は、ピーク時に生成された余剰の再生可能エネルギーを貯蔵し、生産量が落ち込んだときに放出する

World’s First Molten Salt Energy Storage Facility Launches in Denmark

By Aman Tripathi

https://interestingengineering.comより 2024.04.26

 

 デンマークの企業Hyme Energyは、溶融水酸化物塩を使用してグリーン・エネルギーを貯蔵する世界初のエネルギー貯蔵プロジェクトを開始した。このプロジェクトは「溶融塩貯蔵-MOSS」と呼ばれ、エネルギー貯蔵施設はデンマークのエスビャウにオープンした。

 デンマーク議会およびエスビャウ港の議長であるSøren Gadeは、Semco Maritimeが主催した式典でこの施設を正式に開設した。

 

長年のエネルギー貯蔵問題

 グリーン・エネルギーを導入する際の重要な課題は、晴れた日や風の強い日に発電された余剰電力を後で使用するために貯蔵することである。Hyme Energyの解決策は、ピーク時に生成された余剰電力を溶融水酸化物塩に貯蔵する。MOSSは、巨大な超高効率電池のようなものである。

 新しい施設は、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源からのエネルギーを貯蔵する。再生可能エネルギーの発電量が多い時期には、余剰電力を使用して水酸化物塩を加熱し、溶融状態にする。この溶融塩は極めて高温に保たれ、大量のエネルギーを蓄える。

 Hyme EnergyCEO兼共同創設者であるAsk Emil Løvschall-Jensenによると、将来の商用MOSS施設では、最大700度に加熱された溶融水酸化物塩に、ギガワット時(GWh)規模でグリーン電力を貯蔵できるとのことである。

 溶融水酸化物塩にグリーン電力を蓄えることで、エネルギー貯蔵施設は再生可能エネルギーの発電量が少ないときに信頼性が高く持続可能な蓄電装置を作る。

 再生可能エネルギーの生産量が何らかの理由で低下すると、MOSSが作用する。溶融塩に蓄えられた熱が放出され、この熱エネルギーは効率的に蒸気に変換される。注目すべきは、溶融水酸化物塩は耐熱性に優れていることである。

この特性により、損失を最小限に抑えながら膨大なエネルギーを蓄えることができる。この蓄えられたエネルギーは、発電所や製造業などの重工業で使用される従来の化石燃料に代わる現実的な選択肢となる。

 

MOSSコラボレーション

 MOSSプロジェクトは単独の取り組みではない。Hyme Energyの成功は、業界リーダーとの強力なパートナーシップの結果である。「イノベーションはコラボレーションを通じて強化される。」とAsk Emil Løvschall-Jensenは述べている。

 「このプロジェクトのパートナーシップと共同の取り組みを非常に誇りに思っている。グリーン・トランジッションは単独で取り組むものではなく、共同のミッションであり、変化に備えたユーザーと革新的なパートナーが成功の鍵となる。」と同氏は付け加えた。

 MOSSプロジェクトは、Hyme Energyと、Alfa Laval AalborgKIRT X THOMSENSULZERSeaborgAalborg大学、DIN Forsyning of EsbjergEnergy Cluster Denmarkなどの主要業界パートナーとのコラボレーションである。

 デンマークのエネルギー技術開発および実証プログラムもこのプロジェクトで重要な役割を果たした。

 

世界的な利用の可能性

 「画期的な技術が世界をより持続可能な未来へと変えることができることを証明することで、我々は2030年だけでなく、CO2ニュートラルな2050年に向けてもともに準備を進めている。」とHyme EnergyCEOは結論付けた。

 MOSS技術は多くのエネルギー集約型産業の脱炭素化の可能性を秘めている。熱消費は世界の総エネルギー使用量の50%を占め、炭素排出量の40%を占めている。

 従来の熱生成エネルギー源に代わる環境に優しい代替手段を提供することで、MOSS技術はデンマークと世界の炭素削減目標の両方に合致している。