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浸透圧の画期的進歩:川の塩を使って発電する新しい電池

Osmosis Breakthrough: New Battery Uses River Salt to Generate Electricity

By Jijo Malayil

https://interestingengineering.com/   2024.04.25

 

塩電池は市販の逆電気透析膜より性能が優れている:出力電力密度は2.34倍高く、16日間連続稼働する。

 

 研究者達は塩勾配から浸透エネルギーを吸収して発電する半透膜を開発した。この先進的な膜は、淡水と塩水が混じり合う河口などに見られる塩勾配から抽出される浸透エネルギーを大幅に高めた。

 中国のチームは、多層構造のユニークなナノ流体膜を使用した。小さなセルロース・チャネルが内部のイオンの移動を助け、外側のポリアニリン・ネットワークが電子の移動を促進する。

 研究者達は実験室でのテストで、この新しい設計の出力電力密度は市販の膜の2倍以上であると主張している。

 

先進的な環境に優しい膜

 淡水の川が塩分の多い海と合流する河口は、バードウォッチングやカヤックを楽しむのに絶好の機会である。これらのダイナミックなゾーンにはさまざまな塩分濃度の混合水も存在し、「青い」浸透エネルギーの持続可能な供給源となる可能性がある。

 浸透エネルギーは塩分勾配がある場所ならどこでも生成できるが、研究者は個別の再生可能エネルギーを利用するために現在使用されている技術にはまだ改善の余地があると主張している。

 1つのアプローチでは、逆電気透析膜が使用される。これらの膜は一種の「塩電池」として機能し、塩の勾配によって引き起こされる浸透圧の変化からエネルギーを生成する。

 塩水からのナトリウムなどの正に帯電したイオンはシステムを通過して淡水に流れ、その勾配のバランスを保ち、膜の圧力を上昇させる。

 膜は、電子がイオンの反対方向に自由に移動できるようにすることで、低い内部電気抵抗を維持し、収集力をさらに高める必要がある。

 以前の研究によると、電子輸送の効率と逆電気透析膜上のイオンの流れを高めることで、浸透圧エネルギーから得られる電気量が増えるはずである。

 そこで、環境に優しい材料を使用して、Dongdong Ye, Xinghen Qinらは、理論的におは内部抵抗を減らし、出力電力を増やす半透膜を作成した。

 

強化された逆電気透析膜が浸透効率を向上

 チームが開発した逆電気透析膜プロトタイプでは、イオンと電子の輸送に独立した(つまり分離した)チャネルがある。チームはポリアニリン(電子輸送用)とも呼ばれる有機導電性ポリマーの層を、負に帯電したセルロース・ハイドロゲル(イオン輸送用)の間に挟むことでこれを実現した。

 彼等は、分離輸送チャネルは同じ材料の均質膜よりもイオン伝導性が強くなり、抵抗率が低くなると言う仮設を立てている。研究者が行なった予備実験でこれが実証された。

 

結果

 彼等のプロトタイプは、河口環境を模した水槽内で水中で長期間にわたる安定した性能を実証した。市販の逆電気透析膜の2.34倍の出力密度を達成し、16日間連続運転しても性能を維持した。

 「積層膜は、中性50倍塩分濃度勾配下で16日間作動させた後、11.7 W/m2という強化された出力電力密度を達成し、最大10.9 W/m2の出力性能を維持した。これは市販システム(5.0 W/m2)よりも高いものである。」と、研究者達は述べている。

 研究チームは、低塩分濃度では、積層膜は混合膜よりも1.57倍高いイオン伝導性と0.99倍低い抵抗率を示すと主張している。これは、イオンと電子の経路を分離することによる有利な影響を強調している。研究者によると、彼等の発見により逆電気透析膜の作成に利用できる天然素材の種類が増え、浸透圧エネルギーの収集効率が向上し、これらのシステムの実用化の可能性が高まるという。

 広西大学と安徽農業大学の中国研究者達がACS Energy Letters誌に研究結果を発表した。