戻る

5,000時間の寿命を持つ固体ナトリウム電池は、

1,000サイクル後も91%の容量を維持する

Solid-State Sodium Battery with 5,000-Hour Lifespan Retains

91% Capacity after 1,000 Cycles

By Aman Tripathi

https://interestingengineering.comより   2025.09.19

 

この新しいナト固体のプラスチックのような素材は不燃性で、デンドライトの形成も防ぐ。

 

 クイーンズランド大学オーストラリア・バイオエンジニアリング・ナノテクノロジー研究所(AIBN)の研究者達は、送電網規模のエネルギー貯蔵技術の開発に貢献する可能性のある新たな固体電解質を開発した。この材料はナトリウム金属電池で試験され、有望な性能を示した。

 試験では、この新素材を使用した電池は80 ℃で5,000時間以上動作し、1,000回の充放電サイクル後も91%以上の容量を維持した。このレベルの性能は、再生可能エネルギーの貯蔵におけるナトリウム・イオン電池の潜在的な利用に関連する。「このような長期的な性能は、系統レベルのエネルギー貯蔵に不可欠である。」と、AIBNグループ・リーダーのCheng Zhang博士は述べている。

 

既知の安全性の問題への対応

 ナトリウム金属電池は、低コストで豊富に存在し、その利用はリチウム・イオン技術の潜在的な代替技術と考えられている。しかし、安全性への概念から、その使用は制限されてきた。

 主な問題は、イオンの移動を促進する媒体である電池の電解質である。従来の電池のほとんどは、可燃性の液体電解質を使用している。「これらの液体は可燃性であり、過熱して電気自動車や電動スクーターの電池で見られるような火災を引き起こす可能性がある。」とZhang博士は説明する。

 これらの火災は、多くの場合、デンドライト(小さく鋭い金属の突起)の形成によって引き起こされる。デンドライトは電池内部で成長し、ショートを引き起こす可能性がある。「この種の成長は通常、電解質が繰り返し充電サイクルを経て不安定になったときに発生し、電池の安全性と信頼性を低下させる。」と、Zhangは付け加えた。

 この安全性の問題に対応するため、Zhangと博士課程学生のZhou Chenは、P(Na3-EO7)-PFPEと呼ばれるフッ素化ブロック共重合体という新たな固体電解質を開発した。このプラスチックのような固体材料は不燃性で、デンドライトの成長を抑制するように設計されている。

 

材料の内部構造の設計

 研究者達は、材料の内部構造を体心立方構造に設計した。この構造は、ナトリウム・イオンが材料内を効率的に移動できる微細なトンネルを形成する。

 「体心立方構造と呼ばれる構造を形成するようにレイアウトを調整することで、材料が自然に形成するトンネルを強化することができた。」とZhouは結論付けた。

 「これにより、ナトリウム・イオンはリチウム電池と同様にスムーズかつ効率的に移動できるようになり、同時にデンドライトのような有害な蓄積のリスクも低減した。」

 高温での試験結果は画期的な成果であるが、研究チームは現在、次の研究段階に注力している。当面の目標は、室温でも同様の性能を達成できることである。

 

おすすめの記事

実用化へのステップ

 世界中の研究者達が、ナトリウム系電池の実用化に向けた取り組みを強化している。最近、別の開発において、研究者達は、ナトリウム系固体電池がついに室温、さらには氷点下でも動作可能になるという仮設を発表した。この研究は、実用化に苦戦してきたナトリウム電池の基準を引き上げた。

 彼等の論文では、室温から氷点下まで性能を発揮する厚膜ナトリウム正極を実証している。

以前、東京理科大学の研究者達による研究では、ナトリウム・イオン電池の正極にスカンジウムを添加することで、サイクル安定性が向上することが示された。

試験中に、改良された正極を用いたコイン型フルセルは、300回の充放電サイクル後も容量の60%を維持していることが分った。