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シンプルな塩の調整により、ナトリウム電池の充放電サイクル

500回を超え、容量維持率も70%に向上

Simple Salt Tweak Pushes Sodium Batteries Past 500 Cycles and 70% Capacity Retention

By Neetika Walter

https://interestingengineering.comより   2025.09.11

 

新しいナトリウム電池設計は、塩の調整により急速充電時の不安定性を克服し、10 Cの充電速度と500サイクルの耐久性を実現した。

 

 科学者達はナトリウム電池の最大の弱点を解明したと発表。長年にわたり、ナトリウム電池はリチウム・イオン電池に代わる環境に優しく安価な電池として期待されてきたが、その弱点は不安定さであった。今回、香港を拠点とするチームがこの問題を解決したと発表した。

 嶺南大学の研究者達は、精華大学および北京理工大学と共同でナトリウム電池の弱点である短絡と急速充電時の急速な容量低下を克服したと主張している。その鍵は驚くほどシンプルであった。

 研究チームは電解質中の塩濃度を高めることで、ナトリウム・イオンの析出をよりスムーズかつ制御された方法で促した。この変化により、セルの安全性、寿命、充電速度が向上した。

 実験室での試験は、このアノードフリーナトリウム電池は20 mAcm-2を超える臨界電流密度に達し、10 Cの充電速度(数時間ではなく数分)を実現した。セルは500回の充放電サイクル後も70%以上の容量を維持した。

 

塩の調整と安定性の向上

 本研究では、析出速度を拡散律速から電荷移動律速へと変化させることで、ナトリウム電池の劣化原因となるデンドライトの発生を抑制できることが示されている。

 また、完全放電時に金属ナトリウムが存在しないため、製造と輸送の安全性も向上する。「世界社会は電気自動車や電子機器に大きく依存しているが、リチウム資源は限られており、高価で不均一に分布しており、採掘プロセスによって土地や水が損傷している。」と嶺南大学の准教授であり、本論文の共同責任著者でもあるLi Liangliang教授は述べており。

 「我々の新しい無負極ナトリウム電池は、リチウムをより豊富で手頃な価格の資源であるナトリウムに置き換える。」と同教授は付け加えた。ナトリウムはリチウムの10分の1以下のコストで、海水に豊富に存在し、EVや電力系統の蓄電コストを大幅に削減できると同教授は指摘した。

 

期待される成果と残された課題

 今回の研究結果は、ナトリウム系セルにとってこれまでで最も明確な進歩の1である。しかし、電気自動車や再生可能エネルギー貯蔵への展開には、依然として問題が残っている。

 リチウム・イオンに匹敵するにはサイクル寿命を2倍、あるいは3倍にする必要がある。また、高濃度電解質は高価で導電性が低い場合がある。

 エネルギー密度ももう1つの課題である。ナトリウムは1 kg当たりのエネルギー貯蔵量において、依然としてリチウムに劣っている。とは言え、今回の研究はシンプルさが際立っている。高価な材料や複雑なコーティングではなく、研究者達は電解質の化学反応を利用して性能を向上させた。

 これにより、今回の研究成果を実験室セルから大型プロトタイプへと容易に応用できる可能性がある。「この研究は、エネルギー転換における世界的および地域的な緊急のニーズに応えるものである。」とLi教授は述べた。「この技術は、輸入リチウムへの依存を減らしながら、より環境に優しく、より手頃な価格のモビリティ・ソルーションを支える可能性を秘めている。」

 このプロジェクトは、香港のカーボン・ニュートラルと電動モビリティの目標と合致し、クリーン・エネルギーと気候変動政策に関する国連の持続可能な開発目標にも合致している。