スカンジウムはナトリウム電池の性能を向上させ、
300サイクル後も60%の容量を維持する
Scandium Boosts Sodium Battery Performance, Retains 60% Capacity after 300 Cycles
By Aman Tripathi
https://interestingengineering.comより 2025.09.17
正極材料のP‘2POポリタイプにスカンジウムをドープすることで。構造的完全性を維持することができた。
東京理科大学の研究者達による研究で、ナトリウム・イオン電池の正極にスカンジウムを添加することで、サイクル安定性が向上することが示された。
「スカンジウムは高価な金属であるため、今回の研究は電池開発における実現可能性を示している。」と研究チームを率いた駒場愼一教授は述べている。
「今回の発見は、高性能で長寿命なナトリウム・イオン電池の開発につながる可能性がある。」試験では改良された正極を用いたコイン型フルセルは、300回の充放電サイクル後も容量の60%を維持した。
急速な容量低下への対処
本研究は、リチウム・イオン電池の代替材料として有望視されているナトリウム・マンガン酸化物正極における、急速な容量低下という一般的な問題に取り組んでいる。
ナトリウム・イオン電池は、ナトリウムが天然に豊富に存在することから、リチウム・イオン電池の代替材料として研究されている。「層状マンガン・ナトリウム酸化物は、希少元素を含まない高容量ナトリウム・イオン電池の正極材料として有望な候補の1つである。」と本研究の研究者達は述べている。しかし、正極材料、特に層状マンガン・ナトリウム酸化物は(Na2/3MnO2)は、しばしば劣化を起こす。
これは主にJahn-Teller歪みに起因している。Jahn-Teller歪みとは、マンガン・イオンが充放電サイクル中に材料の結晶構造を歪ませ、時間の経過と共に容量が低下する現象である。
スカンジウム(Sc)の添加
研究チームは、正極材料にスカンジウム(Sc)を添加することで、この問題を軽減できる可能性を探った。
「以前、P’2Na2/3[Mn20-4Sc2]O2電極にScをドーピングすることで、電池の性能と長期安定性が向上することを発見した。」と駒場教授は述べている。
「しかし、この改善の正確なメカニズムは未解明であり、この効果が一般的に適用できるかどうかは不明であった。本研究では、Na2/3[Mn1-xScx]O2のP2およびP’2ポリタイプを体系的に研究し、Scドーピングの役割を解明した。
本研究では、正極材料のP’2ポリタイプにスカンジウムを導入することで、その構造的完全性を維持するのに役立つことが明らかになった。
研究者達は、Scドーピングによって結晶成長が変化し、電解質との副反応が減少し、耐湿性向上すると報告している。
この効果はスカンジウムとP’2ポリタイプの組み合わせに特有のもので、P2ポリタイプやイッテルビウム、アルミニウムなどの他の金属をドープした場合には、同様の改善は見られなかった。
Naハーフセル試験では、8%のスカンジウム・ドープを施したサンプルが最適な性能を示すことが確認された。この正極を用いてコイン型フルセルを作製したところ、300サイクル後に60%の容量維持率を示した。
構造安定性の向上
駒場教授は、この研究が電池用途における層状金属酸化物の構造安定性を向上させる新たなアプローチを提示していると指摘した。さらに、本研究はナトリウム・イオン電池にと留まらず、格子歪みを含む層状金属酸化物の構造安定性を高め、これらの材料を用いた電池の性能を向上させる新たな戦略を示している。
注目すべきことに、世界中の研究者達はナトリウム電池の容量と性能の向上に取り組んでいる。
最近、ある研究チームは、ナトリウム電池の弱点である短絡と急速充電時の急速な容量低下を克服したと発表した。