リチウム塩がナトリウム・イオン電池技術において93%の
保持率という画期的な進歩を実現
Lithium Salt Unleashes 93% Retention Breakthrough in Sodium-Ion Battery Tech
By Aman Tripathi
https://interestingengineering.comより 2025.06.19
ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン技術の有望な代替技術として注目されている。
韓国の研究者達は、ナトリウム・イオン電池の電解液にリチウム塩を添加することで、ナトリウム・イオン電池の寿命と性能を向上させる方法を開発した。
この研究によると、電解液にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を添加することで、400回の充放電サイクル後も92.7%の容量維持率を示す電池が実現した。これは、同様の電池でこれまで報告されている典型的な80%の容量維持率を上回る改善である。「電解液にLiPF6を添加することで、硬質炭素陽極上の強固なSEI層の形成が大幅に改善される。」と、研究者達はプレス・リリースで述べている。
「LiPF6添加電解質のスケラブルな合成は、ナトリウム・イオン電池の実用化への可能性を浮き彫りにしている。」
主要課題への取り組み
韓国電子技術研究院(KETI)とKangwon国立大学のチームが行なったこの研究は、ナトリウム・イオン電池におけるサイクル安定性と容量減衰という既知の問題に対処している。
ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン技術の代替として研究されている。ナトリウム・イオン電池の利点は、ナトリウムが世界中で豊富に存在し、リチウムに比べて安価であることである。
これにより、ナトリウム・イオン電池は再生可能エネルギー源を支える大規模エネルギー貯蔵に適したものとなる可能性がある。しかしながら、ナトリウム・イオン電池の商業開発は、電池部品の経年劣化に関連する課題に直面している。
二重作用プロセス
Ji-Sang Yu教授とHyun-seung Kim教授が率いる研究によると、リチウム塩添加剤は二重の作用によって電池内部の化学組成を変化させる。
第一に、負極保護においては、リチウム塩の存在により、硬質炭素負極上により安定した固体電解質界面の形成が促進される。この保護層は標準的なナトリウム・ベースの固体電解質界面よりも溶解性が低いため、電解質の分解が抑制される。
次に、陽極強化においては、リチウム・イオンがO3型陽極の表面にドープされ、研究者達が「Liイオンピラー」と呼ぶ層を形成する。
「O3型陽極にリチウム・イオンをわずかにドープすることで、柱のような構造補強層が形成され、層状構造の崩壊を防ぎ、サイクル中のガス発生を低減する。」とプレス・リリースは述べている。
「強固な固体電解質界面の形成とO3型陽極表面の安定化いより、サイクル特性と容量維持率が大幅に向上する。」
陰極保護と陽極補強
示差電気化学質量分析法を用いた分析により、電解液の劣化の指標であるCO2ガス発生量が減少しえちることが示された。
顕微鏡観察によるサイクル後観察では、陽極構造が維持され、負極上に固体電解質界面が安定していることが確認された。
研究者達は、この電解質のスケラブルな合成は、ナトリウム・イオン電池の実用化への道筋を示唆していると述べている。
この研究は、より持続可能なエネルギーの未来に向けた、費用対効果の高いナトリウム・イオン電池技術の継続的な開発に貢献する。
プレス・リリースは、「この研究から得られた知見は、より効率的で費用対効果の高いナトリウム・イオン電池技術の開発につながる可能性がある。」と結論付けている。