スマートナトリウム電気自転車用電池は、500サイクル後も80%の容量を維持し、350°F(約175℃)の耐熱性を備えている
Smart Sodium EV Battery Preserves 80% Capacity after 500 Cycles,
Defies Heat at 350°F
By Georgina Jedikovska
https://interestingengineering.comより 2025.05.30
電解質の安定性が向上したことで、高温条件下でも電池動作中のガス副産物の生成を防ぐ。
中国の研究者達は、ナトリウム・イオン電池の安全性と耐久性の両方を向上させる画期的なスマート・ゲルポリマー電解質を設計し、大規模商用エネルギー貯蔵におけるその潜在能力を最大限に引き出すことを目指している。
中国科学院の研究チームは、ナトリウム・イオン電池の最大の課題の一つであるサイクル寿命の短さと熱暴走のリスクの高さを解決するために、この革新的な技術を考案したと報じられている。
研究チームによると、この研究は、熱応答性ゲルが過酷な動作条件下でもナトリウム・イオン電池を安定化させる仕組みを示しているとのことである。
「スマート・ゲルポリマー電解質は、強固な電極/電解質界層の形成を促進し、電極の熱的および電気化学的安定性を向上させることを実証した。」と科学者達は述べている。
ナトリウム・イオン電池の発展
リチウム・イオン電池の有望な代替技術として、ナトリウム・イオン技術は、豊富で低コスト、そして環境に優しい原材料を利用できるため、より持続可能な未来への道筋を提供する。しかし、熱不安定性と高温での劣化傾向が安全性への懸念を引き起こし、科学者達はより安全で信頼性の高い電解質解決策の探求を迫られている。
この課題に対処するため、研究者達はin-situラジカル重合法を用いて、特別に設計されたゲル電解質を開発した。このプロセスでは、シアノエチル尿素含有メタクリレートモノマーとイソシアネート系メタクリレートモノマーを、従来のNaPF6-炭酸塩液体電解質内で混合する。
高温にさらされると、この混合物は自己架橋し、安定したポリマーゲルを形成する。このゲルは、時間の経過と共に溶解したり大きく収縮したりすることなく、大量の液体を保持できる三次元ネットワークを形成する材料であり、内部部品を保護し、劣化を防ぐ。
試験の結果、この革新的な解決策は、電極と電解質の界面を強化するだけでなく、温度上昇にも反応することが示された。電池が華氏248度(摂氏120度)を超えると、ゲルはさらに重合反応を起こし、イオンの移動を遮断し、短絡や発火につながる可能性のある内部反応を抑制した。
さらなる評価により、性能が著しく向上していることが明らかになった。NaNi1/3Fe1/3Mn1/3O2(NFM)正極と硬質炭素負極を用いたナトリウム・イオン・パウチセルにおいて、新しい電解質は熱暴走開始温度を華氏278.6度(摂氏137度)から華氏350.6度(摂氏177度)に上昇させた。
NFMパウチセルは、500サイクル後も初期容量の80%を維持したと報告されている。これは過酷な試験環境である。
よりスマートな電解液
科学者達は、従来のナトリウム・イオン電池では、電解質の分解、ガスの蓄積、デンドライトの形成が頻繁に発生し、これらの要因が性能を直接的に低下させ、危険な故障のリスクを高めると報告している。
「ナトリウム・イオン電池の全体的な性能、特に安全性とサイクル寿命に関しては、電極材料と電極/電解質界面の深刻な劣化により、依然として期待を下回っている。」と研究者達は付け加えた。
しかしながら、この画期的なゲルは、電極と電解質の間に柔軟で自己強化的なバリアを形成する。この熱応答性、界面安定性の向上、そしてガン発生の抑制を組み合わせは、安全性と性能の両面で明確な利点をもたらす。
研究者達は、この材料が濡れ防止設計と大規模製造プロセスとの優れた適合性により、送電網スケールのエネルギー貯蔵におけるナトリウム・ベースの解決策への移行を加速させるのに役立つと考えられている。
「in situで形成されたスマート・ゲルポリマー電解質の開発の背後にある設計哲学は、安全性が高く、長寿命で持続可能なナトリウム・イオン電池を作成するための貴重な指針を提供する。」と研究者達は結論付けている。