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心不全と塩:大論争

Heart Failure and Salt: The Great Debate

By James Januzzi and Nasrien Ibrahim

Harvard Health Blog 2018.12.18

 

塩:それがなければ食物の味はなくなる。海水が目や肌を焼く理由である。塩水浴を楽しむ人がいる。塩は良いものか?悪いものか?我々は本当に知っているか?

 近代医療で、我々は塩の成分であるナトリウムについて一般的にネガティブな感情を持っている傾向がある。過剰な塩摂取量は水分貯留と関係しており、高血圧の危険因子でもある。過剰な塩摂取量と高血圧は両方とも心不全を発症させ、心不全患者では合併症を引き起こす主要な危険因子である。650万人のアメリカ成人は心不全であるとすれば、減塩はこの大きな医療災害の危険性を大きく減らすかもしれない。

 事実、我々は心不全患者に減塩するようにアドバイスする。何年間も我々は彼等に塩辛いフライや持帰り中国料理に手出ししないように言い続けてきた。それらは一食で7.8 g以上の塩を含んでいることがある。我々は心不全で入院している患者に退院するまで“低塩、心臓に良い”製品を食べるように要請した。しかし、我々がしていることは低塩勧告に基づいているか?これは単なる逸話か?あるいは我々の勧告をガイドするエビデンスを持っているか?

 偏見を持たないでこの疑問について議論しよう。

ポイント:適度の塩摂取量は心不全患者に有害である

 塩摂取量は体液貯留と関係しており、したがって、非常に塩辛い食事は肥満や体重増加をもたらす。そして過剰な塩摂取量は高血圧を悪化させるかもしれない。高血圧は心不全発症の危険率を増加させ、既往の心不全を悪化させる。高血圧は他のタイプの心血管、脳卒中、あるいは腎不全も引き起こすかもしれない。低塩食は血圧を下げ、高血圧を予防するのに役立つかもしれず、そのような疾患の危険率を低下させるかもしれない。

 高塩食は総脂肪やカロリーも通常高く、そのことは肥満やそれが多くの関連した多くの合併症も引き起こすかもしれない。塩摂取量、骨粗鬆症、胃ガンとの間に関係があるらしいことも幾つかの研究は示唆している。さらに、長期間にわたって塩辛い食品を食べ続けると味蕾はその味に慣れてきて、やがてより塩辛い食品を好むようになる。

カウンターポイント:適度の塩摂取量は心不全患者に有害ではない

 心臓学者はエビデンスに基づく医療を実行する傾向であるが、心不全患者についての塩摂取量に関する多くの勧告は仮定に基づいている。驚いたことに、心不全患者はほとんどの医者が勧めている2 g/d以下の塩摂取量に減塩すべきであるという疑いの影を超えて述べる十分なエビデンスがあると言うことは難しい。そして現実的に言って、この減塩を多くの患者がどこまで守っているのかは不明である。我々が食べるほとんど全ての物には塩が入っているからだ。

 JAMA Internal Medicineに最近発表された9件の研究の総合レビューで、限られており矛盾したエビデンスが外来の心不全患者について減塩食の利益を支持することはほとんどない。減塩についてのエビデンスは心不全で入院している患者では結論できなかった。これは正しく行われた研究であった;評価された2,655研究の中でわずか9件がそのレビューを含めるに十分に厳格であった。したがって多分最も重要なことに、結論にかかわらず心不全の減塩に関する厳格でエビデンスに基づいたデータは利用されていないことをこのレビューは示している。

 心不全患者の生活は現実以上に複雑である。我々が患者に勧めていることは何でも彼等の既に難しい生活の質をさらに悪化させないことは避けられない。患者は心不全治療を守ろうとしばしば努力するので、医者として我々の焦点はエビデンスに基づくことを強調すべきである。これには医療を目指したガイドラインやもっと運動するような好ましい生活様式への介入や糖尿病のような他の関連した医療のケアーを守ることがある。

裁断:もっとエビデンスが増えるまで、結論を出せない

 我々が割引して言っていることをある程度受け入れよう(しゃれのつもりです)。塩の大論争に勝とうとしてもいずれの側にも十分なエビデンスはまだない。そして我々が確実に知るまでは、我々の考察は患者に過剰の塩を摂取しないように導くべきである。事実、良い臨床データがないので、良い臨床的な判断の必要性を受け入れなければならない:過剰な塩摂取量を避けることは心不全患者を含めて我々すべてについて健康に良い動きである。

 ある患者は他の患者よりも塩感受性であることは大いにありそうである。したがって、もっとも無防備な人々に対して減塩に向かわせることは何でもありのアプローチよりも良いかもしれない。この分野における研究は非常に必要とされる。幸いなことに、この疑問に取り組む臨床試験が進行中であるので、こうご期待!