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再び塩戦争の時:新しい研究、公衆衛生勧告値を巡る論争、そして利益相反の問題

It’s Salt War Time Again: New Research, Arguments over Public Health Recommendations, and Issue of Conflicts of Interest

By Marion Nestle

https://www.foodpolitics.com/ より 2014.08.14

 

ナトリウム(塩の40%を占める)摂取量について疑問が沸騰している:

(a)   多くのナトリウム摂取量は高血圧の原因となるか? 答:明白なイエスである (必ずしも全ての人には当てはまらないけれど)

(b)   公衆衛生勧告値までの減塩には根拠があるか? あると思うが、他の人々は同意しない。

(c)   そうであれば、量はどれくらいか? 塩と高血圧に関するエビデンスをレビューした全ての委員会は実質的に公衆衛生勧告値を根拠があるとして見ており、上限値をナトリウム2 g(塩として5 g)を勧めているが、これらの値も論争中である。

これらの勧告値は塩産業界の同業組合である塩協会、業界の支持者、そして研究者達の幾つかのグループによって強く反対されている。

今、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンは3件の新しい研究、論説、ビデオで参加している。その後論文は:

 

·         Association of Urinary Sodium and Potassium Excretion with Blood Pressure: A. Mente and Others | N Engl J Med 2014;371:601-611

·         Urinary Sodium and Potassium Excretion, Mortality, and Cardiovascular Events: M. O’Donnell and Others | N Engl J Med 2014;371:612-623

·         Global Sodium Consumption and Death from Cardiovascular Causes: D. Mozaffarian and Others | N Engl J Med 2014;371:624-634

 

 ジェフレイ・ドラゼン博士が語るビデオから始める。3件の論文を非常に上手く要約している。方法論に差があるにもかかわらず、全(a)を確認している。(c)に関しては一致していない、したがって(b)である。しかし、ドラゼン博士の示唆は“塩振り出し器を捨てよう”と述べている。

 彼は減塩に賛成している。しかし、ほとんどの塩摂取量は塩振り出し器から来ているのではない。アメリカ人の食事からの塩は少なくとも75%はレストランや加工食品から来ている。ヨニ・フリードッフ博士が説明しているように:

    食事で減塩したければ、実際に摂取している量を集計するよりも、代わりに、食事の何パーセントがレストランや

贈り物から来ているのか調べないか?確かに、食事に塩を加える他の方法を簡単に見出すかもしれないことを示唆して

いるデータがある。しかし、レストランに行っても加工食品はそれほど頻繁には食べず、高度に加工された低塩バージョ

ン製品を買い物かごに入れるだけよりも健康利点を見る可能性がはるかに高くなることを私は保証する。

 自分自身で減塩することはできない。その理由の1つが公衆衛生政策-レストランや加工食品製造者達に塩含有量を減らさせる-の必要性である。

 減塩を必要とする人々は高血圧者や老(研究の1つは55歳以上人々が該当すると言っている)だけである、と論文の2つは言っている。

  アメリカでどれくらいの高血圧者がいるか? 疾患予防管理センターによると6,700万人(成人3人に1)

  アメリカ人で55歳以上はどのくらい? 8,000万人以上で上昇中。

7,000万人または8,000万人が自分自身で減塩できるとは期待できない。したがって:公衆衛生勧告値がある。

 何人かの研究者達は降圧剤製造会社から研究助成費を得ていることを報告しているが、論文に付随する論評は特別な関心事である。スザンヌ・オパリル博士が書いているが、研究の1つについて次のように言っている:

    これらの挑発的な結果には通常の食事と減塩食を比較するためのランダム化比較試験結果が必要である。そのような

試験がないと、結果は孤立した公衆衛生勧告値として減塩反対を主張している。

 これらの結論は彼女の利益相反の開示声明を私に送った。降圧剤製造会社から-そしてもっと注目すべき塩協会からも研究助成費を受け取ったことをオパリル博士は報告しているけれど、-彼女に利益相反はない、と彼女は述べている。私もそうだと思う。

 彼女の論評は特に不適当である。研究について報告者の書き方に影響を及ぼすからである。例えばAP通信アカウントは次のように始まる:

     大規模な国際研究は、ほとんどの人々は減塩すべきであると言う従来の知識に疑問を持っており、ほとんどの人々

が摂取する量は心臓の健康には支障なく-そして少なすぎることは多過ぎのこと同じほど悪いかもしれないことを示

唆している。その結果は他の科学者達によって直ちに批判された。

 同様に彼等は批判されるべきである。血圧は加齢に伴って上昇し、人口の多くは減塩でより健康になるだろう。AP報告者は私を引用して次のように言っている:

     “人々は塩を食べないで、食品を食べる、”と彼女は言った。“多くの人々は高血圧であり、多くの人々は次第に年を

取っていく、”塩を懸念しながら彼女は言った。“このため減塩が行われている。”

 方法論の差と結果の矛盾のため3件の研究を解釈するには複雑である。もし高血圧である、あるいは“老齢”である、あるいは多くの塩を食べているとすれば、減塩すべきである。これは誰にでも正に良い考えのように見える。人々は塩を食べない;彼等は塩を含む食品を食べる、そして塩含有量の高い食品は少量で最も良く食べられる他の食品で多くなる傾向がある。

 研究は野菜から一番摂取できるカリウムの保護効果についても語っている。多くの野菜を食べ、ジャンクフードをあまり食べなければ、塩について心配することはない。