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ランセット:減塩プログラムは非常に高い塩摂取量社会にのみ適切であるかもしれない

The LancetSodium Reduction Programmes May Only Be Appropriate for Communities with Very High Salt Intake

By The Lancet       2018.08.09

 

 大多数の社会にとって、平均塩摂取量が12.5 g/d以上の社会を除いて塩摂取量は健康危険率の増加と関係しないことを新しい研究は示している。高い塩摂取量社会(12.5 g/d以上)はほとんど中国で、中国以外の社会の約15%だけがこの摂取量を超えている。WHOガイドラインは全集団に5.1 g/d以下への減塩に全世界を近づけることを勧めているが、これはどの国でも達成されていない。減塩戦略は高い平均塩摂取量(12.5 g/d以上)の社会を目標に変えるべきである、と著者ら言っている。この結果は、18ヶ国で300社会以上の90,000人以上による新しい確認研究から来ている、とランセットで発表した。

 “中程度から非常に低い塩摂取量(5.1 g/d以下)に塩摂取量を下げて管理している国はなく、我々の研究は平均塩摂取量が高い社会や国(中国のような12.5 g/d以上)を目標にして中程度の範囲(7.6 – 12.5 g/d)まで下げることについてもっと関心を持つべきであることを示している、”とハミルトン健康科学の人口保健研究所とマックマスタ―大学(カナダ)のアンドリュー・メンテ教授は言っている。

 進行中の都市と農村における前向き疫学調査(PURE)からのデータが解析に使われ、18ヶ国369社会で年齢35 – 70歳の95,767人の参加者が調査に含まれた。早朝空腹時の中途尿試料が全参加者から集められ、24時間尿中ナトリウムとカリウム摂取量を推定するために使われた。人口要因、生活様式、健康歴、そして薬物使用についての情報が記録され、身長、体重および血圧が測定された。

 平均追跡期間は8.1年で、その間に3,695人が死に、3,543人が大きな循環器系疾患(心筋梗塞1,372人;脳卒中1,965人;心不全343人;循環器系疾患死亡914)の発症があった。解析は社会単位で行われた:循環器系疾患と死亡については255社会(各社会で参加者100人以上)、および血圧については369社会(各社会で参加者50人以上)。中国社会の80(82/103)12.5 g/d以上の平均塩摂取量で、一方、他の諸国では84(224/266)社会が7.6 – 12.5 g/dの平均塩摂取量であった。調査で7.6 g/d以下の平均塩摂取量の社会はなかった。比較的高い塩摂取量は血圧上昇および脳卒中発症増加と関係していたが、その関係は非常に高い塩摂取量の社会(ほとんどは中国)で見られたが、他の社会では見られなかった。比較的高い塩摂取量は心筋梗塞と総死亡の低い比率と関係していた。

 “中程度の摂取量で、塩は循環器系の健康に有益な役割を持っているかもしれないが、摂取量が非常に高いまたは非常に低い時にはもっと有害な役割を持っている可能性があることを示唆するエビデンスの増加に我々の研究は寄与している。これは、我々が必須栄養素と健康について期待した関係である。我々の身体は塩のような必須栄養素を必要としているが、問題はどれくらい多くかである。5.1 g/dまでに塩摂取量を下げることを勧めることは塩摂取量と血圧との短期間試験と血圧を下げるための何らかの方法は意図しない結果をもたらさないで循環器系疾患の危険率を下げることに必ず繋がるという仮説に基づいている。低塩摂取量は血圧を下げるが、非常に低いレベルでは、死亡や循環器系疾患の危険率増加と関係する幾つかのホルモンの悪い増加を含めて他の影響も持っているかもしれない、”とメンテ教授は付け加える。

 さらに、脳卒中、循環器系疾患死亡、そして全死亡率はこれらの社会でカリウム摂取量増加に伴って低下した。果物と野菜の豊富な食事はカリウムが高い。しかし、カリウム自身が保護するのかどうか、あるいはそれが健康食の簡単な標識であるかどうかは分らない。調査の共著者であるマックマスタ―大学のマーチン・オドンネル教授は次のように付け加えている:“我々の結果は、果物と野菜、酪農製品、ポテト、ナッツ、豆類を強化したオールラウンドな健康食を勧める他の研究を支持している。非常に高い塩摂取量(12.5 g/d以上)は有害であるが、大多数の人々が摂取している量は循環器系疾患あるいは死亡の危険率増加と関係しているようには思えない。”

 今日発表されている研究は2016年のランセットに発表されている論文に従っている。それは同じコホ-トを使っているが、解析は社会よりも個人レベルで行われた。中程度の塩摂取量と比較して、高塩摂取量(17.8 g/d以上)は循環器系疾患の危険率増加と高血圧者の死亡と関係しており、低塩摂取量(7.6 g/d以下)は高血圧の有無に関係なく循環器系疾患と死亡の危険率増加と関係していたことを研究は明らかにした。社会レベル解析と追加的な年間追跡を含めることによって、新しい研究は追加的なエビデンスと社会と国のために予防するアプローチを加えている。

 コメントに関連しての記載で、ベルンの大学病院(スイス)のフランツH.メッセルリとルイス・ホフステッターおよびニューヨーク大学医学部(アメリカ)のスリパル・バンガロールは次のように述べている:“2010年の24時間尿中ナトリウム排泄量と182ヶ国での2012年の出生時の国連の健康寿命の概要は、国内総生産のような潜在的な混乱因子を無視すると、非常に高い塩摂取量を除いて、塩摂取量は寿命を縮めることを示しているようには思えない…我々が勧告値を変える前に、メンテと同僚達の結果が圧倒的にアジア人口の観察データであり、一晩の空腹時尿測定に関する24時間ナトリウム排泄量計算に基づいていることを忘れてはならない。脳卒中危険性のある患者の塩摂取量低下または心筋梗塞の危険性のある患者の塩摂取量の増加のような積極的な介入は有益であることが判明するだろうことは必ずしも従わない。それにもかかわらず、結果は非常に興味深く、ランダム化比較試験でテストされるべきである。事実、そのような試験は厳密に管理された環境、アメリカの連邦刑務所集団で提案された。減塩を観察する試験は連邦刑務所集団で行われたと言う簡単な事実は、塩摂取量を減らすことが良く知られているように難しいことを示している。もっと果物と野菜を食べることによりカリウムの多い食事をするように人々を動機付けることはあまり説得力がない。”