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「リチウムは完全に死んだ」:日本の科学者達がスカンジウムを添加することで、ナトリウム電池をあらゆる電池よりも長寿命化し、しかもコストもゼロにする画期的な技術を発見

“Lithium Is Completely Dead Now”: Japanese Scientists Discover Scandium Breakthrough That makes Sodium Batteries Outlast Everything While Costing Nothing

By Rosemary Potter

https://www.energy-reporters.com/より   2025.09.20

 

東京理科大学の研究者達は、ナトリウム・イオン電池技術における有望な画期的な成果を発表した。スカンジウム添加によって電池正極の構造的完全性と性能が大幅に向上することを実証し、エネルギー貯蔵分野に革命をもたらす可能性を秘めている。

 

要約

  科学者達は、スカンジウム・ドーピイングがナトリウム・イオン電池の性能と構造健全性を大幅に向上させることを発見した。

  この研究は、ナトリウム・マンガン酸化物正極における急速な容量低下の問題に取り組んでいる。

  スカンジウムの導入は、P’2ポリタイプ正極材料の構造健全性を維持するのに役立つ。

  この研究は、電池内の層状金属酸化物の安定性を向上させるための新たな戦略を提示している。

 

より効果的で持続可能なエネルギー貯蔵解決策の絶え間ない追求により、東京理科大学の研究者達は、ナトリウム・イオン電池技術における画期的な進歩を探求してきた。リチウム・イオン電池は市場を席巻しているが、リチウムの不足と環境への影響に対する懸念から、科学界は代替電池の模索を迫られている。豊富なナトリウム含有量を背景に、ナトリウム・イオン電池は有望な候補として浮上している。最初の研究では、ナトリウム・イオン電池の正極にスカンジウムを添加することで性能が大幅に向上するこの取り組みにおけるが実証されており、より耐湿性と効率性に優れたエネルギー貯蔵解決策への道が開かれる可能性がある。

 

容量低下の課題

 ナトリウム・イオン電池、特にマンガン酸ナトリウムを正極とする電池は、リチウム・イオン電池の現実的な代替材料としての可能性を示してきた。その魅力はナトリウムが天然に豊富に存在することと、希少元素への依存度が低いことである。しかし、これらの電池は大きな課題に直面している。それは、急速な容量低下である。この劣化は多くの場合、Jahn-Teller歪み、つまりマンガン・イオンが充放電サイクル中に結晶構造を歪ませ、時間の経過と共に容量が低下する現象によって引き起こされる。

 東京理科大学の研究チームは、この問題の解決に着手した。「層状マンガン・ナトリウム酸化物は、希少元素を含まない高容量ナトリウム・イオン電池の正極材料として有望な候補の1つである。」と研究者達は研究論文で述べている。この発見は極めて重要であり、容量低下の問題を解決することでナトリウム・イオン電池の潜在能力を最大限に引き出し、より持続可能で効率的なエネルギー貯蔵の選択肢となる可能性がある。

 

電池性能におけるスカンジウムの役割

 容量減衰問題の解決策を模索する中、研究者達は正極材料へのスカンジウムの添加を検討した。駒場真一教授率いる研究チームは、スカンジウム・ドーピイングが電池性能に及ぼす影響を調査した。「以前、P’2Na2/3[Mn1-xScx]O2電極へのスカンジウム・ドーピイングによって、電池性能と長期安定性が向上することを発見した。」と駒場教授は述べている。しかし、この改善の正確なメカニズムは依然として不明であり、さらなる調査が必要であった。

 この研究により、スカンジウムが正極材料のP2ポリタイプの構造的完全性を維持する上で極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった。結晶成長を変化させ、電解液との副反応を低減し、耐湿性を向上させることで、スカンジウム・ドーピイングはナトリウム・イオン電池が直面する課題に対する適格な解決策を提供する。注目すべきは、これらの改善はスカンジウムとP2ポリタイプ乃組み合わせに特有のものであり、イッテルビウムやアルミニウムといった他の金属では同様の結果は見られなかったことである。

 

構造安定性の向上

 本研究の成果は、より安定性と効率性に優れた電池技術の探求において、大きな前進を示すものである。駒場教授は、この研究が電池用途における層状金属酸化物の構造安定性を高める新たな戦略を提示するものであると強調した。このアプローチは、ナトリウム・イオン電池のみならず、層状金属酸化物を利用する他の電池技術にも応用可能である。

 ナトリウム・イオン電池の改良に向けた世界的な取り組みが進行中であり、世界中の研究者達が急速充電時の短絡や急速な容量低下といった共通の課題の克服に取り組んでいる。電解液中の塩濃度を高めるといった最近の開発は、ナトリウム・イオンをよりスムーズに析出させる上で有望であることが示されている。これらの革新は、ナトリウム・イオン電池をより安全で、より長寿命で、より高速に充電できる可能性を秘めており、エネルギー貯蔵分野におけるナトリウム・イオン電池の地位をさらに確固たるものにしている。

 

エネルギー貯蔵の新時代を切り開く

 これらの研究成果は、研究室の枠にとらわれず、エネルギー貯蔵の未来を垣間見せてくれる。再生可能エネルギー源の需要が高まるにつれて、効率的で持続可能な電池技術の必要性も高まる。高性能で環境負荷乃少ないナトリウム・イオン電池は、この転換期において重要な役割を果たすことが期待される。

 本研究では、スカンジウムをドープした正極を用いて300回の充放電サイクル後でも60%の容量維持率を示したことが実証されており、このアプローチの可能性を証明している。研究者達がこれらの技術をさらに改良していくことで、高性能で長寿命のナトリウム・イオン電池の実現可能性はますます現実味を帯びてくる。しかし、これらの進歩はエネルギー貯蔵の未来をどのように形作るのだろうか。そして、持続可能な電力解決策の探求において、どのような新たなイノベーションが生まれるのであろうか。