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低/高ナトリウム血症

Hypo/hypernatremia

By Pradip Kamat

Endocrinology Advisor 2017

 
1.  問題の説明

臨床医が知っておく必要のあること

 正常な血清ナトリウム(Na)135 – 145 mEq/Lの間できちんと制御されている。血清ナトリウムが135 mEq/L以下になると、低ナトリウム血症の結果となる。血清ナトリウムが150 mEq/L以上になると、高ナトリウム血症となる。ナトリウム障害はナトリウム収支よりもむしろ通常、水収支の問題である。これは特に高ナトリウム血症の真実である。

臨床的な特徴

低ナトリウム血症

 血清ナトリウムが低下すると、水が脳内に移動する結果血漿浸透圧勾配の低下となる。ほとんどの神経症状は脳内過水和に帰する。患者は無気力、無関心、嘔吐、頭痛、発作、昏睡で明らかになる。125 mEq/Lと言う血清ナトリウムは発作域値と考えられ、それ以下で発作が起こり、または他の中枢神経症状が現われる。ほとんどの低ナトリウム血症患者は正常な筋肉緊張と機能を持っている。

高ナトリウム血症

 子供はことによると“疳高い”叫びや鳴き声でイライラしているかもしれない。無気力の期間はイライラしている期間と混ざり合っているかもしれない。脱水と高ナトリウム血症が厳しければ、筋肉緊張の増加と発作が起こり昏睡になるかもしれない。高ナトリウム血症に続く高張性は大脳収縮と脳血管の破裂(特に新生児の場合)を起こす結果となり、その結果、脳出血となる。重症の高ナトリウム血症(外傷性脳損傷のために高張食塩水の使用によって誘発される)は急性腎障害を起こす可能性がある。

重要な管理点

低ナトリウム血症

 発作を起こしたまたは血清Na125 mEq/L以下に急に低下した患者は血清ナトリウムを上昇させるために3%の高張塩水を必要とする。多くの慢性低ナトリウム血症は中心橋ミエリン溶解の発症を避けるために内輪に見積って(正しくは約12 – 15 mEq/L/d)管理されている。高ナトリウム血症は水または比較的低張の溶液を使って通常修正される。脳浮腫の発症を避けるため48時間以上かけてゆっくりと修正されるべきである。

 

2.緊急管理

患者の安定化

低ナトリウム血症について:血清ナトリウムが125以下になる、または発作の前兆が現われたとき、5 - 10分間かけて3%高張塩水を5 cc/kg使用する。

高ナトリウム血症:最初に脱水症/ショックを修正し、その後、基礎疾患を注意深く治療する。等張溶液の使用は血清ナトリウムを修正するのではないかもしれず、低張溶液を必要とするのかもしれない。

他の主要点

低ナトリウム血症:発作の前兆または発作がなければ、約12 – 15 mEq/L/dでゆっくりと修正する。

高ナトリウム血症:48時間以上でゆっくりと修正する。

 

3.診断

診断基準とテスト

 低ナトリウム血症と高ナトリウム血症は発作、昏睡または診断時の精神状態の変化で推測すべきである。血清ナトリウムをベッド脇でチェックし、検査室の基礎代謝検査員に送って確認すべきである。尿中電解質と尿浸透圧も調べる必要があるかもしれない。脳浮腫または脳障害患者については脳CTスキャンが必要かもしれない。水和度を調査するために中心静脈圧モニタリングが必要かもしれない。30 mEq/L以上のスポット尿ナトリウムは高い尿中ナトリウム排泄量を表している。これは塩分浪費多尿症で特に役立つ。3 cc/kg/h以上の尿排泄量で血清ナトリウム上昇は、特に他の症状がない限り、尿崩症を強く示唆している。高ナトリウム血症患者は皮膚緊張感を低下させるかもしれず、腹部の皮膚が指でつまめるときには特徴的な“生パンのような”感覚が認識される。

通常のラボ値

血清ナトリウムの通常範囲:135 – 145 mEq/L

低ナトリウム血症:135 mEq/L以下の血清ナトリウム。高ナトリウム血症:150 Eq/L以上の血清ナトリウム

他の可能な診断

低ナトリウム血症:特に血清ナトリウムが炎光分析器を使って測定されると、等張偽低ナトリウム血症(血漿浸透圧が280 – 295 Osm/kg)が血漿中の脂質とタンパク質の増加と共に見られる。グルコースとマンニトールは人工的な低ナトリウム血症(血漿浸透圧が295 mOsm/kg以上)を引き起こす可能性がある。これは細胞内液から細胞外液へ水の再分配によって引き起こされる本当の低ナトリウム血症である。血糖中の100 mg/dl増加毎に、血清ナトリウムは1.6 mEq/Lずつ低下する。

 

4.特別な治療

一次療法

低ナトリウム血症:上述した緊急治療に加えて、基礎疾患を探して適正に治療しなければならない。正用量ナトリウム血症(例えば、SIADH:バゾプレシン分泌過剰症)は飲水量制限で治療される。高用量ナトリウム血症患者(例えば鬱血性心不全、ネフローゼ症候群など)は水と塩制限で治療される。

高ナトリウム血症:根本的な原因を探して処理しなければならない。尿崩症については、L-デアミノ-(8-D-アルギニン)IVバソプレシン点滴が使用される。体液過剰と急性腎障害を伴う難治性高ナトリウム血症では、透析が必要になる場合がある。

 

5.疾患モニタリング、追跡と素因

治療に対して予測される応答

 適切な治療で予後は優れ、予期した根本的な原因が確定される。

誤診断

 水分制限がSIADHの低ナトリウム血症を矯正しなければ、SIADHの診断は再考されなければならない。SIADHは一般的に胸部とCNS(中枢神経系)感染(それぞれ肺炎と髄膜炎)である。それは脳浮腫と脳腫瘍でも見られる。それは除外すべき診断である。患者の血清ナトリウムは安定した値が得られるまで最初にほとんど2時間毎と静脈内液の変化毎に密接に追跡しなければならない。

 

病態生理学

低ナトリウム血症:血清ナトリウムの低下は血清浸透圧の低下となる;血液脳関門による塩濃度勾配は水を脳内に移動させる原因となる。症状は脳の過剰水和から起こる。

低ナトリウム血症は総体内ナトリウム量に比較して水欠乏を表し、通常、水収支の異常である。高ナトリウム血症は細胞内液脱水の結果であり、脳血管が裂け脳出血が起こる。

 

疫学

低ナトリウム血症の原因

一度低張性低ナトリウム血症(280 mOsm/kg以下の血漿浸透圧)が確認されると、細胞外液に基づいて、我々は低ナトリウム血症を次のように分類する:

  低用量低ナトリウム血症:(a) 一般的な原因にはGI(下痢、嘔吐)、過剰な発汗、第三の症状(火傷、膵炎、腹水、滲出)がある;

(b) 腎臓による原因には利尿剤の使用、塩消耗腎症、副腎不全、偽性低アルドステロン症と代謝性アルカローシスがある。

● 正用量低ナトリウム血症:SIADH、グルココルチコイド欠乏、甲状腺不全と中毒

● 高用量低ナトリウム血症:(a) 浮腫形成状態(鬱血性心不全、肝硬変と腎症性症候群;そして(b) 腎不全(急性/慢性)

高ナトリウム血症の原因

  ナトリウム過剰、例えば、不適切に混合された処方または過剰な重炭酸ナトリウム投与。

  水不足:尿崩症、糖尿病性ケトアシドーシス、不十分な水摂取量

  過剰なナトリウム不足で水不足:下痢、浸透圧性利尿薬による閉塞性尿路障害と腎異形成。

小児集中治療センターで見られる尿崩症の最も一般的な原因は頭部外傷と鞍上腫瘍(例えば、頭蓋咽頭腫)に続いて起こる。

 

予後

 低/高ナトリウム血症の根本的な現任に依存する。

 

看護および関連医療専門家のための特別な考慮事項

 血清ナトリウムの緻密なモニタリングと変化の予想が重要である。例えば、手術後の患者は異型乳管過形成解離を刺激する痛みと薬剤はもちろん与えられる輸液療法を含めて低ナトリウム血症について多くの理由を持っている。そのような患者の血清ナトリウムを緊密にモニターすることが重要である。より最近の研究は病院で低張性維持点滴の実行のような医原性状態から起こる低ナトリウム血症の潜在的な病的効果に焦点を置いている。