塩化ナトリウム・ニッケル電池
Sodium-Nickel-Chloride Battery
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1.技術的な説明
A. 物理的原理
Na-NiCl2二次電池は主にニッケル(Ni)と塩化ナトリウム(NaCl)からなる陽極と通常はナトリウム(Na)からなる陰極との間で発生する電気化学的充放電反応に基づくエネルギー貯蔵システムである。電極はナトリウム・イオンに対しては導電性であるが、電子に対しては隔離板であるベータアルミナセラミック壁によって分離されている。このベータアルミナセラミックは電解質として機能し、セルの陰極と陽極の間でナトリウム・イオンの伝導を可能にする。電極を溶融状態に保つために、電池温度は270℃から350℃の間に保たれる。すなわち、独立したヒーターが電池システムの一部である。
B. 重要な構成要素
主な構成要素は次の通りである:
● 電極、電解質、分離板で構成される基本的なセル
● モジュール
● モジュールと制御システムの大規模な組み立て品で構成される電池システム
● 電力変換システム
C. 主要な性能データ
出力範囲 数MW
エネルギー範囲 4kWhから最大数MWh
放電時間 2時間から数時間まで
サイクル寿命 4,500サイクル
寿命 15年以下
反応時間 数ミリ秒
効率 85 – 95%*
エネルギー密度 100-120 Wh/kg
CAPEX:エネルギー 550-750 €/ kWh
CAPEX:電力 150-1000 €/ kW
*補助負荷を含む
D. 設計変数(網羅的ではない)
ケースからコンテナまでサイズに応じて様々な電池システムが可能である。
2.最先端
Na-NiCl2技術は主に公共交通機関向けの電気自動車向けに過去10年間に市場に導入されてきた。現在、固定電池バックアップ、鉄道用電池バックアップ、電気自動車、およびオン配電網/オフ配電網エネルギー貯蔵用途向けに、より幅広い製品が利用可能である。単一電池サイズは4~25 kWhの範囲で、数 kWhから数MWhの設備までのエネルギー貯蔵容量を持つ幅広い用途に適している。セラミック電解質のため、電池には電気化学的自己放電がない。動作条件に応じて、熱損失は熱に変換される内部電気損失とバランスが取れているため、全体的な効率は80~95%の範囲になる。
他のタイプの高温電池とは対照的に、Na-NiCl2電池には、固有の過充電機能と低い動作温度がある。他の電池とは異なり、電力とエネルギーの比率が柔軟で、構成成分に損傷を与えることなく周囲温度まで冷却できる。
Na-NiCl2は周囲温度に関係なく高性能と耐久性を保証する高温電池である。動作中、外気温度が大きく変動しても、電池モジュールの内部温度は動作温度範囲内にとどまり、容量や寿命に影響を与えることはない。最も過酷な熱条件でも、放電と充電の両方の操作は外気温に関係ない。
1999年以来、Na-NiCl2電池はヨーロッパとアメリカで製造されている。多くのプロジェクトが既に世界中で実施されている(アメリカ、南米、ヨーロッパ、韓国)。
3.今後の展開
わずか15年間の使用後、Na-NiCl2電池技術の改善には非常に大きな可能性が残っている。実験室規模では、正の活性物質に高度な添加剤を使用し、固体セラミック電解質の抵抗を下げることにより、比出力が向上している。生産量の増加に加えて、自動化とプロセスの改善により、さらなるコスト削減が実現されている。耐食性に優れた新しいガラス材料などの設計強化により、サイクル寿命が向上する。
最大MWサイズの電力蓄電と2~6時間のエネルギーを備えた完全なターンキー・エネルギー貯蔵システムが既に設置されている。
Na-NiCl2電池技術はオン配電網およびオフ配電網用途の特定の解決に最適である。
4.ヨーロッパにおける関連性
この技術はアメリカよりもEUで最初に製造されたものであり、日本でのみ製造されているNa/S電池の代替品と見なすことができる。これは自動車用途の市場に最初に導入され、現在の技術は定置型エネルギー貯蔵、スマートグリッド(オングリットおよびオフグリット)、再生可能エネルギー、バックアップ、データ・センター用途用の無停電電源装置、電気自動車などの複数の用途をカバーしている。
5.用途
様々な電池とシステム・サイズを組み立てる際の高い拡大性と柔軟性により、Na-NiCl2電池は様々な用途に使用される。
● 住宅および商業ビル:時間シフト、地元で生産された太陽光発電エネルギーの自己消費の最大化、無停電電源装置、契約料金を引き下げるための電力ブースト
● 配電網:再生可能エネルギー発電のためのピーク・シェービング、平滑化、エネルギー時間シフト、スマートグリッド管理のサポート、投資延期
● 再生可能エネルギー生成の最適化
● 送電グリッド:エネルギー時間シフト、グリッド周波数調整
● マイクログリッド・オングリッドおよびオフグリッド用途
6.情報源
● EASEメンバー
● FIAMM
● ENEA Consulting
● ISEA RWTH Aachen