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生命、熱、電力に不可欠-塩水について知らないこと

Vital for Life, Heat and Power – What You Never Knew about Salt Water

By Timothy Duuignan

The Conversation   September 14, 2018

 舌は塩検出器である-チップスにまぶした固体の塩結晶を溶かして濃厚な風味を作り出す。しかし、塩は食品添加物だけよりももっと重要である。塩水は地球表面で事実上最も一般的な物質であり、生命や地球にとって本当に重要である。ここに昔ながらの塩水について驚くべき5つのことがある。

1.塩水は生命を維持する電気信号を伝える

 食卓塩(塩化ナトリウム)のような固体の塩が水に加えると塩水ができ、イオンと呼ばれるそれぞれ自由に動く粒子に分解される。イオンの存在に応じて多くの種類の塩水がある。これらのイオンは髪で擦った風船のように行動する。イオンは電荷を運び、塩水に電気を通させる。身体は心臓を脈打たせるように、脳に考えさせるように電気信号を送るために塩水を使う。これを行うために、身体にはこれらのイオンを動かすイオン・ポンプと呼ばれる特別な分子がある。これらのイオン・ポンプが故障すると、多くの病気が生ずる。

 どのイオンがこれらの信号を運ぶかも重要である。例えば、ナトリウムを周期表で一番近い元素の親類に置き換えると、リチウムの場合には双極性障害の治療、カリウムの場合には致命的な注射成分のいずれかになる。

.海水は地球中に熱を運ぶコンベアーベルトとして働く

 映画「デイ・アフター・トゥモロー」で有名になったように、ヨーロッパと北アメリカは、熱帯から北に流れる暖かい水の大規模な流れであるメキシコ湾流によって暖かく維持されている。この流れは海水の塩分変化によって引き起こされる。冬に極地の氷冠が凍ると、周囲の海水塩分は濃くなる。濃い塩水は重いので海底に沈み、海水をかき混ぜ、これらの流れを推進する。気候変化が氷冠を溶かすと、これらの流れは混乱させられる。これは複雑な方法で世界中の熱と栄養素の流れを混乱させる。

3.海水は大気から二酸化炭素を吸収するために使用される

 気候変動の最悪の影響を防ぐために、我々は大気中から二酸化炭素(CO2)を抽出し、大規模に蓄える必要がある。海水は現在既にこれをしている。人類が大気に放出する全てのCO21/4以上を除去している。CO2は水と反応して海水の酸性度を増加させるイオンを形成する-それは海水に住む動物にとって大きな問題である。しかし、我々は利益のためにこの効果を使える。カリウム・イオンを含む水(塩水と同様)に意図的に大量の空気にさらすと、CO2を非常に費用対効果の高い方法で効果的に捕捉できる。これは、電力が安くCO2を貯蔵する場所があれば何処でも行える。 

4.塩水を使用する電池を構築すると、エネルギー貯蔵問題を解決できる可能性がある

 風力発電所とソーラーパネルはエネルギーを取り込むのに非常に効果的である。-しかし、気候変動に対処するには、エネルギー貯蔵のために新しい安価な方法が必要である。

 最も一般的に使われている技術のリチウム・イオン電池は液体に溶けているリチウム・イオンを使い、電池の陽極と陰極との間で電気を行き来させる。現在使われている液体は高価で、電池の充電が遅く、発火する可能性がある。この液体を塩水で置き換えることが電池研究の鍵となる目標である-費用と安全性で利益が期待される。これらの種類の電池は製造も容易で、増加する電池需要を満たすために重要である。

5.しかし、我々は塩水の最も単純な特性でさえ予測できない

 過去1世紀にわたって塩水を理解することの重要性が認識されてきた-科学の最も偉大なノーベル賞受賞者の一部がこの問題に取り組んできた。我々は今日もこの質問についてエキサイティングな進歩を遂げている、部分的には、強力なスーパーコンピューターと量子力学を使用して、塩水の挙動をシミュレートしている。

 残念ながら、塩水の特性を予測する我々の能力にはまだ長い道のりがある。例えば、非常に塩分の高い水はハンドウォーマーの製造に使用できる過飽和溶液を作れる。この種の溶液を十分に長く放置すると、自然に固体の塩が形成されるが、これにかかる時間の理論的予測は文字通り数千兆倍以上の速さである。この誤算の大きさは、我々が何か重要なものを見逃していることを示している!

 単純な塩水の研究はブラックホールや癌の治療に関するより刺激的な科学と比較して売れ行きが悪い。事実、塩水を理解することは我々の身体や我々自身の惑星を理解するために不可欠である。それは、それらを保存するまでの鍵でさえあるかも知れない。