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WHO健康的な塩代替品への切り替えを推奨する理由

Why the WHO Has Recommended Switching to a Healthier Salt Alternative

The Conversation     2025.01.30

 

 今週、世界保健機関(WHO)は、家庭で普段使用している塩をナトリウム含有量の少ない代替品に切り替えることを推奨する新しいガイドラインを発表した。しかし、これらの塩の代替品とは一体何か?そして、なぜWHOはこれを推奨しているのか?見てみよう。

 

古い問題に対する新しい解決策

 塩(塩化ナトリウム)を控えるようにというアドバイスは目新しいものではない。これは何十年もの間、国際およびオーストラリアのガイドラインの一部となっている。これは、塩に含まれるナトリウムを摂り過ぎると健康に害を及ぼす可能性があることが証拠によって明らかになっているためである。

 過剰なナトリウムは高血圧のリスクを高め、これはオーストラリアの何百万人もの人(成人の約3人に1)に影響を及ぼしている。高血圧は、心臓病、脳卒中、腎臓病などのリスクを高める。

 WHOは、塩の摂り過ぎが原因で、毎年世界中で190万人が死亡していると推定している。WHOは、1日のナトリウム摂取量を2 g以下に抑えるよう推奨している。しかし、人々は平均してこの2倍以上の1日4.3 gを摂取している。

 2013年、WHO加盟国は2023年までに国民のナトリウム摂取量を30%削減することを約束した。しかし、塩摂取量を減らすのは比較的難しいことが分った。オーストラリアを含むほとんどの国は、2025年までにナトリウム摂取量を減らすというWHOの目標を達成できないであろう。WHOはその後、2030年までに同じ目標を設定した。

 問題は、塩摂取量を減らすということは、塩味が薄くなるということを受け入れるということである。また、従来の調理方法を変える必要もある。これは、家庭で料理する人々に求めるにはあまりにも過大な要求であり、食品業界にとっても過大な要求であることが判明した。

 

カリウム強化塩の登場

 ナトリウム含有量の少ない塩の主な代替品は、カリウム強化塩と呼ばれている。これは、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた塩である。

 カリウムは必須ミネラルであり、体のあらゆる機能に重要な役割を果たしている。新鮮な果物や野菜に含まれるカリウムの多さは、それらが健康に良い主な理由の1つである。人々は必要以上にナトリウムを摂取しているが、カリウムを十分に摂取量していない人も多くいる。

 WHOは1日のカリウム摂取量を3.5 gと推奨しているが、全体としてほとんどの国の人々はこれよりかなり少ない量を摂取している。

 カリウム強化塩は、摂取するナトリウム量を減らし、食事中のカリウム量を増やすことで、我々の健康に良い効果をもたらす。どちらも血圧を下げるのに役立つ。

 通常の塩をカリウム強化塩に切り替えると、世界中で行なわれた大規模な試験で、心筋梗塞、脳卒中、早死のリスクが軽減されることが示されている。モデル化研究では、人口全体でカリウム強化塩に使用に切り替えることで、中国とインドだけ毎年数十万人の心臓病疾患(心臓発作や脳卒中など)による死亡を防ぐことができると予測されている。

 塩摂取量を減らすのではなく、切り替えることの重要な利点は、カリウム強化塩を通常の塩と11で直接交換できることである。見た目は同じで、調味料やレシピに使用でき、ほとんどの人は味に大きな違いを感じない。

 カリウム強化塩に関するこれまでで最大の試験では、5年後も90%以上の人がまだこの製品を使用していた。

 

切り替え:いくつかの課題

 完全に実施されれば、これはWHOがこれまでに提供したアドバイスの中で最も重大なものの1つになる可能性がある。

 食事の調理方法を変えるだけで、世界中で毎年何百万もの脳卒中や心臓発作を防ぐことができる。しかし、この段階に到達する前に克服すべき障害がいくつかある。

 先ず、メリットとリスクのバランスを取る氷を溶かすが重要である。例えば、進行した腎臓病の人はカリウムをうまく処理できないため、これらの製品は適していない。これは人口のごく一部に過ぎないが、カリウム強化塩製品には適切な警告ラベルを貼り付けるようにする必要がある。

 重要な課題は、カリウム強化塩をより手頃な価格で入手しやすくすることである。塩化カリウムは塩化ナトリウムよりも生産コストが高く、現在、カリウム強化塩は主にニッチな健康製品としてプレミアム価格で販売されている。

 塩の代替品は、低ナトリウム塩、カリウム塩、ハート塩、ミネラル塩、減塩塩とも呼ばれる。

 2021年に発表された調査によると、低ナトリウム塩は47ヶ国でのみ販売されており、そのほとんどが高所得国であった。価格は通常の塩と同じ物からほぼ15倍高いものまであった。

 食品グレードの塩化カリウムをより多く生産するサプライチェーンの拡大は、この製品をより広く利用できるようにするために必要となる。また、カリウム強化塩が普通の塩の横の棚に並べられ、人々が簡単に見つけられるようにする必要がある。

 オーストラリアのような国では、我々が摂取する塩の約80が加工食品から来ている。WHOのガイドラインは、食品製造に使用される塩の切り替えを明確に優先していないため、不十分である。政府と協力して食品業界の導入を促進する関係者は、健康上のメリットを最大限に高めるために不可欠である。