蓄電事業でテスラに挑むナトリウム電池が新たに増える
More Sodium Batteries to Challenge Tesla on Energy Storage Business
By Tina Casey
https://cleantechnica.com/ 2025.04.02.
テスラのCEO, Elon Muskは今年中に新型ナトリウム電池が登場すると何か言ってなかったか?もしかしたらそうかもしれないが、期待しないで。このところ多忙を極めるMuskは、自称「肥料大統領」のホワイトハウス運営を補佐するという最重要業務に携わりながら、複数の州の選挙に影響力を発揮している。テスラの電動自転車販売は急落しているが、心配要らない。テスラはメガパック蓄電システムを確実に確保している空である…。ちょっと待って…。
ナトリウム電池がエネルギー貯蔵市場に登場
ナトリウム・イオン電池は、塩などの安価で豊富な材料を使用する。また、不燃性で無毒性である。これらの特性を長寿命・高性能なエネルギー貯蔵システムに応用することは、過剰な重量などの課題を抱えながら、未だ途上にある。しかし今、その努力が実を結び、ナトリウム・イオン電池は定置型エネルギー貯蔵とモビリティ用途の両方で市場に登場し始めている。モビリティ分野の最新ニュースは、2017年の設立以来、非常に活発に活動している中国のスタートアップ企業、HiNa Battery Technologyから発信されている。
2024年2月、市場調査会社ID TechExはHiNaに取材を行ない、試作電気マイクロカーを発表する予定であると報じた。「低価格のSehol E10Xマイクロカーは、HiNa製の円筒形ナトリウム・イオン・セルで作られた25 KWhの電池パックを搭載している。」とID TechExは指摘し、HiNaは2022年12月に最初の1 GWh生産ラインを稼動させ、既に合計30 GWhのラインを5本建設する計画を進めていると付け加えた。
ID TechExはさらに、「CATL、Svolt、Farasis、Lifun、DFD、Transimageなど、多くの競合企業が現在、独自のナトリウム・イオン電池の開発に取り組んでおり、今年中に量産化を目指している。」と付け加えた。
昨年秋、HiNaはリサーチ・アンド・マーケット社から「ナトリウム・イオン電池:材料、技術、そして2029年までのグローバル市場:CATL、HiNa Battery Technology、Faradion、Tiamat、Natron Energyが8億3,850万ドル規模の業界を席巻」という見出しの新しいレポートに掲載され、その名が挙がった。
アメリカ向けナトリウム電池のさらなる展開
アメリカ市場への進出も昨年秋に浮上したが、モビリティ分野とは関係なかった。10月10日、オハイオ州に拠点を置く電池メーカーのAcculonは、HiNaとの提携を発表し、定置型エネルギー貯蔵用ナトリウム電池をアメリカ市場に投入した。
「この提携は、商業・産業用途における従来の鉛蓄電池システムを、優れたナトリウム・イオン技術に置き換え、安全性、性能、エネルギー密度を向上させることを目的としている。Acculonは複数のサプライヤーを厳密にテストした結果、HiNaのナトリウム・イオン技術がデータ・センター、電力網の近代化、その他の重要な市場において優れていると判断し、HiNaを選択した。」とAcculonは説明した。
Acculonは、その過程でリチウム・イオン電池技術にも着目し、「産業・商業市場は、リチウム・イオン電池の材料とサプライチェーンの本質的な不安定性に対する懸念を軽減するために、ナトリウム電池技術を求めている。」と指摘した。
電気自動車のコストを削減するナトリウム電池
モビリティ分野に話を戻すと、HiNaは先週、電気自動車市場向けに新型急速充電ナトリウム電池の発売を発表した。この電池は、20~25分で100%充電が可能で、急速充電
のみを使用した場合でも8,000回以上の充電が可能であると述べている。
中国の電気自動車専門ニュース・サイトCnEVPostによると、この新型ナトリウム電池は、HiNaが当初注力していた電動二輪車とセダンから一歩進んだ製品である。
「HiNa Battery – Haixing」とも呼ばれるこの4つの製品群には、短距離走行用のK150とK210、物流輸送用のK280とK350が含まれている。
CnEVPostは、HiNaゼネラル・マネージャーのLi Shujunの言葉を引用し、「既存の商用車用電池解決策と比較して、HiNaのナトリウム・イオン電池解決策は、大幅に低いコストでより高い出力をサポートできる。」と報じている。
アメリカではどうだろうか?
アメリカでは、エネルギー省が数百万ドルもの税金を公的資金による研究開発に投入し、ナトリウム・イオン電池技術の欠陥を解消しようとしている。その目的は、エネルギー貯蔵コストの削減、サプライチェーンのレジリエンス向上、そして有害物質の削減、あるいは撲滅である。大統領執務室に座する体外受精に執着する大統領がこの取り組みを中止するかどうかはまだ分からないが、ナトリウム電池の秘密は既に漏れ出している。
例えば、カリフォルニア州のNatron Energyは昨年8月、ノースカロライナ州エッジコム群に14億ドルを投じた工場を建設し、国内市場向けにナトリウム電池の生産規模を拡大する計画を発表した。
計画通りに進めば、この工場の出力は24 GWhとなり、ナトロン社の既存生産ラインの約40倍に相当する。同社はまた、今後10年ほどで1,000人の高級雇用を新たに創出し、ノースカロライナ州の経済に34億ドルの付加価値をもたらすと見込んでいる。
さらに多くのナトリウム電池が登場…あなたのメガパックへ
「ナトロン社の高性能ナトリウム・イオン電池は、電力密度と充電速度においてリチウム・イオン電池を上回り、リチウム、コバルト、銅、ニッケルを必要とせず、不燃性である。」とナトロン社は強調している。
電気自動車関連事業については、まだ期待しすぎない方が良い。ナトロン社は、120万平方フィート(約1万平方メートル)の施設を、電気自動車急速充電ステーション向けナトリウム電池を含む定置型エネルギー貯蔵市場をターゲットとしている。
「ナトロン社の電池は、現在市場で唯一UL認証を取得しているナトリウム・イオン電池であり、データ・センター、モビリティ、電気自動車急速充電、マイクロ送電網、通信など、産業用電力分野の幅広い顧客エンド・マーケットに供給される予定である。」と同社は述べている。
ナトロン社はノースカロライナ州の州経済開発基金から多額の支援を受けているため、これは必ずしもトランプ大統領とその「DOGE」の破壊工作員たちが連邦政府機関を通じて交付された資金を停止または回収することで破壊しようと試みるような、影響力の大きいクリーン・テクノロジー・プロジェクトの1つではない。
このプロジェクトが前進している兆候の1つとして、3月6日、チェコの化学会社Draslovkaがナトロン社との新たな研究開発契約を発表した。「この提携により、Draslovka社が持つ独自の化学製造における深い専門知識を活用し、ナトロン社の先進的なナトリウム・イオン電池設計に不可欠な高品質のプルシアン・ブルー材料を供給することができる。」とDraslovkaは説明した。
「この施設は、Draslovka社のアメリカ事業拡大の青写真となり、急増する需要に対応してナトリウム・イオン電池の生産拡大を目指すナトロン社の目標達成を後押しするであろう。」とDraslovkaは付け加えた。
これはまた、アメリカのエネルギー貯蔵業界における競争が激化していることを示す新たな兆候でもある。これまでテスラのメガパックは商用エネルギー貯蔵市場で大きなシェアを競ってきたが、状況は変化する可能性がある。
テスラの電気自動車事業はブランド評判の失墜の影響を受け、低迷しているが、今のところその汚点は定置型エネルギー貯蔵事業「メガパック」には及んでいない。これは当然のことである。商業規模のエネルギー管理者の多くにとって、ブランド評判は最優先事項ではないであろう。彼等はコスト、効率、信頼性を重視しており、それだけでもテスラに匹敵する競争力がある。