ナトリウム・イオンと固体電池のニュース
Sodium-Ion & Solid-State Battery News
By Steve Hanley
https://cleantechnica.com/ 2025.02.
「層状有機カソードによる高エネルギー、高出力ナトリウム・イオン電池」という見出しの記事に出会ったら、読みますか?ほとんどの人は「いいえ」と言って読み飛ばすであろう。しかし、Clean Technicaでは、このような電池の話が大好きなので、当然掘り下げて調べなければならなかった。以下は、この研究の概要である:
ナトリウム・イオン電池は、代替エネルギー貯蔵解決策としての可能性から大きな注目を集めているが、既存のカソード材料のエネルギー密度が限られているため、課題が残っている。原理的には、酸化還元活性有機材料は理論エネルギー密度が高いため、この課題に取り組むことができる。しかし、有機電極の電極レベルのエネルギー密度は、電子/イオン輸送が悪く、溶解が激しいため、低下する。
ここでは、ナトリウム・イオン電池にバンドキャップが低く、導電性があり、非常に不溶解性の層状金属フリーカソード材料を使用したことを報告する。この材料は、4電子酸化還元プロセスによって可能になった。フォーミュラ単位当り355 mAh/gという高い理論容量を示し、606 Wh/kg電極(90重量%活性材料)の電極レベルのエネルギー密度と優れたサイクル安定性を実現する。この材料は、容易な二次元Na+拡散を可能にし、高い固有速度能力を可能にする。わずか2重量%のカルボキシル官能化カーボン・ナノチューブの存在下で活性カソード材料を成長させることで、電荷輸送および電荷移動速度が改善され、さらに電力性能が向上する。これらを総合すると、手頃な価格で持続可能な有機小分子から構成されたナトリウム・イオン電池・セルの構築が可能になり、90秒で充電/放電する場合のカソード・エネルギー密度が472 Wh/kg電極、最大比電力が31.6 kW/kg電極になる。
少し難解に思われたなら、Interesting Engineeringが専門用語の解読をお手伝いする。プリンストン大学のDincăグループの研究者達が新しい有機カソード材料であるビステトラ・アミノベンゾキノン(TAQ)を使用したナトリウム・イオン電池を開発し、驚くべきエネルギー性能を示したと発表している。「この電池は、はるかに短い充電時間で同じ量のエネルギーを蓄えることができる。あるいは、同じ充電時間ではるかに多くのエネルギーを蓄えることができる。」と、Dincăグループの博士号を持ち、この論文の筆頭著者であるTianyang Chenは述べている。この革新的な技術は、電気自動車、データ・センター、再生可能エネルギー・システムなど、さまざまな用途に大きな影響を与える。
この開発は、現在のエネルギー貯蔵技術に関連する限界に対処するものである。リチウム・イオン電池は広く使用されているが、リチウムに依存している。リチウムは、入手が限られており、サプライチェーンが複雑である。一方、ナトリウム・イオン電池は、より持続可能で手頃な解決策を提供する。ナトリウムは豊富で広く入手可能であるため、希少な資源への依存度が軽減される。ナトリウム・イオン技術を利用することで、エネルギー貯蔵の環境への悪影響を軽減し、より安定したサプライチェーンを確保できる。
しかし、ナトリウム・イオン電池にもいくつかの課題がある。「科学者達はナトリウム・イオン電池である程度進歩を遂げているが、そのエネルギー効率の低さが主な障害となっている。サイズに比べて電池の駆動時間が短い。」と研究者達はプレス・リリースで述べた。この制限がナトリウム・イオン電池の普及を妨げている。「エネルギー密度は、電池にどれだけの電力が入るかと同じなので、多くのヒトが気にしている。エネルギー効率が高いほど、充電しなくても車が走れる距離が長くなる。」とDincăは述べた。
新しいTAQのカソード材料は、これらの制限に対処する。この材料は、エネルギー密度と電力密度の両方で優れた性能を示し、従来のリチウム・カソードを上回る可能性さえある。この画期的な進歩により、ナトリウム・イオン電池は性能と効率の点でリチウム・イオン電池と競合できるようになる。TAQカソードの不溶性と導電性は、電池内での性能にとって重要である。不溶性はカソードの安定性に寄与し、電池の動作中にカソードが壊れるのを防ぐ。導電性は、エネルギーの貯蔵と放出に重要なプロセスである電子の流れを促進する。
リチウム・イオンからナトリウム・イオン技術への移行には、明確なエンジニアリング上の考慮が必要である。研究者達は、ナトリウム・イオン化学の特定の要件に対応するために既存の方法を適応させるのに1年を費やした。その結果、理論上の最大容量に近い性能を発揮する電池が誕生した。「我々が選んだバインダーであるカーボン・ナノチューブは、TAQ微結晶とカーボン・ブラック粒子の混合を促進し、均質な電極を実現する。」とChenは説明する。この最適化された構造により、活物質をほぼ100%利用でき、電池の性能を理論上の限界に近付けることができる。
新しいナトリウム・イオン電池は、印象的な性能指標を示している。「4電子酸化還元プロセスによって可能になった、フォーミュラ単位当り355 mAh/gという高い理論容量を示し、優れたサイクル安定性とともに、電極レベルのエネルギー密度606 Wh/kg(90重量%の活性物質を達成している。) と研究は述べている。「これらの数値は、この技術がさまざまな用途で既存のリチウム・イオン電池と競合し、最終的にはそれを上回る可能性があることを強調している。」とInteresting Engineeringは述べている。
近所の自動車部品店に急いで行って、ナトリウム・イオン電池の在庫があることを期待しないで下さい。この技術はすべての研究室で開発されており、商業生産には3~5年かかる可能性がある。我々は新しい電池技術の夢の道を何度も歩んできたが、電池寿命と充電サイクルの仕様がすべて明らかになるまでは興奮しすぎないようにしている。しかし、それは重要なことではない。重要なのは、電気自動車はまだ新しい技術であり、世界中の人々が、高性能で低コストの電気自動車を大衆市場の顧客にとってより魅力的なものにする新しい技術を懸命に探しているということである。ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池の現実的な代替品であろうか?その質問は数年後に我々に聞いて下さい。
固体電池ニュース
最近、BMWが今年後半に導入する新しい第6世代電池技術について報じた。同社によれば、この技術により次世代電気自動車の航続距離が最大30%長くなると言う。その発表が行なわれた記者会見で、BMWは今年後半に固体電池を搭載したデモ車両を発表する予定であることが明らかになった。しかし、量産車はすぐには登場しない。オートカーは、BMWの次世代電池技術担当副社長Martin Schusterから、同社が早くても2030年以降まで固体電池搭載の電気自動車を発生する可能性は低いと聞いた。BMWブログによると、同氏はドイツの高級ブランドが現在、固体電池を搭載した車を販売できるものの、生産コストがまだ高すぎるため、購入者に転嫁するのは理にかなわないと述べた。購買・供給責任者のJoachim Postも法外なコストについて言及し、顧客は追加費用を支払わないであろうと見積った。
興味深いのは、メルセデスとヒュンダイの両社が、2030年までに全固体電池を搭載した自動車を生産すると主張していることである。メルセデスのドライバーは伝統的に裕福であるが、ヒュンダイはプレミアム層に属していないため、BMWやメルセデスよりもコスト意識が高い。ヒュンダイは、韓国南部の京畿道にある義王研究センターで固体電池セルの試験生産を開始したばかりである。固体電池に関しては、韓国企業がドイツのメーカーに先んじることができるかどうかが注目される。来月初めに同社が新型固体「ドリーム」電池を正式に発売する予定で、この取り組みについてさらに詳しく知ることができるであろう。