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アメリカと中国からのナトリウム・イオン電池ニュース

Sodium-Ion Battery News from the US & China

By Steve Hanley

https://cleantechnica.com/        2024.08.

 

 電池と言えば「リチウム・イオン」という言葉を耳にすることに慣れきっているため、リチウムを全く使わないナトリウム・イオン電池など、電気を蓄える他の方法であることを忘れがちである。電池で広く使用されているにもかかわらず、リチウムにはいくつかの欠点がある。価格が不規則に変動することがあり、顧客がリチウム・イオン電池の将来の価格を知ることが難しい。しかし、問題はだけではない。リチウムの抽出は環境や社会に危害をもたらす可能性がある。さらに、中国が世界中のリチウム・サプライチェーンの多くを掌握しており、中国以外の電池メーカーがサプライチェーンを管理することがより困難になっているという事実もある。

 ナトリウムにはこうした欠点はない。豊富で世界中どこにでも存在し、安価である。ナトリウム・イオン電池は最高のリチウム・イオン電池ほどの性能はないが、リチウム・ベースの同種の電池に比べていくつかの利点がある。低温でもリチウム・イオン電池ほど性能が劣化せず、火災のリスクが大幅に減少する。そのため、スペースの制約がほとんどない送電網規模の電力貯蔵システムにはほぼ理想的である。ナトリウム・イオン電池技術は開発曲線の初期段階にあり、10年ほど前のリチウム・イオン技術とほぼ同じである。

 実際、中国のSineng Energyは、開発中のナトリウム・イオン電池技術を採用し、中国湖北省で計画中の100 MW/200 MWhプロジェクトの蓄電池にそれを適用している。同社は2024(6日の声明で、50 MW/100 MWhの蓄電池を備えたこのプロジェクトは第一フェーズが系統に正常に接続され、商業運転を開始したと述べた。

 この設備は、185 Ahのナトリウム・イオン電池を搭載した42個のBESSコンテナ、21個の電力変換システム・ユニット、および110 kVブースター・ステーションで構成されている。Sineng2.5 MWストリング・ターンキー解決策は、システムの700 V1500 Vの広いDC電圧範囲に合わせて特別に設計されている。クラスターレベルのエネルギー管理を特徴とするSinengの解決策は、ナトリウム・イオン電池のクラスターレベルのバランス調整機能を強化する。さらに、ストリングOCSユニットは、極端な温度と高湿度でも耐久性を確保できるように設計されている。

 

ノースカロライナ州のNatronナトリウム・イオン電池工場

 Axiosによると、カリフォルニア州を拠点とし、ナトリウム・イオン電池を製造する電池スタートアップ企業Natron Energyは、今週、ノースカロライナ州と大規模なインセンティブ・パッケージに合意した後、同州ロッキーマウント近郊のエッジコム郡の製造工場に14億ドルを投資する計画である。Natronは、キングスボロ・ビジネスパークに多額の投資をもたらすことになる。この場所は、中国のタイヤメーカーTriangle Tyreが関税を理由に工場建設計画をキャンセルして以来、経済開発業者が入居先を探している場所である。

 ノースカロライナ州商務省によると、Natron2028年から2032年の間にエッジコム郡で1,062人の雇用を創出すると見込まれている。これらの職種の最低平均賃金は64,071ドルとなる。同社は、国内の供給のみを使用する120平方フィートの施設をビジネスパークに建設すると述べた。雇用と投資の目標を達成した場合、Natronは州の雇用開発投資助成金とメガサイト準備プログラムから5,000万ドル以上のインセンティブを受ける資格がある。商務省によると、地元のインセンティブによりさらに13,000万ドルが追加される。

 ミシガン州にもう1つの工場を持つNatronは、ナトリウム・イオン電池技術がリチウムに比べて低コストでサプライチェーンが容易なため、投資家にとって魅力的だとAxiosは指摘する。同社の顧客には、データ・センターや石油掘削業者などの大規模産業ユーザーが含まれる。ノースカロライナ工場は、既存の未使用の工場よりも大幅に規模が大きく、ミシガン州の600 MWに対して、年間24 GWのナトリウム・イオン電池を生産する。

 ミシガン工場は今年4月にナトリウム電池の製造を開始した。同僚のTina Caseyによると、ナトロン工場はかつてのリチウム・イオン電池工場を再利用したものである。当初、新工場はデータ・センターの爆発的に増加するエネルギー貯蔵のニーズに対応する。特に、Natronは、AI技術の爆発的な成長がアメリカのデータ・センターにおけるエネルギー貯蔵と24時間365日の電力供給の需要をさらに高めると予想している。

 20209月、エネルギー省のARPA-Eオフィスから、リスクが高く見返りも大きいプロットに資金を提供する1,990万ドルの助成金を受け、新工場の建設を主導することを目標としている。「このプロジェクトは、Natron Energyのプルシアン・ブルー電極ナトリウム・イオン電池の生産量を30倍の年間18,000トレイに拡大し、6ヶ月間の継続的な生産と販売を通じて、結果として得られるサプライチェーンと製品のリスクを完全に排泄することを目指している。」とARPA-Eは説明した。

 DOEはまた、同社の8 kW50 Vの電池トレイは主にデータ・センターのピーク負荷を管理し、緊急時のバックアップ電源を提供するために設計されているが、電動自転車急速充電ステーションや送電網規模の蓄電などの新興市場もターゲットにしていると指摘した。「Natronのトレイは、データ・センター運営者に、既存の製品よりも最大2倍の電力密度と10倍のサイクル寿命、そして優れた安全性能を提供する。」とARPA-Eは述べた。Axiosは、Natronがノースカロライナの新工場を建設するためにはより多くの民間資本を調達する必要があるが、ABBテクノロジー・ベンチャー、NanoDimension CapitalVolta Energy Technologiesなど、すでにいくつかの重要な支援者がいると指摘した。

 エネルギー省はナトリウム・エネルギー貯蔵のイノベーターを支援してきた。昨年10月、ARPA-Eはマサチューセッツ州の24M Technologies社に、電気自動車専用の新しいナトリウム・イオン電池の開発のため3198085ドルを授与した。「24 Mセル設計には、(1) 先進的なコバルト・フリー、ニッケル・フリーのナトリウム正極活物質でできた極厚セミソリッド正極、(2) 機械学習と自動化されたハイスループット・スクリーニング技術を使用して開発された先進的な広範囲温度対応の急速充電電解質、(3) ナトリウム超イオン伝導体が組み込まれる。」とARPA-Eは当時説明した。

 研究面では、エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所がリチウム・イオン電池に関する経験を基に、走行可能なナトリウム・イオン電池の新しい解決策を開発している。ナトリウムとリチウムの「化学的親和性」が電池研究の助けとなる。「ナトリウムは元素周期表でリチウムのすぐ下に位置しており、化学的挙動は非常に似ている。とPhysics Magazine 誌は最近説明した。「この化学的親和性により、ナトリウム・イオン電池は設計と製造技術の点でリチウム・イオン電池の「後を継ぐ」ことができる。」と同誌は述べている。フランスの大学で長年エネルギー貯蔵を研究しているJean-Marie Tarasconは、さらに率直に語った。「ナトリウム・イオン技術は、実際にはリチウム・イオン技術のクローンである。」と、同氏はPhysics Magazineに語った。

 

要点

 電池技術はまだ若く、商業生産から20年も経っていない。何度も言っているが、未来の電池はまだ研究段階である。我々の孫達は、ラジオやテレビには暖まる必要がある真空管があると祖父母から聞いたとき、我々が驚いたように、かつて電池にリチウムが使われていたことに驚くであろう。

 電池は完全電気化の未来の鍵であり、完全電気化の未来は、より新しく、より安価で、密度が高く、充電時間が短い電池にかかっている。我々は今、それらの電池を切実に必要としているが、残念ながらイノベーションは命令できるものではない。イノベーションは自然に起こる。忍耐強く、」キリギリスさん。