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蓄電ニュース - MicrovastLFP, Sineng

ナトリウム・イオン

Battery Storage News – LFP from Microvast, Sodium -Ion from Sineng

By Steve Hanley

https://cleantechnica.com/        2024.08.

 

 蓄電はクリーン・エネルギーへの移行に不可欠である。今では、ほとんどの人が太陽は毎晩沈み、風が常に吹くわけではないことを認識しており、再生可能エネルギーは従来の火力発電とは全く異なったものになっている。火力発電の唯一の問題は大気汚染であるが、それを脇に置けば、非常に信頼性が高く、1世紀以上にわたってその信頼性を維持している。

 その信頼性により、発電された電気は「ディスパッチ可能」になる。これは発電業界の専門用語で、エネルギー需要があれば火力発電が何時でもそれを供給するという意味である。台所の蛇口のようなものである。蛇口をひねると水が出る。再生可能エネルギーの場合、システムのどこかに中間メカニズム、つまり余分な電子を吸収して必要に応じてシステムに供給できるものがなければ、常にそうであるとは限らない。蓄電により再生可能エネルギーはディスパッチ可能になり、ディスパッチ可能性により再生可能エネルギーは火力発電に取って代わることができる。

 最初の蓄電システムでは、電気自動車に電力を供給するのに使われるのとほぼ同じ電解セル(ニッケル、マンガン、コバルトまたはニッケル、コバルト、アルミニウム)が使われていたが、それらの電池は電気自動車を加速させるのに必要な急速なエネルギー・バースト

に最適化されていた。エネルギー貯蔵電池は、数時間にわたって電子を安定して供給するのに適しており、これはリン酸鉄リチウム電池の得意とする所である。

 リン酸鉄リチウム電池(LFP)には他にも利点がある。ニッケルやコバルトなどの高価な原材料を使用していないため、製造コストが低くなる。熱暴走(「電池火災」の言い換え)が発

生する可能性が低く、NMCNCA電池よりも寿命が長くなる。

 

MicrovastLFT蓄電を優先する

 202488日のプレス・リリースで、MicrovastLFP電池が次世代蓄電システムの基盤にすると発表した。「商用車のお客様のニーズを満たすために製造されている超高性能ニッケル、マンガン、コバルト(NMC)電池とは異なり、当社の新しい565AhLFP電池はESSのお客様の独自のニーズに合わせて特別に調整されており、優れた長期パフォーマンス、コスト効率、信頼性を提供する。」

 MicrvastCEOであるYang Wuは、「エネルギー貯蔵は、炭素削減とクリーン・エネルギーへの世界的な移行を加速するために不可欠である。当社のME6エネルギー貯蔵解決策は、電気エネルギー供給が必要なあらゆる用途に使用できる。この効率的な解決策を発表できることを嬉しく思っており、アメリカおよび世界中のパートナーとともに業界を前進させていきたいと考えている。」と述べている。

 同社によると、LFPベースのME6エネルギー貯蔵解決策は、高度な窒素保護を組み込んだコンパクトなコンテナで必要に長い寿命を実現し、年間を通じて屋外でも信頼性の高い動作を可能にするなど、魅力的なメリットの組み合わせを提供するという。電池寿命は10,000サイクルで、電池寿命を延し、往復効率を高める統合冷却システムの恩恵を受ける。エネルギー貯蔵の顧客にとって特に興味深いのは、Microvast LFT電解セルが国内生産されていることで、これはインフレ削減法のセクション45Xで提供される税制優遇措置の対象となることを意味する。

 「当社の最新世代のエネルギー貯蔵解決策であるME6は、効率性を高めるために設計されている。」とMicrovastの最高技術責任者であるWenjuan Mattis博士は述べている。「当社の高性能LFPセルを利用して容量と安全性を高かめるながら、最長30年の優れた寿命を提供し、10,000サイクル以上をサポートするME6コンテナを開発した。当社の先駆的な窒素保護技術は火災を防ぎ、腐食に対抗するのに役立ち、当社の頑丈なIP55およびC4設計と組み合わせることで、システムの信頼性と寿命の両方を大幅に向上させることができる。

 「さらに、当社の統合型モジュール式液体冷却システムは、電池温度の一定化、アクティブ・セル・バランスによる性能の最適化、熱損失の低減による往復効率の向上に役立つ。これらの最先端の機能により、Microvastは今日のエネルギー貯蔵市場の厳しい要求を満たすために必要な信頼性と性能を提供できるようになる。」同社は、テネシー州クラークスビルの生産拠点にすべての製造活動を統合していると述べている。

 

Sineng中国のナトリウム・イオン電池貯蔵ハブを展開

 LFP電池はNMCNCA電池よりも安価であるが、ナトリウム・イオン電池はさらに安価である。リチウム価格は過去数ヶ月で急落したが、ナトリウムは豊富で非常に安価である。現在、主に中国のいくつかの企業がナトリウム・イオン電池を搭載した自動車を提供しているが、これはそれらの驚異的なパフォーマンスや優れた航続距離のためではなく、メーカーが超安価な電気自動車を市場に投入できるためである。

 中国の電池メーカーであるSinengは、開発中のナトリウム・イオン電池技術を、中国湖北省で計画中の100 MW/200 MWhプロジェクトの蓄電に適用している。同社は202486日の声明で、50 MW/100 MWhの蓄電を備えたこのプロジェクトの第一フェーズが、系統への接続に成功し、商業運転を開始したと述べた。

 中国はリチウムからの多様化を目指し、代替エネルギー貯蔵技術を模索してきた。ナトリウム・イオン電池は、原材料が豊富で、低温でも優れた性能を発揮し、往復効率が高く、安全性に優れていることから、有望な選択肢として浮上している。

 この設備は、185 Ahのナトリウム・イオン電池を搭載した42個のBESSコンテナ、21個の電力変換システム・ユニット、および110 kVブースター・ステーションで構成される。Sineng2.5 MWストリング・ターンキー解決策は、ナトリウム・イオン電池エネルギー貯蔵システムの広いDC電圧範囲に合わせて細心の注意を払って設計されており、700 Vから1500 Vの定格出力電力をサポートする。クラスターレベルのエネルギー管理を特徴とするSinengの解決策は、ナトリウム・イオン電池のクラスターレベルのバランス調整機能を強化する。さらに、ストリングPCSユニットは、極端な温度と高湿度での耐久性を確保するように設計されている。

 プロジェクトが稼動すると、ピーク需要を効果的に緩和し、送電網の回復力を高め、信頼性の高い電力供給を保証する。このプロジェクトは、中国が多様なエネルギー貯蔵解決策に移行する上で重要な節目となる。ナトリウム・イオン電池技術をこれほど大規模に導入することは、代替エネルギー貯蔵システムの実現可能性と利点を実証し、世界中で広く採用される道を開く。

 

まとめ

 蓄電技術は、他の電池用途の発展に合わせて進化している。これは、クリーン・エネルギーやクリーンな輸送解決策への移行を支持するすべての人にとって朗報である。しかし、ここで議論する必要がある政治的要素がある。ニューヨーク・タイムズによると、中国の学生は他の大国の学生よりも科学、数学、工学を専攻する学生が多いそうである。2000年代以降、高等教育の全体的な入学者数は10倍以上に増加しているにもかかわらず、その割合はさらに増加している。

 研究開発費は急増し、過去10年間で3倍となり、中国はアメリカに次ぐ第二位となった。オーストラリア戦略政府研究所の最近の計算によると、中国の研究者は64の重要な技術のうち52で広く引用される論文の出版数で世界をリードしている。教育省によると、中国の学部生の大多数は数学、科学、工学または農業を専攻している。また、中国の博士課程の学生の4分の3がこれらを専攻している。比較すると、アメリカの学生部の5分の1と博士課程の学生の半分だけがこれらの分野に属している。

 中国のリードは特に電池分野で大きい。オーストラリア戦略政策研究所によると、電池技術に関する広く引用されている技術論文の65.5%は中国の研究者によるもので、アメリカは12%である。つまり、インフレ抑制法で提供される経済的インセンティブはすべて最大限に活用されているが、それはアメリカにはそのために必要な人的資本がほとんどないためである。アメリカとその他の先進国が、重要なサプライチェーンにおける中国の優位性という課題に真剣に取り組むつもりなら、教育イニシアチブで中国に追いつく必要があるであろう。来年1月に政権を握ったHarris-Walz政権は、この点を検討したいかもしれない。