戻る

新しいナトリウム・イオン電池は電気自動車を

数分ではなく数秒で充電できる

New Sodium-Ion Battery Could Charge Vehicle in Seconds, Not Minutes

By Tina Casey

https://cleantechnica.com/         

 

 電気自動車革命はまだ始まったばかりであるが、充電時間の目標は既に変わりつつある。新しい研究によると、ナトリウム・イオン電気自動車電池は数分ではなく数秒で充電できるとのことである。これは現在市場にある最高のリチウム・イオン技術をはるかに上回るだけでなく、ガソリンやディーゼル燃料の性能にも勝っている。

 

未来の持続可能な電気自転車用電池のためのナトリウム  

2000年代初頭から電気自動車の関係者の間ではリチウム・イオン電池がエネルギー貯蔵技術の選択肢となってきたが、変化が起こっている。ナトリウム・イオン電池技術は新たな登場した技術に1つである。

 電気自動車の電池に関しては、ナトリウムは入手性とコストの点でリチウムに優っている。性能が課題であり、1つのハードルは重量である。ナトリウムとリチウムは原子的に隣り合っているが、ナトリウムの原子量はリチウムの3.3倍である。

 スエーデンの電池会社Northvoltは最近、中国の大手電気自動車メーカーBYDと提携し、モバイル・アプリケーションに関する問題を解決したことを示した。

 我々が見落とさない限り、アメリカの自動車メーカーはまだそこまでは至っていない。その代わり、固定式エネルギー貯蔵が最初のターゲットである。カリフォルニアの企業Natron Energyは先週、データ・センターの負荷を均衡させ、停電に対処するエネルギー貯蔵システムに重点を置いたアメリカ初の工場を稼働させたばかりである。オハイオ州に拠点を置くAcculon Energyも、ナトリウム・イオン分野でチャンスを見出しているアメリカのエネルギー貯蔵企業である。

 

スーパー・キャパシタの役割

 内燃機関の市場とは異なり、電気自動車の電池市場では、コスト、航続距離、充電時間のさまざまな組み合わせに加えて、ドライバーの習慣、スケジュール、充電ステーションへのアクセスなどの他の要因に対応するために、電池の化学組成のさまざまなバリエーションをサポートできる。とは言え、1分以内に車を停めてプラグを差し込み、再び出発できるというアイデアは魅力的である。

 新しいナトリウム・イオン電池研究の背後にある主な特徴は、スーパー・キャパシタである。ウルトラ・キャパシタとも呼ばれるスーパー・キャパシタは、数秒で充電できるエネルギー貯蔵装置である。また、電荷を素早く放出することもできる。

 現代の用途に関して言えば、最初のスーパー・キャパシタは1950年代に登場し始め、今日では広く使用されている。「スーパー・キャパシタは、2つの電極の間に固体の誘電体層を必要とせず、代わりに電解質溶液で満たされ、絶縁多孔質膜で分離された多孔質電極に電荷を蓄積することでエネルギーを蓄える。」とアメリカエネルギー省は説明している。

特に電気自動車の場合、その利点は長いライフサイクルと、幅広い温度範囲で効率的に機能する能力が含まれる。しかし、急速放電に関する問題に気付いた場合は問題である。電気自動車への導入は現在、加速や回生ブレーキなど、急速な電力のバーストが役立つ二次タスクに限定されている。これらの使用例では、スーパー・キャパシタはメイン電池の摩耗を回避する。

    

 将来の超超高速充電ナトリウム・イオン電気自動車

     主な電池用途では、スーパー・キャパシタは徹底的に改良する必要がある。「スーパー・キャパシタの主な欠点は、エネルギー密度が低く、自己放電率が高いことである。」とエネルギー省はさらに説明しており、化学ベースの電池は一定期間使用しないと充電が失われる傾向があることを指摘している。

     電池の化学にナトリウム・イオン式が含まれると、複雑さが増す。しかし、KAIST(韓国科学技術院)の研究チームは、スーパー・キャパシタのパワーと、ナトリウム・イオン電池化学反応のコストとサプライチェーンの利点を組み合わせた

新しいエネルギー貯蔵解決策を考案した。

 研究者達はこの新しい電池が電気自動車分野で利用されることをすでに予想している。それはまだ先のことかもしれないが、プロジェクトは有望なスタートを切っている。チームの研究は、3月にEnergy Storage Materials誌に「高性能ナトリウム・イオン・ハイブリッドエネルギー貯蔵のための結晶度の低い導電性多価鉄硫化物埋め込みSドープ陰極と3D多孔質Nリッチ・グラファイト・カーボン・フレームワークの高表面積Oドープ陽極」というタイトルで発表された。

 簡単に言うと、チームは新しい洗練された陰極スーパー・キャパシタ技術に対処した新しい陽極を組み合わせた新しい電池を開発した。2つの電極は、エネルギー貯蔵率の差を埋めるために慎重に設計された。

 「この組み合わせにより、デバイスは高い貯蔵容量と急速な充放電率の両方を実現でき、リチウム・イオン電池の次世代代替品として位置づけられる。」とKAIST418日付けのプレス・リリースで説明し、ナトリウムはリチウムの500倍以上豊富であることにも言及している。

 「このデバイスは市販のリチウム・イオン電池のエネルギー密度を上回り、スーパー・キャパシタの電力密度の特性を発揮する。」とKAISTは強調した。「電気自動車からスマート電子機器、航空宇宙技術に至るまで、急速充電用途に適していると期待されている。」

 

未来の超超超急速充電電気自動車へのもう1つの道

 スーパー・キャパシタ技術を導入して電気自動車の充電時間の水準を引き上げたチームは、KAISTチームだけではない。ここアメリカでは、TAMU(テキサスA&M大学)の研究チームが窒化物MXenesを組み込んだ新しい電池の開発に取り組んでいる。「マキシン」と発音されるMXenesは、2013年にClean Technicaの注目を集め、電気自動車電池技術を次のレベルに引き上げる可能性に注目した。

 「グラフェンと同様に、MXenesは、小型、軽量、高速、安価、高効率の電子デバイスやエネルギー貯蔵装置の新時代を切り開く可能性のある独自の特性を備えている。」と我々は熱く語った。

 グラフェンとMXenes2Dの原子レベルの材料である。グラフェンは炭素原子の単層で構成され、MXenesは金属炭化物、窒化物、または炭窒化物でできた2層の材料で構成されている。

 TAMUチームは、MXenesの支援を受けて、電気自動車の電池を数秒で充電するという野望を超えて、数日間持続する数秒の充電を次世代エネルギー貯蔵材料減塩しようとしている。

 「チームの研究は、小型電子機器や大規模な送電網貯蔵から電気自動車まで、さまざまな用途でエネルギー貯蔵装置にとって信頼できる選択肢となる窒化物MXenesの可能性を強調している。」とTAMU422日のプレス・リリースで述べている。

 Clean Technicaはこの研究に関する最新の論文を求めてTAMUに連絡を取っている。我々は、主任研究者でTAMU化学工学教授のAbdoulaye Djire博士が2019年に執筆したこのトピックに関する記事を見つけた。その中で、彼のチームは2D材料Ti4N3TxMXene(Tiはチタン、N3は窒化物、Txはグループ表面を指す)が金属としても半導体としても機能することを実証した。

 MXenesに関するDjire博士の広範な研究は、電気自動車や充電時間やその他のエネルギー貯蔵用途に大きな影響を与える可能性に加えて、2022年にNature誌に掲載された記事で説明されているように、アンモニア(NH3)生産の脱炭素化にも役立っている。

 スーパー・キャパシタに関する新しい珍しいニュースについては、アメリカ国家情報長官室のハイリスク・ハイリターンの研究部門であるIARPAにも注目している。アメリカにそのような組織があることを知らなかった方は、ぜひ参加して下さい。3月にIARPAはバイオベースのスーパー・キャパシタの分野の研究者からの意見を聞きたいと発表したので、今後の情報に注目して下さい。