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システムは配電網外冷却のために塩と太陽光を組み合わせる

System Combines Salt and Sunlight for Off-Grid Cooling

By Sam Howell

https://www.chemistryworld.com/より

2021.09.29

 

サウジアラビアの研究者達は塩の吸熱溶解を使用してそのすぐ近くの領域を冷却するシステムを開発した。太陽エネルギーは溶質を再生でき、循環システムが電力供給を必要とせずに機能できることを意味し、遠隔地のユーザーに最適である。

 近年、多くの地域で記録的な気温上昇が発生しており、極度の暑さに伴う死亡リスクは、冷凍技術の需要が将来的に

増加することを意味する。しかし、ほとんどの冷却装置は電気駆動の蒸気圧縮に依存している。これは配電網外の社会に住む何億人もの人々にとっては実行不可能である。

 「我々のシステムは遠隔地や配電網外社会に冷却電力を提供できると信じている。」とキング・アブドゥラー科学技術大学のPeng Wangは述べている。

 王のチームによって開発されたシステムには2つの段階がある。最初の段階では、硝酸アンモニウム塩を金属製のカップの水に溶かす。これにはエネルギーが必要である。このエネルギーは直線的に環境から引き出され、カップと溶液の周囲の空気を冷却する。第2段階では、水溶媒を蒸発させることで溶質を再生する。これは3D構造の表面に垂直に吸い上げることで実現される。これはシミュレートされた太陽光にさらされると、溶媒が蒸発できる広い領域を提供する。これにより、表面にコンパクトな結晶塩層が残り、そこから大きな結晶が時間の経過と共に脱落し、構造の下に集められて再利用される。

 「このシステムは必要な時に何時でも一日中、一年中冷却を提供できるが、太陽溶質再生装置は、太陽エネルギーが存在する日中は機能する。」とWangはコメントする。

 このグループは溶解と溶質の再生を分離することにより、最大191 W/m2のエネルギー貯蔵と冷却能力を季節毎にオンデマンドで使用できることを発見した。ステージを物理的および時間的に分離することにより、冷却速度を制御する事が可能になる。溶解する塩の量は様々な目的に合わせて調整できる。また、再生速度は溶媒の蒸発速度に影響を与えることによって制御できる。例えば、結晶を形成するために利用できる表面積を変更することによって制御できる。

 「このシステムは溶解冷却システムと溶質再生装置の両方が安価であるため、まったく効果でない。」とWangは言う。ただし考慮すべき幾つかの制限がある。「従来の空調と比較して、このシステムは依然として冷却能力が低く、狭いスペースの冷却にのみ適している。

 このような持続可能な冷凍技術は「エネルギー消費と世界的な排出量を削減しながら、増大する冷却需要に対処するという大きな期待を抱いている。」とアメリカのMITの機械工学部門を率いるEvelyn Wangはコメントしている。「特に、低コストの材料を使用して冷却能力を向上させることは、建物の冷却や生鮮物質の保管など、様々な用途に影響を及ぼす。」

 「電力入力が不足しているため、この概念は地方および配電網外の用途に有望である。」イギリスの冷却の将来に関するオックスフォード・マーティン・プログラムのフェローであるレナルディ・レナルディはコメントしている。「そのスケールアップの可能性、安全性、および信頼性についてさらに学ぶことは興味深い。」