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どうして成功した塩代替物の味がそんなに分かりにくいか

A Taste of Why Successful Salt Substitutes Remain so Elusive

By Rebecca Trager

https://www.chemistryworld.com/より

2018.09.03

 

 塩の摂り過ぎは世界的に高血圧に関連した疾患に対する主要な寄与因子である、したがって、政府や保健機関は人々に減塩するように奨励する。味があって関連する健康問題のない(または少ない)塩代替物はこの健康危機に取り組む長い道を行くだろう。しかし、口当たりの良い塩代替物は健康危機を解決するための全ての努力を混乱させてきた手に負えないパズルのままである。

 アメリカ、フィラデルフィアのモネル・ケミカル・センシーズ・センターのBrain Lewandowskiはボストンで開催された第256回アメリカ化学会で、塩味以外の塩味を提供できる物を探している研究者の一人であった。‘人工甘味料のような物があれば良いが、塩では、’とLewandowskiChemistry Worldに語っている。

 現在、塩に対しての最高の代替物は、塩化ナトリウムを塩化カリウムで通常置き換えた混合物である。しかし、塩化カリウムは不愉快な味で食べ物を汚染する。これらの製品は塩化カリウムと他の塩類とを複雑に組み合わせて一般的に使われ、その後、苦味があればそれを隠すために特別な化合物を加える。

 ‘塩は非常に魅力的な多くの性質を持っており、したがって、それを減らしたり、実際に良い味のしない何かで塩と置き換えることは、食品産業界が解決するには難しい問題である。現状の塩代替物による最善の努力でも不愉快な味をまだ消せない、’とLewandowskiは説明した。

 塩の味は他の4原味-甘味、苦味、旨味、酸味-よりもずっと複雑である。4原味は一般的に1種類の味覚受容体を持っている。例えば、味覚を感じる受容体はT1R2T1R3と呼ばれる2つのタンパク質の組み合わせであり、旨味の受容体はT1R1T1R3の組み合わせである。それらがどのように組み合わされるかに依存して、これは甘味受容体か旨味受容体のいずれかの1つのタンパク質形態の一族に関係していた。

 苦味受容体はT2Rsと呼ばれるタンパク質族であり、科学者達は酸味に応答する細胞群を同定し、味の多くはそれら自身に特有の受容体を持っている。‘我々は酸味受容体についての可能性をかなり限定してきた-我々は、それがある種のカリウム・チャネルであり、強調してプロト・チャネル作用でもあるらしいことを知っている、’とLewandowskiは言った。

 しかし、塩味を真似ることは誤魔化しである。塩味に応じる2つの異なった生物学的経路-アミロライド感受性経路とアミロライド非感受性経路-があるからである。名前が示すように、前者の経路は塩に対してより感受性で、低い塩濃度でも働くが、一方、高い塩濃度は後者の経路を活性化することが必要である。

 

2つの生物学的経路

 塩を置き換える研究をさらに混乱させる事実がある。他の味覚品質と違って、塩などに応答する多くの細胞群は他の味覚細胞種類の部分集合を設定する。‘味覚細胞の単一専用群を持つ代わりに、塩に対する応答のように思われることは、他の味覚に応答する異なった種類の味覚細胞の一群を横断するように分布しているからである、’とLewandowskiは説明した。

 科学者達はアミロライド感受性経路用の塩受容体として上皮ナトリウム・チャンネルを特定したが、アミロライド感受性経路用についての受容体は神秘のままである。‘アミロライド非感受性受容体の同定は、味覚の分子的基礎に関する限り最後の大きな疑問である。我々がこの機構を明らかにできれば、人口塩味料または塩味強化剤を作ることを研究している会社はその研究に目標を定めるであろう、’とLewandowskiは言った。そのような発見はその特別な受容体の活性に影響を及ぼす化合物を発見するために目標を篩い分けられる。

 塩化ナトリウムのような小さな分子を模造することの難しさを考えると、塩代替物よりもむしろ塩味強化剤-塩が受容体を一層活性化させられる受容体と相互作用する化合物-を開発することがより現実的であるかもしれない。‘強化剤で低濃度の塩化ナトリウムを味わえれば、これらの受容体はより長く開いており、あるいはより活性で、あるいは細胞表面に受容体が多くあり、このことは低濃度の塩化ナトリウムが高濃度ように味わえることを意味している、’とLewandowskiは説明した。