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科学に対するアメリカ心臓協会の強い姿勢

The American Heart Association’s Strong Stance against Science

By Larry Husten

http://www.cardiobrief.org/より  2016.05.25

 

 もう一度アメリカ心臓協会は科学に対して強い姿勢を示した。もちろん、アメリカ心臓協会がどのように科学をほめるということではない。アメリカ心臓協会自身の言葉では、“どれくらい食べようとしているかについて自分に知らせるために…使うべきではない間違った研究の結果を科学は強く拒否している、とアメリカ心臓協会は言う。”

 しかし、事実アメリカ心臓協会の立場は科学と科学的プロセスに対して本当に強い暴風である。現在の事例はランセットで先週の金曜日に発表された研究に向けられており、食事による減塩はほとんどの人々に有益ではなく、実際に害になるかもしれないことを研究は示唆していたが、研究はまた、減塩は高血圧で多くの塩を摂取している集団の11%を救うかもしれないことも示唆していた。

 平均的なアメリカ人は約8.6 g/dの塩を摂取している。塩摂取量は半分以下の3.8 g/dまで減らされることをアメリカ心臓協会は勧めている。幾つか他の機関も減らされた塩摂取量を勧めているが、それらの機関の勧告値はアメリカ心臓協会の勧告値ほど厳しくない(アメリカ心臓協会の勧告値自身は科学的同意を欠いた良い表示である)

 先ず、アメリカ心臓協会が合理的なポイントを持っていることを認めることは重要である:ランセットの研究は決して完全ではなく、確かに減塩に対する事例を“証明”していない。誰もが同意すると私が考えている研究は全て観察研究と言う通例の限界を持っている。その研究は関係または結び付きを検出できるが、原因と効果を示すことはできない。その研究はナトリウム排泄量を計算し、その後塩摂取量を推定するための早朝尿収集に関してその信頼性をさらに弱めている。この技術は前の研究で確認されてきたが、いくらよく見てもこれは不完全測定であることを認識することは重要である、と著者らは主張している。

 ここでのキーポイントは、ランセット研究の著者らが彼等の研究は最も信頼できるとは主張していないことである。その代わりに、厳しい減塩に関係した潜在的な害をほのめかした早すぎてあまり信頼できない研究に応答して第一に研究が行われたことを彼等は指摘している。

 アメリカ心臓協会はランセット研究に限界を素早く見つけたが、減塩を支持する自分達のエビデンスが全く不完全であることを知らない。事実、減塩の完全な論拠は、塩は血圧を上昇させ、血圧上昇は心血管疾患に導くという観察に基づいている。今や高血圧は心血管疾患の原因となることは完全に真実である。これは医薬の厄介な世界で見られる確立された事実と同様である。しかし、血圧を下げる如何なる方法も有益な効果を持っていると言うことに必ずしも従う必要はない。

 例えば、降圧剤は血圧を下げる薬剤の能力に基づくだけで選ばれるべきではないことを今や我々は知っている。承認を得る前に、新しい血圧薬は、血圧を下げるだけでなく、安全であることも示す必要がある。この理由は、血圧を下げる能力があるにもかかわらず安全でない事が示されたので、降圧剤が失敗した事例が幾つかあったためである。これらの薬剤が安全であることを証明する唯一の方法はランダム化比較試験を通してである。

 薬剤と食事介入との間の主な差は、我々が栄養についてあまり知らないことである。盲にしたランダム化比較試験で薬剤を試験することは(比較的)容易である。しかし、栄養のことになると、美食家の人類について大規模で長期間ランダム化して上手く管理し上手く設計された試験を行うことはほとんど不可能である。ナトリウムのような必須の栄養素を含む大規模な介入の長期間効果を確かめるために本当に知っている人は誰もいないのが事実である。

 アメリカ心臓協会の前会長であるエリオット・アントマンは“命を救い、生活を改善するために専念する科学に基づいた機関”としてアメリカ心臓協会を述べた。“過剰なナトリウムと同じほど危険な事についての混乱は受け入れられない。最も科学的に健全な食事アドバイスを提供するために我々は社会に責任を負っている。”

 しかし、ナトリウムについての“混乱”は“受け入れられない”かもしれないが、少なくとも現在では避けられないかもしれない。アントマンとアメリカ心臓協会が言うことにもかかわらず、塩について広く行き渡った科学的コンセンサスはない。その声明では、アメリカ心臓協会は塩についての活発に行われている論争を知らない。

 塩論争の分野がどれほど分裂されているか?ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンがランセット研究の初期の研究を発表したとき、同誌はアメリカ心臓協会の低塩摂取量勧告に反対を表明した論説を掲載した。より良いエビデンスがなければ、あるまで“公衆衛生勧告値と切り離して結果は減塩に反対の議論をしている、”と論説委員のスザンヌ・オパリルは書いた。現在、ここに本当に驚くべき事実がある:私が当時書いたように、オパリルはアメリカ高血圧協会と同時にアメリカ心臓協会の前会長である。これはアメリカ心臓協会の立場が悪い、または反対者が正しいことを意味するのではないが、科学的疑問が解決されたと偽って言うことは明らかに非常識であることを意味している。

 例えば、ランセット研究の筆頭者が世界で最もしばしば引用される科学者達の1人である第一人者の心臓学者サリム・ユスフであることに注意することも価値がある。再びこの分野の引用または第一人者の数は、誰が正しくそして見違っているかを決定すべきではない。しかし、アメリカ心臓協会とアントマンが我々を無視させようと望んだ物語に対して反対側があることを少なくとも示唆している。

 この間違った事のような何かを取り上げることの潜在的な危険を過大評価することは難しい。過去に私が何回も述べてきたように、アメリカ心臓協会はこの関係で特に注意深くあるべきである。前に悲惨な結果でこの道を既に歩んできたからである。1980年代に溯ると、アメリカ心臓協会はコレステロールと食事に関する非常に影響力のあるガイドラインを展開した。これらのガイドラインは脂肪摂取量に対する運動を誘発させるのに役立ち、脂肪やタンパク質の代わりに砂糖を含むより多くの炭水化物を食べるように人々に強いるという大失敗の結果をもたらした。我々は多分、被害の全容を知ることもないが、これは肥満や糖尿病の流行に寄与したかもしれないことを多くの人々は考えてきた。これは塩では再び起こることはないことを確かめよう。

 私ははっきり言おう:アメリカ心臓協会が低塩の事例を作るべきでなく、勧告値を出すべきでない。しかし、これは彼等自身の専門家達の意見であり、同意しない多くの他の信頼できる科学者達がいることを第一に彼等は認めるべきである。アメリカ心臓協会は審査員や陪審員ではなく、自分達を科学法廷の勝者と明白に宣言できない。

 科学は知識の集積であり、地球が太陽の周りを公転しており、他の周りを回っていない事実のような多くの事や、前に知らなかったことを現在では知っている多くの事がある。しかし、低塩摂取量の健康効果はどの手段でも同じではなく、科学はしばしば知識自身についてできるだけ多くの知識の集積工程である。ランセット論文はその集積の1つの小さなステップの優れた例である。それは間違いとなることになるかもしれないが、正しさを証明することにもなるかもしれない。