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減塩の利益は証明されていない

Dietary Salt-Reduction Benefits Remain Unproven

Clinical Advisor 2011.07.07

 

 6,500人の参加者を含む臨床試験の総合的なレビューからのデータが示すところでは、減塩は全ての死亡率または心臓血管疾患死亡率で統計的に有意な低下をもたらすことを証明するに十分なエビデンスはない。“塩の量を減らすことは死亡または心臓血管疾患の発症に関して明らかな利益はない”とイングランドのエクセターにある医科歯科半島大学のロッドS.テイラー教授と同僚達は総合レビューのコクラン・データベースに発表した報告に書いた。さらに、減塩している鬱血性心不全患者で研究者達は死亡の危険率増加を観察した。これらの食事勧告がある人々にとって実際に有害であるかどうかを決定するにはもっとランダム化した臨床試験が必要であることを示唆している。“政府は塩摂取量についてこれまで低い目標値を設定し、食品製造者達は製品から塩を除こうとしているが、減塩の有益性と危険性を十分に理解するためにいくつかの大規模な研究試験行うことが本当に重要である”とプレスリリースでテイラーは言った。

 心臓血管疾患の健康を促進させる低塩食を支持するエビデンスは塩摂取量と血圧との関係に基づいている。報告書の背景情報によると、臨床的に有意な結果を達成するためには2 mmから3 mmの血圧低下が必要であることを研究は示している。しかし、前のコクラン・レビューからのデータは、強力な減塩戦略はわずかに中程度の血圧低下、平均して1.1/0.6  mmHgの結果であったことを示した。この初期のレビューは少数の臨床結果や死亡に基づいていた。そこでテイラーらは大規模で最新の解析で減塩が心臓血管疾患の罹患率や死亡率を実際に減らすかどうかを確認し始めた。

 研究者達は3,518人の正常血圧者、758人の高血圧者、1,981人の正常血圧者または高血圧者のいずれかである参加者、232人の心不全患者を含む7件の研究をレビューした。追跡は7ヵ月から36ヵ月の範囲で、最長は12.7年であった。

 解析で次のことが明らかになった。

  正常血圧者の中で減塩の試験中に死亡の危険率は33%低下したが、これは追跡期間中に10%に下がった。これらの結果は信頼区間が重なっていたために統計的に有意でなかった。

  高血圧参加者の中で、減塩は試験後に3%、追跡期間後に4%死亡率を減らした。

  減塩は正常血圧参加者で29%、高血圧参加者で16%心臓血管疾患発症を減らしたが、いずれの差も統計的に有意ではなかった。

  減塩はコントロール・グループと比較して心不全患者で2倍以上死亡率の危険率を増加させた(RR=2.95;95%信頼限界:1.04 – 6.44)

 “減塩するための強力な支持と奨励は塩摂取量の低下につながらず、6ヶ月以上後でも血圧はわずかに下がっただけであった。しかし、死亡や心臓血管疾患に及ぼす塩摂取量のこれらの変化の効果を理解するには十分な情報はなかった。”と研究者達は書いた。

 アメリカ心臓協会は毎日の塩摂取量を1,500 mgに制限することを勧め続けており、高血圧危険率の高い二つのグループ、黒人と老人の低い制限値を含め、解析に取り上げた研究の制限値を指摘した声明を発表した。アメリカ心臓協会は、塩摂取量を測定するための尿排泄量の代わりに食事日記を使用していることと、取り上げた研究で追跡期間の適正にも疑問を持っていた。“アメリカ人10人のうち9人が生涯で高血圧を発症させる。現在、正常血圧者でも今からの減塩は高血圧発症の危険率を抑え、高血圧者の状態管理をより効果的にする上で役立つので、長期間には大きな利益を受けられる。”とアメリカ心臓協会当局者は声明で述べた。