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電気自動車は塩で作られた安い電池で走らせられる

Electric Vehicles Could Operate on Cheap Batteries Made with Salt

研究者達はリチウム・イオン電池に代わる環境に優しく安全な固体代替電池を設計

By Elizabeth Montalbano

Batterytechnoline.com/         2021.05.03

 

 人々が毎日の食事で使っているある物がイギリスの研究者達のお陰で電気自動車用電池に対してより環境的に優しい解決策に対して鍵となる可能性がある。ノッティンガム大学と様々な中国の研究機関の研究者達は電気自動車だけでなく、多くの用途にも使われる固体充電式電池の電解質の成分として塩を使った、と工学部の電気化学技術の教授でプロジェクト研究者の一人であるジョージ・チェンは言った。この電池には、現在のリチウム・イオン設計に比べて幾つかの利点があり、将来のエネルギー貯蔵装置、特に高電力を必要とする用途に有望である、と彼は言った。「塩だけでなく、炭酸鉄や炭酸ナトリウム、つまり重曹など、一般的で広く入手可能な材料を使用しているため-今日使われているリチウム・ベースの電池よりもずっと安く電池を製造できる、と彼はBattery Technologyに語った。材料はまた無毒で容易にリサイクル可能であり、環境に優しい技術としている、と彼は言った。

 さらに、現在電気自動車に電力を供給している充電式リチウム電池は時間の経過と共にエネルギーと電力を失い、過熱して劣化し、電池寿命に影響を与える可能性があるが、チームが開発した溶融塩電池にはこれらの懸念がない。

 

研究者達は電気自動車やその他の用途向けのリチウム・イオン設計に代わる環境的な代替手段となる可能性を示す新しい

塩ベースの電池を開発した。写真は電池の準固体(QSS)と溶融塩電解質とQSS溶融塩鉄空気電池の構造を示す。

 

デザインを組み合わせる

 新しい電池は固体酸化物燃料電池で使用されるイットリア安定化ジルコニアと呼ばれる導電性セラミックの粉末と炭酸塩を混合することによって作成されたペースト状の準固体電解質を使う。このタイプの燃料電池は化学反応の結果として水素と酸素を電気に変換し、燃料からエネルギーを抽出するのに効率的であるだけでなく、耐久性があり、低コストでより環境に優しい燃料である。ただし、これらの技術は充電式ではない。このため研究者達は燃料電池の設計の最良の部分を金属空気電池、鉄などの安価な金属を使用する電気化学セル、および空気中に存在する酸素を使用して発電するための設計と組み合わせることにした。耐久性はそれほど高くないが、これらの高エネルギー密度電池は充電可能で、リチウム・イオン電池と同じ電力を蓄えたり放電したり出来るが、より安価で製造できる、と彼等は言った。

 

設計の微調整

 研究者達は満足できる結果が得られるように設計を微調整するのに少し時間がかかった、と彼等は言った。研究の早い段階で、上海応用物理学研究所のJianqiang Wang教授が率いるチームは電気伝導性のために熱によって活性化される電解質の一種として溶融塩を使用する高温の鉄空気電池設計を開発した。しかし、溶融塩は極度の熱で非常に腐食性で揮発性になり、また蒸発または漏れる傾向があり、設計の安定性を脅かす。

 最終的にチームは800℃で動作する金属空気電池の固体酸化物ナノ粉末を使用して、化学を溶融塩から軟質固体塩に変更したガソリンまたはディーゼルエンジンからのエンジン排気ガスとほぼ同じ温度に変えた。この温度はそのような高い動作温度で発生する可能性のある溶融塩の蒸発と流動性を抑制する、と研究者達は言った。チームはEnergy Storage Materials誌に彼等の研究に関する論文を発表した。

 実験室テストでは、塩電池は「リチウム・イオン電池と同等のエネルギー容量を確認したが、より高い電力容量とより長い耐用年数を確認した。」とChenは我々に語った。電気自動車に加えて、塩電池は電気船舶、太陽光や風力エネルギーの貯蔵、配電網電力負荷平準化などの他の商業用用途に使える可能性がある、と彼は言った。

 チームはパイロット技術とデモンストレーションを開発するためにその研究を続けることを計画している、と彼は言った。しかし、電池はまだ開発の初期段階で、商業用途用にさらなる技術設計が必要である、とChenは付け加えた。