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溶融ナトリウム電池はリチウムよりも優れた配電網エネルギー貯蔵の選択肢になるか?

Will Molten Sodium Batteries Be a Better Grid Storage Choice Than Lithium?

低温の溶融ナトリウム電池は再生可能エネルギーの貯蔵に大きな利点をもたらす可能性がある。

By Kevin Clemens

Batterytechnoline.com/         2021.07.23

 

 蓄電池の世界では、今日注目されていることのほとんどはリチウム・イオン電池と電気自動車に電力を供給するためのそれらの使用に集中している。しかし、電力網をサポートし風力発電や太陽光発電などの断続的な資源から再生可能エネルギーを幅広く採用できるようにするための貯蔵を含め、エネルギー貯蔵のその他の重要な用途がある。テスラの様な企業によって、そのような用途のためにリチウム・イオン・メガパックが開発されているが、電力網貯蔵用に展開できる他の電気化学的電池システムがある。その1つが溶融ナトリウム電池である。

 

溶融ナトリウム

 溶融ナトリウム電池は新しい物ではない-それらは太陽光発電や風力発電などのエネルギー源からエネルギーを貯蔵するために何年間も使われてきた。商業的に利用できる溶融ナトリウム電池は一般的に華氏520 660 度の温度範囲で操業される。サンディア国立研究所の研究者達は、もっと低い華氏230度で操業する配電網エネルギー貯蔵用に新しいクラスの溶融ナトリウム-ヨード電池を設計した。

 「溶融ナトリウム電池の動作温度を物理的に可能な限り低くするように取り組んできた。」とサンディア。ニュース・レリースでプロジェクトの主任研究者レオ・スモールは言った。「電池温度を下げることで、全体的なコスト低減が実現する。より安価な材料を使用できる。電池は必要な絶縁が少なく、全ての電池を接続する配線を大幅に細くできる。」しかし、華氏550度で機能する電池の化学的性質は230度では機能しない、と彼は付け加えた。この低い動作温度を可能にした主要な革新の中には、陰極液、この場合はヨウ化ナトリウムと塩化ガリウムの2つの塩の溶液混合物の開発があった。

 

使い方

 新しい溶融ナトリウム電池のために、通常は固体電極の1つは液体のナトリウム金属に置き換えられ、もう1つの電極はヨウ化ナトリウムと少量の塩化ガリウムの溶液混合物に置き換えられる、と10年以上も溶融ナトリウム電池に関する研究をしてきた材料科学者のエリック・スポーケは言った。

 サンディアによると、「新しい電池からエネルギーが放電されるとき、ナトリウム金属はナトリウム・イオンと電子を生成する。他の側では、電子はヨードをヨード・イオンに変える。ナトリウム・イオンはセパレーターを通って他の側に移動し、そこでヨード・イオンと反応して溶融ヨー化ナトリウム塩を生成する。」電池の中央には特別なセラミック・セパレーターがあり、ナトリウム・イオンだけを一方側から他方側へ移動させる。

 「リチウム・イオン電池と違って我々のシステムでは、全てが両側で液体である。」とスポーケは言った。つまり、材料が複雑な相変化を起こしたり、バラバラになったりするような問題に対処する必要がない、ということである;それは全て液体である。基本的にこれらの液体ベースの電池は多くの他の電池と同じ様な限られた寿命を持っていない。」と彼は付け加えた。商業用溶融ナトリウム電池は10 – 15年の寿命であり、標準的な鉛蓄電池あるいはリチウム・イオン電池よりもかなり長い。

 

より安全

 スポーケによるとナトリウム・イオン電池もより安全である。「リチウム・イオン電池は電池内部に故障が発生すると発火し、電池の過熱が暴走する。我々は電池の化学的性質ではそれが起こりえないことを証明した。我々の電池では、セラミック・セパレーターを取り出してナトリウム金属と塩とを混合させても何も起こらない。確かに電池は機能しなくなるが、激しい化学反応あるいは発火はない。」と彼は言った。「外の火がヨウ化ナトリウム電池を囲んだとき、電池が割れて故障する可能性があるが、火に燃料を追加したり、ナトリウム発火を引き起こしたりしないようにする。」とスモールは付け加えた。

 

より高いエネルギー密度

 3.6ボルトの新しいヨウ化ナトリウム電池は現在の市販の溶融ナトリウム電池よりも40%高い作動電圧を持っている。この電圧はより高いエネルギー密度をもたらす。つまり、この化学物質で作られた将来の潜在的な電池は同じ量の電気を蓄えるために必要なセルが少なくなり、セル間の接続が少なくなり、全体的にユニット・コストが低くなる、とスモールは言った。「この論文で報告している新しい陰極液のおかげで、システムにどれだけのエネルギーを詰め込むことができるかについて、我々は本当に興奮していた。」とポスドクの研究者マーサ・グロスは付け加えた。「溶融ナトリウム電池は数十年間も存在しており、世界中にあるが誰もそれらについて話さない。したがって、温度を下げて、いくつかの数値を返し、「これは本当に、本当に実行可能なシステムである。」と言うことが出来るのはかなり素晴し。」と彼女は言った。

 

将来

 塩化ガリウムは非常に高価で、食卓塩の100倍以上も高く、したがって、ナトリウム・イオン電池プロジェクトのための次の段階は塩化ガリウム成分を置き換えるために陰極液の化学的性質を調整および改良し続けることである、とスモールは言った。

 スポーケは、ヨウ化ナトリウム電池が市場に出るまでに5年から10年かかる可能性があり、残りの課題のほとんどは技術的な課題ではなく、商業化の課題である、と付け加えた。「これは低温溶融ナトリウム電池の長期的で安定したサイクルの最初のデモンストレーションである。」とスポーケは言った。「我々がまとめた魔法は、華氏230度で効果的に動作することを可能にする塩化学と電気化学を特定したことである。この低温ヨウ化ナトリウム構成は溶融ナトリウム電池を使用することの意味を再発明したものである。」