黒鉛陰極の交換でこのナトリウム・イオン電池のコストと性能を改善
Replacing the Graphite Anode Improves Cost, Performance of This Sodium Battery
By Kevin Clemens
Batterytechnoline.com/ 2021.05.16
リチウム・イオン電池に対して低コスト代替物が無陰極ナトリウム・イオン電池の使用を可能にするかもしれない
携帯電話や電気自動車のコストの約1/4は電池代である。リチウム・イオン電池を構成する部品である陰極、陽極、電解質はそれらの重要な重さに加えて、ニッケル、コバルト、リチウムおよび非常に特殊なカーボン・グラファイトなどの高価な材料で出来ている。電池コストを削減するために多大な努力が払われている。主要な目標の1つは電気自動車のコストをガソリン・エンジン車のコストと同等にして、輸送システムの電化ペースを上げることである。
リチウム・イオン電池は安くない
市販リチウム・イオン電池で、リチウム・イオンは充電中には黒鉛陰極に蓄えられ、電池が放電しているときには放出され電解質を通して陽極に移動する。リチウム・イオンが陰極から陽極に移動する間、自由電子は集電体を通って移動し、電力を供給するために利用される。陰極で使用される黒鉛は特殊なタイプで、高価であり現在ではほとんど中国からのみ入手可能である。
コスト低減
電池のコストを下げる1つの方法は高価なリチウムを安くて地球上に豊富にある元素に置き換えることである。ナトリウムはしばしば可能な候補として述べられる。ペン・バイのセントルイス研究所にあるワシントン大学で、マッケルビー工学部のエネルギー環境化学工学科の助教授はリチウムに代わる物としてナトリウムを検討している。異質なことは伝統的な陽極なしでそれをしていることである。「我々は古い化学を使った。しかし、このよく知られた化学には問題があり、この無陰極の電池が合理的な寿命を持てることを誰も示さなかった。それらは常に直ぐに故障するか、容量が非常に少ないか、または電流集電器の特別な処理を必要とする。」とバイはワシントン大学のニュース・レリースで言った。
バイは伝統的な黒鉛陰極を銅フォイルの薄層で置き換えた。充電中に黒鉛に蓄えられる代わりに、電荷を運ぶイオンは銅の上に積み上がる。電池が放電するとき、それらはイオンとして電解質に溶け出し陽極に移動して帰る。
それほど簡単ではない
無陰極電池の問題は電荷を運ぶイオン・メッキが不安定になり、針状の樹枝状金属結晶が生成される可能性があることである。これらの樹枝状結晶は陽極に到達して電池を短絡させるのに十分な大きさに成長する可能性がある。ほとんどの場合、これはナトリウムなどのアルカリ金属の高い反応性に起因している。
「我々の発見では、樹枝状結晶も指状構造もない。」とバイ研究室の博士課程の学生Bingyuan Maは言った。堆積したナトリウムは滑らかで、金属光沢があることにチームは注目した。「この種の成長様式はこの種のアルカリ金属では観察されたことがない。」
内部を見る
チームが「観察された」と言うとき、彼等は文字通りそれを意味する。バイのチームは動作中に電池を調べる方法を提供する透明なキャピラリー・セルを開発した。通常、研究者達は電池が故障した後で電池を開くことによってのみ、電池内を見ることができる。「電池の不安定は全て作業工程中に蓄積される。」とバイは言った。「本当に重要なことは動的工程中の不安定性であり、それを特徴付ける方法はない。」Maの無陰極キャピラリー・セルを観察して「我々は、電解質の品質管理が適切でない場合、樹枝状結晶の形成など、様々な不安定性が見られることが明確に分った。」とバイは言った。
水が鍵である
チームは透明なセルを使用して、樹枝状結晶の形成が電解質に含まれる水の量に起因するという驚くべき発見をした。「我々はキャピラリー・セルをチェックすることに戻って、電解質のより長い乾燥工程があることに気付いた。」とバイは言った。電池の電解質中の水分含有量は以前に指摘されていたが、その上、重要性は認識されていなかった。アルカリ金属は水と反応するため、研究チームは水分含有量を減らしたいと考えた。「良い性能が見られることを望んでいた。」とバイは言った。しかし、電池の動作を観察することで、研究者達は、彼等が見た光沢のある滑らかなナトリウムの堆積が樹枝状結晶の成長につながる可能性のある不規則性を排除するのに役立つことに気付いた。水分含有量が鍵であった。「水分含有量は10 ppm以下にしなければならない。」とバイは言った。
この情報を武器に、バイのチームはキャピラリー・セルを超えて、標準のリチウム・イオン電池と同様の性能を備えた動作中の電池を構築することができたが、陰極がないため、占有する空間はあるかに少なくなる。「最小値が最大値であることが分った。」とバイは言った。「無陰極が最高の陰極である。」