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研究は有望なナトリウム・イオン電池材料の動的な

原子相互作用を捉える

Research Captures Dynamic Atomic Interactions in a Promising Sodium Ion Battery Material

By ANSTO Staff

https://www.ansto.gov.au/       2022.02.09

 

ANSTO (Australia’s Nuclear Science and Technology Organization)はオーストラリアで最も重要な機関であり、研究のための国家基幹施設の本拠地である。産業界や学界の何千人もの科学者達が毎年最先端の機器にアクセスできるようになることで恩恵を受けている。

 

キーポイント

  UNSW(ニューサウスウェールズ大学)ANSTOの研究者達はナトリウム・イオン電池の有望な材料における原子の動的相互作用についての洞察を提供した

  実験によりナトリウム原子とリン酸原子間の相互作用における外輪のタイプ・モーションが確認された

  ANSTOの高度な原子力技術により、材料の構造と集合的な運動が確認された

 

高度な中性子およびX線散乱技術と理論的モデリングを組み合わせたアプローチにより、ナトリウム・イオン電池の有望な材料における動的相互作用への洞察が得られた。

 

 科学技術を使用して電池材料の原子レベルの情報と動作中の進化を捉えることで多くの進歩が見られたが、Journal of the American Chemical Societyに発表された研究では、電池材料内の原子の動的相互作用について報告されている。

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「物事がどのように働き、どのように動くかを見ることは、電池に使用される材料にとって実際には非常に重要なパラメーターである。」と論文の共著者であるNeeraj Sharma准教授は述べている。

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 「充電と放電を行っている動作中の電池では、原子はあちこちに移動する。「確立されたアプローチは、インピーダンスと呼ばれるものを使用して、動き全体またはバルクスケールを確認し、解体して個々の構成要素の寄与を推定することである。「ここで示したのは、様々な原子、この場合は構造内を拡散するナトリウム・イオンに焦点を合わせることができると言うことである。これらのイオンは回転するリン酸アニオンと結合していることが分った。「動いているのはナトリウム・イオンだけではなく、協調的なパドル輪タイプの動きのリン酸フレームワークでもあった。」とSharma准教授は述べている。

 「この動きを明確に把握できたらシステムの全体的なダイナミックスについて考え始めることができる。」ANSTOのオーストラリア中性子散乱センターにある高分解能後方散乱分光計Emuを使用して、材料であるマグネシウム・ドープドオルトリン酸ナトリウム(Na3-2xMgxPO4)の準弾性中性子散乱(QENS)実験はナトリウム・イオン拡散メカニズムへの洞察を提供し、リン酸原子の動的配向無秩序を確認した。

 筆頭著者であるニューサウスウェールズ大学の博士課程の候補者であるEmily Cheung博士は上級機器科学者のNicolas de Souza博士の監督下でEmuを使用して実験を行った。材料の構造を特徴付ける予備調査は、Emuでの実験の前にANSTOの共著者であるMax Avdeev教授とシドニー大学によって、高分解能粉末回折計Echidnaでの中性子粉末回折を使用して行われた。

 「我々は通常、拡散過程における水素原子と有機分子のダイナミックスを研究するためにQENSを適用する。ナトリウム原子からの信号はいり困難であるが、解決可能である。」とde Souza博士は述べている。「優れた導体である材料を使用している場合、可動イオンが幾つあるかは必ずしも分らない。」とde Souza博士は述べている。「QENSからの経験的データと理論計算により、拡散が速いか遅いかを判断できることは非常に有用である。」と彼は付け加えた。回折データは酸素およびナトリウム原子に結合したリン原子の6つの可能な配向を示唆した。

 研究者達は単位セル当たり12個のナトリウム陽イオンのうち2個が長距離拡散に関与していると推定した。研究はまた、リン酸ナトリウム結合の調整に依存する2つの可能な拡散経路を提案した。これらの経路の1つは実験データと一致する理論的フレームワークを使用した好ましい拡散モデルであることが分った。「リン酸塩に結合したナトリウムをリン酸塩の回転に関与しない他のナトリウムと区別する必要があった。」とSharma准教授は述べている。

 これを行うために、研究者達は簡略化されたシステムのジャンプ・マトリックス構造を使用して、長距離ナトリウム・イオン拡散の理論的モデリングを開発した。このアプローチは1970年代と1980年代に最初に考案されたが、次世代電池用に設計された新しい材料の数学的複雑さのために、あまり使用されなくなった。Sharma准教授とde Souza博士はどちらもコヒーレントとインコヒーレントの両方で中性子を拡散させるナトリウム原子の寄与を特定するために開発されたモデリングが、筆頭著者のEmily Cheung博士によるかなりの成果であったことを確認している。

「この材料が優れた導体である理由を特定する上で、ある程度の進歩があった。」とDe Souza博士は述べている。「開発された理論的枠組みは、研究者達が他の材料の研究に使用することができる。」と彼は付け加えた。ANSTO Instrumentの科学者であるAnton Stampfl博士は個の出版物の共著者でもある。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校の科学者達も研究に貢献し、材料、それらの合成、およびそれらの性能パラメーターに関する貴重な洞察を提供した。