戻る

塩論争

The Salt Debate

Institute of Food Research in UK

June 2009

(訳者注:イギリスの食品研究協会のホームページに掲載されている記事を抄録する) 


はじめに

 健康に良い食事の望ましい成分に関する健康情報で国民は絶えず攻撃されている。その中で塩はネガティブに見られている傾向がある。この書類は塩を取巻く相反するポジティブな情報とネガティブな情報を集めている。すなわち、塩論争のあらゆる面の全体的な意見を提供する偏らない構成で論じていく。ほとんどの当局の結論は、成人は6 g/dayの塩摂取量まで減らすように努力すべきである、としている。


 塩とは何か?

 塩は水に溶けると、その2つの成分イオン、ナトリウム(Na+)と塩化物(Cl-)に分離する。イギリスでは岩塩は特に冬季に道路の融氷雪に使われる。塩は海水から自然にできる。悪霊を追い払うための儀式に使う供物となったり、陶器や繊維を含む製品の開発にも様々に使われ、食品保存でも使われるように、塩は幅広い歴史を持っている。歴史的に塩は金と重さで取引され、ラテン語のサラリウスに由来する“サラリー”と言う言葉は塩のお金を意味する。

 ナトリウムは多くの生化学的経路に必要であり、神経伝達に極めて重大で、血圧維持と同様に栄養源を輸送する。塩化物は血液量、血圧、体液のpHに関係している。塩は非常に価値のある化合物で、水和に不可欠で、経口再水和治療の主成分で、傷を洗う食塩溶液に使われる。


 どうして塩を必要とするのか?

 ナトリウムは健康に不可欠である。成人の体内(体重70 kg)には、約92 gのナトリウムが含まれている。ナトリウムとカリウムは細胞外液量(血圧に影響を及ぼす)の維持に、神経や筋肉の電気信号の発生や伝達に、小腸からのいくつかの栄養素の吸収に両方とも必要である。塩化物イオンも胃の中の胃酸の生産に必要である。ほとんどの健康な人々はナトリウムを正常に代謝し、過剰に摂取した量を排泄する。

 ナトリウム排泄は通常、脱水または環境に慣れない場合と関係している。肉体労働者は汗で1日に8リットルを失う。汗は0.5 – 1.9 gナトリウム/ℓを含んでいるので、体内の塩を補給しないと有害な影響が出る。しかし、過剰なナトリウム摂取量も問題を引起す。幼児は特にナトリウムの毒性に対して弱く、希釈しない原乳を飲ませると、あるいは非常に高い濃度で幼児用調合乳を与えると、そのような状態になることがある。


どれくらいの塩を必要とするか?

 健康な成人は69 – 460 mg/day(塩として0.18 - 1.17gに当たる)の低い摂取量でナトリウム収支を維持している。低い摂取量はナトリウムを保持し、運動や気候の変化に対応するために最適な順応を必要とする。1993年の報告に遡ると、ナトリウム摂取量の最低限は575 mg/day、(塩として1.46gに当たる)最高限度は3.5 g/day(塩として8.89gに当たる) を食品科学委員会(SCF)は示唆した。我々の塩摂取量が1.5 – 9 g/dayの間にあるべきことをこれは意味している。対照的に、ナトリウムについてのイギリス食事基準値は、通常の社会・文化環境で実際に生ずると考えられる危険性と有益性に基づいて1991年に設定された。現在の基準栄養摂取量(RNI)は男女とも1.6 g/day(塩として4.2 gに当たる)である。6ヶ月までの幼児についての現在の低い基準栄養摂取量(ナトリウム140 mg/d)は母乳のナトリウム含有量に基づいており、体液量の増加に必要なナトリウム量を勘案して便、皮膚、尿からの一日の損失量から計算された。

 カリウムについての摂取量基準(DRV)は、過剰なナトリウムは排泄されるとして1991年に設定された。成人についての基準栄養摂取量はカリウム3.5 g/dayである。腎機能が正常である限り、カリウム過剰を引起すことはほとんどない。しかし、約18 g/dayの摂取量は血液中のカリウムを一時的に増加させることを示しており、習慣的な摂取量はこの値を超えるべきではない。塩化物は細胞内のナトリウムとカリウムをバランスさせる主成分である。摂取量基準のガイドでは、塩化物の摂取量基準は別の分子量にしたがって1.54を掛けたナトリウムの摂取量基準から求められる。


塩摂取量についての論争があるのはなぜか?

 高い塩摂取量と疾患、例えば、骨粗鬆症、胃癌、高血圧との間の関係にもかかわらず、塩の欠乏にもまた問題がある。塩化ナトリウムは体内の多くの反応や機能に関係しているからで、例えば、ホルモン、血圧、神経系、代謝に関係している。正常で健康な人々に対して減塩の有効性を巡る矛盾した事実のために塩論争は活発に行われている。

 高血圧との関係

 高血圧は心疾患、脳卒中、腎不全の主要な危険因子であるので、高血圧は重要である。収縮期血圧(心臓が収縮している時の動脈圧)15歳の時の115 mmHgから65歳の時の約145 mmHgに上昇することは普通である。年齢に関係した高血圧は正常であると認められるが、多くのアフリカ人集団についての調査は、伝統的な社会から西欧文化の社会に移住したときだけ、血圧上昇が生じることを示した。これは、我々の生活様式が高血圧と関係していることを示唆している。高血圧は多因子の病気である。患者は遺伝的な素因を持っているかもしれないし、問題は貧しい食事、ストレス、運動不足、加齢によって悪化するかもしれない。

 血液中のカリウム濃度の低下も血圧上昇と関係している。イギリス栄養財団は、ポジティブなナトリウム・カリウム比は効果的で、果物・野菜摂取量を増加させることが強調される、と示唆している。

 腎臓による不十分なナトリウム排泄量によって引起される電解質不均衡は過剰の体液保持を引起すかもしれない。体液の除去が低下すれば、さらなる血液量の増加に寄与するかもしれない。この時、これは血管収縮を強くし、高血圧を促進させるかもしれない。そうなると、腎臓は緊張を増大させがちになり、そのことは腎臓疾患の悪化速度を増加させ、多分、タンパク尿症の増加につながる。塩摂取量の低下は尿中のタンパク質を低下させる結果となり、その結果による低血圧は低ナトリウム食によって達成され、心臓血管疾患の危険性も低下させる。

 胃癌との関係

 過剰の塩は胃粘膜の刺激剤として作用し、ヘリコバクター・ピロリ感染の危険性を増加させる。さらに、塩は発癌物質としても作用し、胃癌の危険性を増加させる。胃癌は日本で特に発症率が高く、高い塩濃度の食品加工技術を使っているためである。24時間の平均ナトリウム排泄量は胃癌の増加と関係していると、津金のレビューは報告した(2004)

 骨粗鬆症との関係

 高い塩摂取量はカルシウム排泄量とポジティブに関係している。若い人々はカルシウムやカリウム不足であることを国民食事・栄養調査データは明らかにした。ナトリウム摂取量の増加と結び付いたこのことは骨量の増加を妨げ、人生の後半で骨粗鬆症になる素因となっている。高い塩摂取量は骨粗鬆症と同様に腎臓結石とも関係している。閉経後の婦人に関する研究は、腰部骨密度の低下はナトリウム排泄量と密接に関係していることを明らかにした。

 減塩運動に関する世界行動は、10 g – 5 gの塩摂取量は腰部骨密度のカルシウム貯蔵に1000 mgのカルシウム摂取量増加と同じ効果を持つと述べている。

肥満

 塩は肥満因子としても関係している。主として高食塩食により生ずる喉の渇きを癒すために、高エネルギー摂取量につながる砂糖入りの飲料水の摂取量が増加するためである。この増加はエネルギー消費量の増加によるものではなかった。いくつかの予測は、飲料水販売量が25%低下すると、アメリカ合衆国の販売は160億ドルの低下になることを示唆しており、そのようなデータはいくつかの会社が減塩運動に消極的であることを説明しているのかもしれない。


 いろいろな見解

医者/栄養学者の意見

 高血圧におけるナトリウム、カリウム、そして/または塩化物の役割に関する医者の間の意見の相違は集団または個人の試験による矛盾したデータの解釈から生じている。

 1988年に、British Medical Journalはインターソルト・スタディの結果を発表した。その研究は52集団で10,079人を調べ、標準化された世界のプロトコールを使って実際の血圧と24時間尿中ナトリウム排泄量を測定した。血圧は尿中カリウム排泄量と有意に逆相関しており、尿中Na/K比とポジティブに相関していた。30歳以上の人々で1日当たりナトリウム摂取量を6 gに低減することは収縮期血圧で10 – 11 mmHgの低下と関係しているらしいことを結果は示唆していた。

 インターソルト・スタディの結果は1994年にアメリカの塩生産者取引機関の塩協会によって異議を申し立てられた。協会は1996年に一連の論文を発表した。これらの発表は幅広い機関によって資金援助された。それらはWHO, Wellcome Trust, カナダ、イギリス、日本、オランダの各心臓財団、ブラッセルのParastatal保険会社で、1988年の主要な結果に新しい解析の光を当てて見直した。特に、それらは加齢に伴う血圧の差と24時間ナトリウム排泄量との関係に異議を申し立てたものであった。

 “高い塩摂取量は若い頃よりも中年になって収縮期血圧や拡張期血圧に次第に大きな差をもたらすことと関係している” という意見にアメリカの時の塩協会会長のハンネマンは異議を申し立てた。20歳の高い塩摂取量被験者の集団試料が低い塩摂取量の試料よりも低い血圧を持っているとすれば、血圧と年齢との関係は主として塩摂取量よりもむしろ最初の血圧との関数になると彼は主張した。彼のデータの再解析は、社会の初期24時間ナトリウム排泄量が高ければ高いほど、その平均収縮期血圧はそれだけ低くなる、ことを明らかに示唆しており、いわゆる低塩食センターと呼ばれる4ヶ所、ケニア、パプア・ニューギニア、ブラジル(ジングとヤノマモ)が解析から除かれると、尿中ナトリウム排泄量と加齢に伴う血圧上昇率との間には何の関係もなくなると、彼は主張した。

 最初のインターソルトの結論を支持した1991年に発表された論文でMalcolm Lawは塩協会の解析に大いに批判的であった。60歳で人々が高血圧である社会では、20歳では血圧が低く、一方、60歳で低い血圧の人々は高血圧になり始めるという奇怪な仮説をハンネマンは提案しているとコメントした。Lawはさらにそのような矛盾した血圧は信じられないとして退けた。2029歳の血圧は50 – 59歳の高い血圧を持つセンターの平均値より高かったと彼は反対して主張した。

 インターソルト実行委員会のメンバーもデータを再解釈した塩協会を強く批判した。例えば、“最初(ゼロ歳)からナトリウム排泄量と血圧は測定されていないので、加齢と血圧勾配との関係に関する主張は観察データをはるかに超えて外挿して塩協会が作ったものである”と彼等は言っている。

 事実は動物実験、臨床試験、集団調査、人類学と幅広くあり、高い塩摂取量と集団血圧の逆パターンとの間の因果関係がある、と彼等は言う。例えば、元々塩を加えない食事では最適の血圧であったチンパンジーの収縮期血圧は5 g/dの摂取量増加で12 mmHg上昇し、15 g/d26 mmHg上昇した。動物が塩を加えない元の食事に返されたとき、収縮期血圧は最適値に復帰された。

  “多くの研究から同様に印象的な結果があるが、塩協会はどれも引用しておらず、集団による減塩のために専門グループや公衆保健当局からの(アメリカ、イギリス、その他における)勧告はインターソルトの結果だけに基づいていると言う間違った印象を残している、とインターソルト実行委員会のメンバーはさらに主張した。インターソルトの結果は全体的に調和した事実と一致している。”

 19965月にJulien Midgelyと仲間は、ナトリウム摂取量の変化が血圧に及ぼす影響に関して発表されたヒトの研究についての統計的解析に基づく事実を発表した。それはインターソルト実行委員会の結論を否定していた。キャンベル技術研究所とカナダの医学研究所によって主として財政援助された研究では、著者らは56人の試験(28人の高血圧者と28人の正常血圧者)からのデータを調べた。彼等の統計解析は(アメリカの)栄養表示教育法(1990)の目標の一つを支持しないと彼等は主張した。それは大部分の正常血圧者集団で血圧を下げる法律であり、そのような介入の長期間効果や安全性についてよりよい効果がないのに一律に減塩する考え方に疑問を持っていた。低ナトリウム排泄量と比較的高い死亡危険率との関係を示す最近の事実や低ナトリウム食の逆代謝効果を述べた最近の報告にも彼等は強調した。

 ランセット(19985)の報告はナトリウム摂取量と心臓血管疾患死亡率との関係を調査するために、20,729人のアメリカ人成人(25 - 75)の観察研究の結果を発表した。彼等はナトリウム/カロリー比と死亡率との間に有意な関係を発見したが、ナトリウム摂取量と死亡率との間には発見しなかった。研究は健康な成人で恒常的にナトリウム摂取量を減らす現在の勧告を支持する直接的な事実を何も示さなかった。さらに、最も工業化された社会が遺伝的に、環境的に、行動的に、栄養的に異質になるにつれて、異なった個々人は異なった最適ナトリウム摂取量を持っているらしいことを著者らは示唆した。このことは、集団をまたいだ塩摂取量について一般化された勧告は不適当であることを意味している。

 高血圧におけるナトリウムの役割はScience(19988)の論文でDave McCarronによって要約された。いくつかの大規模介入研究は、減塩が拡張期血圧に何の影響も及ぼさず、収縮期血圧にほんの僅かな(0.7 mmHg)効果を及ぼすだけであることを示した。しかし、ナトリウムよりも他の食事因子が血圧に著しく影響する。例えば、十分なカルシウム、カリウム、マグネシウム摂取量と果物・野菜は単なる減塩よりも高血圧を減らすのにずっと有効である。

 2007年に発表されたレビューで、より高い要求を持った集団メンバーに関心があるので、塩が次の主要な公衆保健災害になるとMcCarronは主張している。例えば、塩が制限されすぎると、胎児の血液量が不十分になったり、脱水症を起こした老人で電解質のアンバランスがあると、心臓を損傷するような付加的な健康合併症になるかもしれない。ミネラル欠乏はナトリウムよりも血圧により十分な影響を及ぼすことをMcCarronは強調し、腎臓が過剰のナトリウムを処理するので、塩は健常人については問題にならないと、コメントした。

 臨床医や産業専門家の間にあるいくつかの不一致はDavid Boothと仲間が1987年に初めて示唆したいわゆる三角仮説法によって説明されるかもしれない。塩感受性のある人々で加齢に伴う血圧上昇率には様々あり、ここでは加齢に伴う平均血圧の集団上昇が上手く整理されている。同年齢プロフィールの一般的な集団を比較すると、高い平均塩摂取量集団間の高い平均血圧間には良い相関関係があることをこれは示している。医者に掛かっていない人々、特に若者間で血圧は塩摂取量と実質的に関係ないように見える。したがって、感受性のない個人で仮定された相関の欠如は、感受性のある人々にある相関を隠しているらしい。血圧と塩摂取量との間の相関関係についてのテストは観察された比較的高い血圧範囲だけで調べるべきであることを示唆した。小さなグループによる彼等の解析は、仮説が健全であることを示唆しており、主に塩摂取量が高血圧に寄与しているとすれば、この方法は成功であると彼等は言った。

 オスロー大学疫学研究センターのDag Thelle教授は、事実が(インターソルトの著者らによって)推奨されている減塩を保証するに十分強力かどうかは何時ものように判断の問題であると結論した。しかし、有用な臨床的、公衆保健的な行動はもっと弱い事実に基づいて行われてきた。

 さらに、通常の食事で達成できる量までカリウム摂取量を増加させることは正常血圧者でも高血圧者でも血圧を下げ、尿中ナトリウム損失を増加させる。血圧に及ぼすこの効果はCappuccioMacGregorが発表した報告の1991年のメタアナリシスによって指示されている。2.3 – 3.1 g/dからカリウム摂取量を増加させることは収縮期血圧で4 mmHgの低下を引起し、これは多分、高血圧に関する死亡を2.5%低下させられる。


イギリス食品産業界の意見

 2003年以来、食品標準局と保健局は国民の食塩摂取量の75%を占める加工食品中の塩量を下げる方法に焦点を置いてきた。2006年までに、70の機関と会社が食品中の塩を減らすことに合意し、さらに、他の大手会社に合意するように圧力が掛けられた。この提案の目的は国民の平均塩摂取量を6 g/dまで下げることであった。

 食品飲料連盟(FDF)は食品内の塩含有量に関して知識に基づいて消費者が自主的に決定できるように食品標準局と密接に連携している。毎日のガイドライン勧告に沿って、食品の包装上に明確に見えるように塩含有量を表示することによりメンバーはこれを行っている。イギリスは他の国が従ってくるように標準を設定すると言う点で、世界をリードしているとFDFはコメントする。これまで大きなナトリウム低減はパンで行われ、朝食のセリアルは1998年から2007年までに43%量を減らされ、ビスケットとケーキは16 – 50%ナトリウムを下げ、肉製品と塩味スナックは25%低下し、スープとソースはそれぞれ24.5%と28.8%低下してきた。塩の量を急激に減らすことはできない。消費者の嗜好に合うように変化は緩やかでなければならない。製造者が永続させなければならない設定値はない。競争相手の製品を区別できる塩含有量であればよい。塩は微生物の増殖を阻止すると言ったように、多くの塩を取除いた時の安全性の説明も考えなければならない。

 ダブリンのアシュタウン食品研究センターによる2010研究は消費者の許容度に影響を及ぼす冷凍ラザーニア中の塩含有量をどのように減らすかを調べた。1.05%から0.3%の低下は味覚に差を感じないで達成できる。さらに0.2%の低下は、塩代替物、特にKClを入れると達成された。KCl塩代替物は食品中の塩含有量を下げる方法として可能であるが、苦味が加わる。この味はハーブや冷凍ラザーニアのスパイスのような他の成分でマスクできることをこの研究は示唆している。

 2009年に、食品標準局はレビューし、2012年の減塩目標を発表した。これらは主に肉、缶詰食品、パン、セリアル、チーズ、塩味スナックといった食品の80カテゴリー中の塩含有量を2010年初期目標のレベルを超えて減らすことに焦点を置いている。前の2004年目標は既にNHSと雇用者の年間1..5bnポンドを守り、国民の平均摂取量は2000/2001年以来0.9 gだけ低下したと言える。業界と密接に連携しながら社会宣伝を続けることは、現実的で達成できると思われる目標を食品標準局が達成するのに役立つと、彼等は言っている。

 ある人々は塩に対して感受性が強く、したがって、過剰のナトリウムは血圧を上昇させる。塩協会による研究は、塩摂取量が減った時、30%の人々は1 – 4 mmHgの血圧低下を経験し、20%は1 – 4 mmHgの上昇を経験し、50%は変わらないことを示した。

 アメリカ公益科学センター(CSPI)は、アメリカ食品業界の数メンバーは医学界のアドバイスを受け入れず、いくつかの会社は彼等の製品中の塩を2倍にも3倍にもしている。製品を保存し、風味を強化するためには、製品中の高い塩含有量は必須であると、多くの会社は主張している。それにもかかわらず、同じ食品製品の異なったブランドの塩含有量の範囲は著しく異なっており、いくつかの食品会社が問題を無視することを選んでいることを示唆している。

 

圧力団体の意見

 イギリスや他国の多くの消費者圧力団体(NGOs)は加工食品中の塩を減らすために、塩の保存特性は妥協すべきでないとの条件付で強力にロビー活動をしてきた。

 国民の食品供給で大きく獲得できる利益として述べられていることから、塩に対する食品産業の立場はNGOsによって激しく批判されてきた。会社の顧客が食卓塩の製造者を含んでいる公益会社に対して批判は塩と高血圧の関係を示す事実に対する激しい反対と関係している。

 圧力団体である塩と高血圧に関するコンセンサス行動(CASH)の主催者であるGraham MacGregorPeter Severも塩と加工食品業界を強く批判している。塩についての事実は本当ではなく、少なくとも行動を起こすには十分でなく、もっと研究が必要としている残りの食品業界、食品供給者、政治家、栄養学者、医者を確信させるために、業界は注意深く、金を掛けて長期間継続的に広報活動運動で戦っている。

 HeMacGregorによって編集された塩と健康についての2008年レビューと世界中の減塩プログラムの現在の経験は世界中の中程度の減塩を19世紀ヨーロッパの清澄な水や下水の公衆保健成功に関係付けている。

 2012目標は、イギリス政府が医者仲間に聞き、この情報を基にポジティブに行動することを示している、とNGOsはコメントしている。



新聞の意見

 放送メディアやイギリスの新聞の多くのジャーナリストは近年塩論争に関して激しくコメントしてきた。

 最初のインターソルト・データの発表以来の事例は1991年に書かれたSharon Kingmanを含んでおり、彼はMalcolm Law博士と仲間が発表したBritish Medical Journalの論文を触れており、彼等は塩摂取量と血圧との関係を見た初期の研究40件以上と食事中の塩を調べた78件の試験を再調査した。食事中の塩を減らすことは禁煙や脂肪を減らすのと同じ程度に疾患の危険率を減らせる方法であると、彼等は主張した。

 British Medical Journalの“インターソルト再訪”論文の発表に続いて、メディアの関心は新たになった。しかし、Journal of the American Medical AssociationFood and Drink Federationの両誌による前もっての発表で幅広く公表したにもかかわらず、Julian Midgelyと彼の仲間の対照的な結論はメディアからほとんど注意されなかった。

 ランセット(19983)で発表された研究は新聞のいくつかの論文で焦点となった。“一粒の塩を食べて死の研究”(インディペンデント、14.3.98)といったヘッドラインが科学的な事実の明らかな矛盾を強調していた。同じ論文に、Graham MacGregor(CASH)の見解が掲載された。そこで彼は、高い塩摂取量は高血圧の主原因であるという事実は“圧倒的”として述べた。

 デイリーテレグラフは減塩と抑制作用とのあるかもしれない関係を巡る論文を発表した。ラットに関する研究は、塩欠乏を起こすと、彼等は異常な行動をし始め、食べ物への関心を失い、前に楽しんでいた行動をしなくなる。これは、ナトリウムが動機付け、報酬、欲望について応答する脳領域と関係しているらしく、ヒトが塩辛い食品を切望することに対する説明を提供しているらしいことを示唆した。しかし、過剰のナトリウム消費量は抗鬱効果を表さない。

 他の2009年のヘッドラインは、既製品のサンドイッチのような外見上“健康に良い”製品内の驚くべき塩含有量についての論文を含んでいる。サンドイッチは明らかに9袋のクリップスと同じ塩含有量である。これは主要ブランドのサンドイッチを調査した“Which?雑誌”によって行われた調査に従った。

 

EUの政策

 栄養、運動、健康に関するヨーロッパのための戦略に関する2007EU白書で、減塩政策が公式化された。目的は4年間で2008年を16%低下させることで、レストランや持ち帰り弁当を含む12食品カテゴリーに焦点を置いている。これまで20ヶ国が参加に関心を示している。メンバー諸国は2009年までに高い塩摂取量に関する危険性について社会的な理解を促進させるよう努力した。

 

結論

 結論として、塩論争は健康に必要な最適量を巡る矛盾した勧告で活発になった。塩は食事の重大な成分であることは間違いない。しかし、西欧社会の多くでは塩を摂取し過ぎている。

 実行されている減塩政策は、ナトリウムが血圧に影響を及ぼすと報告されている信頼できる事実に支えられている。高血圧の危険性を下げるとともに胃癌、骨粗鬆症、肥満の危険性を告げるために食品標準局の勧告値6 g/dに従うことは適当であろう。

 イギリス栄養協会は、特に高濃度の塩を含む食品は一日一回に制限すべきであることを勧めている。いくつかのブランドは低塩食塩代替物を提供しており、食品表示規則の知識は塩の量を比較するために重要である。1.25 g以上の塩(0.5 gナトリウム)を含む既製食や0.75 gの塩(0.3 gナトリウム)以上を含んでいる個別の食品はBDAによって防止されている。