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塩にスポットライトをあてる:どれくらいが多過ぎて、

どれくらいが少な過ぎる?

Spotlight on Sodium: How much Is Too Much, and How Little Is Too Little?

By Judith C. Thalheimer

Today’s Dietitian November 2014

 

 事実がある:塩摂取量の多い人々は高血圧になり、心血管疾患の危険率を増加させる傾向がある。しかし、どれくらいだと多過ぎるのか?そしてどれくらいだと少な過ぎるのか?2010年のアメリカ人の食事ガイドラインは、全人口が5.8 g/d以下に制限し、危険率の高いグループでは3.8 g/d以下に努力ことを勧めている。アメリカ心臓協会(AHA)は全ての人々に3.8 g/dの目標値を支持している。しかし、2013年の医学研究所(IOM)報告書はそれらの勧告値の一部を疑問視しており、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表された新しく強力な研究からのデータは論争を煽っている。塩摂取量の勧告値を巡ってどうしてそんなに多くの混乱があるのだろうか?そして栄養士や他の保健専門家達はクライアントや患者に何をするようにアドバイスするのだろうか?

 

アメリカ人と塩

 平均的なアメリカ人は8.6 g/d以上の塩摂取量である。それはAHAが勧めている3.8 g/d2倍以上である。51歳以上の人々と黒人または高血圧、糖尿病、慢性腎臓疾患の人々は年齢に関係なく塩の血圧上昇効果に応答するので、公式な勧告値はもっと低い3.8 g/dに設定されている。アメリカ合衆国人口の約半分がこの低いカテゴリーに入る。AHAは予防手段としてこの低い目標値を目指すように勧めている。“人々は加齢に連れて血圧が上昇する、”とジョーンズ・ホプキンス大学の医学部教授でAHAの代表者であるローレンス・エイペルは説明する。“我々の90%は高血圧になる。そうならないように予防するためには、皆が高い危険率を考える必要がある。”人々は食事にどれくらいが多くの塩が含まれているかを知らないことを最近の調査は示唆している。調査した1,000人のほぼ97%が毎日どれくらいの塩を摂取しているかを推定できないか、またはしばしば2.5 g/dと摂取量を過少に見積もっていた。

 この過剰な塩摂取量は全て重大な健康に関連していることを科学は明らかにしている。塩を摂取し過ぎることは脳卒中、心不全、骨粗鬆症、胃がん、腎臓疾患と関係している。塩は過剰な体液を保持し、血圧を増加させる。高血圧は心血管疾患と死亡について最大の危険因子の一つであるが、それは修正できる。減塩とカリウム摂取量増加が高血圧に取り組む最も一般的な戦略である。

 

矛盾したエビデンス

 平均的なアメリカ人の塩摂取量が高過ぎるとの論は少ない。“大多数は過剰な塩を摂取しており、血圧と心血管疾患危険率を下げるために減塩に利益を得られる、”とエイペルは言う。しかし、どれくらい低くするかには論争がある。“多過ぎる塩は悪い、しかし、少な過ぎる塩摂取量も同じ様に悪いらしい。”とラトガーズ大学の生物医学と保健科学の学部長であるブライアン・ストロムは言う。2013年に、疾患管理予防センター(CDC)は低い塩摂取量は健康リスクを増加させるかも知れないことを示す研究を緊急にレビューするようにIOMに要請した。人口の減塩結果に関するIOM委員会の結果を主導しているストロムは、委員会が血圧だけでなく、全ての健康結果を見ていることを説明している。“減塩は血圧を下げるが、高塩食から中塩食に変わった時、血圧に及ぼす塩の効果を除いても、心臓の結果は良くなる。その後、中塩食から低塩食に変わった時、血圧は下がり続けたが、本当の臨床結果に関する利益はなかった。事実、非常な低塩食の人々の心臓発作と他の悪い臨床結果の率は増加するように見える。”

 高塩摂取量は確かに心血管疾患の危険率と関係しているが、5.8 g/d以下の塩摂取量がアメリカ合衆国人口の全体で心疾患、脳卒中、他の死因にどんな影響を及ぼすかを明らかにするための健康結果に関する良いデータは十分にないと、IOM報告書は結論を下した。特に、いくつかのデータは有害であるかもしれないことを示唆している低い塩摂取量からの有益性を示すデータはないことを報告書は明らかにした。高い危険率グループについて直接的な健康結果に関する研究を調べた時、“サブグループが全人口の残り以上に何らかの異なって取り扱われるべきエビデンスはない”と委員会は結論を下した、とストロムは言う。“したがって、結局、エビデンスは3.8 g/d以下に塩摂取量を下げる勧告を支持しない、”と彼は結論を下している。

 しかし、全てのアメリカ人は3.8 g/d以下の塩摂取量に努力すべきであると言う勧告をAHAは傍観している。“IOM報告書はエビデンスの総合的なレビューではなかった、”とエイペルは言う。“それはある種の研究、すなわち、観察的な疫学研究に基づいていた。委員会かこれらの研究の限界を承知していた。興味深いことに、それは高塩摂取量と高血圧との関係に関するエビデンスをレビューしなかった。減塩の血圧低下効果を考慮しないで塩の健康効果に関して決心できない。”DASH食試験で6.4 g/dから3.8 g/dに減塩した人々は8.4 g/dから6.4 g/dに減塩した人々よりも血圧を下げた。

 20148月に、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの二つの研究は非常に低い塩摂取量についてより多くの疑問を呈した。PURE研究は17ヶ国で100,000人以上で摂取量を推定するために尿試料でナトリウムとカリウム量を用いた。一つの解析で、研究者達は死亡危険率および心血管疾患と排泄量を比較した。7.6 g/dから15.2 g/dの推定された塩摂取量はもっと高い、または低いいずれかの推定塩摂取量よりも死亡および心血管疾患の危険率の低下と関係していた。もう一つの研究はナトリウム排泄量と血圧を見た。参加者のわずか4%がアメリカのガイドライン以内の塩摂取量と推定されたが、塩摂取量はこれらの人々では血圧と関係してなかった。これらの研究の解析によると、結果は、血圧低下のための人口全体の戦略として減塩の有益性について疑問もたらしている。著者らは彼等の研究に限界があることを承知している。これらのような観察的な疫学研究は誤解に導くことをエイペルは強調している。“これらの大規模な研究が高品質の印象を与えるが、それらは大きな方法論の問題を持っている。塩摂取量を推定することは難しい。これらの新しい研究で行われたようなスポット・テストで行うのではなく、24時間にわたって多数の尿試料を取らなければならない。この種の研究では間違った結論に達する危険率が高い。”

 非常な低塩摂取量を勧める他の関心事がある。“この場合、完璧さが良いことの敵であると私は恐れている。わずか3.8 g/dの塩を摂取することは非常に難しい。摂取量を3.8 g/dまで下げようと試みて失敗すると、人々はあきらめてしまうかもしれない”とストロムは言う。それを今日の食品環境で取り扱うのは思わしくないとエイペルは言う。人々の塩摂取量の75%は加工食品から来ており、平均的なレストランのサンドイッチは2.5 g以上の塩を含んでいる。スクラッチブックから全ての食事を調理しないでわずか3.5 g/dを摂取することは難しい。総合的な栄養問題もある。IOM2004年に塩について最初の食事参考摂取量を作った時、3.8 g/dは十分な摂取量として設定された。“人体は生きるためにわずか1.3 g/dしか必要としないことを我々は知っているが、その量では我々の食事で必要とする他の栄養素を十分に摂取することは不可能である;3.8 g/dは適切な栄養を確保するために必要な最低量と思われた、”とストロムは言う。それなのに3.8 g/d以下を目標にするよう人々に奨励して彼等の総合的な栄養保健を危険に曝すのだろうか?エイペルはノーと言う。“3.8 g/dで他の栄養素を得ることは特に、加工食品を避ければ難しくない。DASHナトリウム臨床試験は低い塩摂取量でも健康的でバランスのとれた食事を提供できる。”

 

もっと大きい問題

 栄養と食事療法アカデミーの代表者であるマリサ・ムーアによると、塩勧告値を巡る論争は“複雑で、数十年も続いている。確たる答えがないようにも思える。問題は、総合的な勧告についての研究がないことである。”エイペルは同意する。“問題の部分は、質の良い研究を行うために多くの努力と資金をつぎ込んでいることである、”と彼は言う。

 一方、多分、数を巡る論争はより大きな問題を曖昧にする。“一括して考える時、エビデンスは塩摂取量の増加と心血管疾患の危険率の増加とを関係させている、”とCDCの政策解析者/連邦契約者のジェシカ・リー・レビングスは言う。“現在の塩摂取量からの減塩は公衆保健を改善するだろう。”

 “塩の場合、問題の一部は、我々が数に焦点を置いていることである、”とエイペルは言う。“ある程度まで、数は目標からの転換となっている。重要なことは過程である。何らかの変化は良い変化である。”メッセージが数を超えていることにストロムは同意する。“人口の視点から、メッセージは塩を摂り過ぎない、または取らな過ぎないことで、現在、摂り過ぎておれば、減塩を心掛ける。”とストロムは言う。

 

ほとんどの塩はどこから来るか

 減塩するためには、2010年のアメリカ人の食事ガイドラインは塩含有量の少ない食品を選ぶために栄養表示を使う、より新鮮な食品全体を食べ、加工食品を食べない、家庭で調理する、レストランで塩含有量の少ない料理を頼む、と言ったことを勧めている。アメリカ人の食事でほとんどの塩は塩振出器からではない。“我々が摂取するほとんどの塩は食品雑貨店で買って調理するために家に持ってくる成分に既にあることを覚えておくことは重要である。減塩するためには表示をよく読み、塩含有量の少ない製品を選ばなければならない、”とレビングスは言う。

 それらの表示は驚くほど多くの情報を含んでいる、とムーアは言う。“一袋のポテト・チップスはサラダ・ドレッシング2匙分の塩を含んでいる。そしてそれは警戒しなければならない包装食品ではない、”と彼女は言う。“デリーの食事は本当に高く、チーズや他の乳製品のようないくつかの食品は自然に塩が多い。私は塩含有量の少ない選択としてスイスのチーズを勧める。”しばしば問題の食品の塩含有量ではなく、その食品の摂取量である。“アメリカ人の食事で一番の塩供給源はパンやロールケーキである。それらは必ずしも塩の多い食品ではないが、沢山食べるので実際には塩が多くなる、”とレビングスは言う。

 

風味を強化する代替物

 アメリカ人の味覚は塩味に慣れているので食品の塩味をあまり感じない。味覚を変えるために、塩味以外の味にする多くの異なった方法があることをムーアはクライアントに教えている。“私は調理が好きで、塩は美味しくするために重要であると思っている。クライアントに野菜摂取量を増加させることが重要で、少し振り掛けた塩は野菜を美味しくする、”とムーアは言う。彼女は仕上げ剤として塩を使うことを勧めており、調理の最後に塩を加える。塩を加えたサラダ・ドレッシングで食品をマリネするまたは調理されたマリネを買ってくる代わりに、ムーアは柑橘類ジュースを勧める。“味付けされた酢も同じ様に良い物である。今では多くの製品がある。アジア・フェアーでは、米酢とごま油でマリネ作りを試みている。台所で作って見て下さい、”と彼女は言う。塩がなくても唐辛子は美味しくするし、ハーブやスパイスも食品を美味しくする方法である。しかし、ハーブやスパイスの味で全ての塩を無くすることは正しい方法ではないかもしれないとムーアは注意する。“新しい味を作り始める時には塩を50%減らす、または25%減らすことを私は勧める。そして食品が持っている味を実際に気付く。”

 

個別化された勧告値

 ゆっくりと減塩を進めることが賢明であるが、勧告とアドバイスは個別に調整されるべきである。“理想的な塩摂取量は集団毎や疾患状態でも異なる。私は誂えられた栄養解決策を提供するように登録栄養士を勇気付ける。”とムーアはいう。健康な集団でも必要性は変わる。

 “[オリンピック金メダリスト]のミカエル・フェルプスは毎日10,000カロリーを摂取する。彼が3.8 g/dの塩摂取量に制限するわけがない。科学があり、実用的な考察がある、”とエイペルは言う。合理的な目標の設定は、クライアントがどの段階におり、段階的に変更させていく目標を彼等に与えて実行させるためである。加工食品やレストラン食の高い塩含有量は挑戦を変えさせる。

 いくつかの介入はあまり大きな個人の変化を要求していないとエイペルは指摘する。トランス脂肪酸摂取量の低下は習慣ではなく、加工食品を変化させることで達成された。“食品供給ではアメリカ人の高塩摂取量は驚くことではない。我々が製品の減塩に向けて食品産業界を少しずつ進めて行けば、大きな差を作り出せる、”と彼は言う。いくつかの会社が呼びかけに応えてくれた。例えば、スパゲッティ・ソースの低塩分製品は既に店で買える。

 

食事品質がゴール

 しかし、クライアントに減塩させる手助けをすることだけが全ての答えではない。高い品質の食事をすることに集中して、栄養価の高い食品に焦点を当てるべきである。“総合的な食事の質について塩は多くのことを決める。塩辛い食事をすれば、それはしばしば食事が栄養的にバランスを取れていないサインである、”とムーアは言う。総合的な食事を改善することが最も基本的な勧告である。PURE研究はナトリウムと同じようにカリウムに注目した。

 彼等の結果に基づいて、カリウムの高い高品質の食事をしながら減塩することは、減塩だけよりも大きな健康利益を達成できるかもしれない、と著者らは提案している。血圧に及ぼす塩摂取量の効果は背景の食事に依存しているかもしれないことを彼等の結果は示唆している。同様に、全体的な食事パターンが血圧に影響を及ぼすことをDASH研究は示した。果物野菜の摂取量を増加させるようにクライアントに奨励することは彼等の心血管疾患危険率を下げるのに有用である。両方とも自然にナトリウム摂取量を下げ、カリウム摂取量を上げ、数多くの他の認識されている心臓に良い性質を持っている。

 結局、塩摂取量の勧告に関するコンセンサスは食事の質を改善し、過剰な塩摂取量を減らす一般的な目標よりも重要でない。塩摂取量を下げる健康に良い食事のために個別化された計画を作ってクライアントと一緒に作業することは彼等の血圧と高血圧のような長期的な健康結果の総合的な危険率に大きな影響を与える。現在の研究状態や勧告に関する疑問に関係なく、“過剰な塩摂取量を減らすことは健康に良いことには何の疑問もない。人々は表示を読み、塩含有量の高い食品を避け、多くのことと同じように中庸が鍵であることを忘れるべきでない、”とストロムは言う。