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ナトリウム・サイクル

宇宙シミュレーション参加者でナトリウム貯留と排泄の
週間リズムと月間リズムを研究者達は発見した

The Sodium Cycle

By Sabrina Richards

TheScientist January 8, 2013

 

 ナトリウム摂取量が急に多くなっても、ナトリウム排泄量の増加で補償するので、体内のナトリウム量、水、血圧はかつて比較的安定していると信じられていた。しかし、Cell Metabolismに今日(18)発表された研究によると、ナトリウム摂取量とは関係なくナトリウム量はホルモン的に制御されたリズムに従っているようだ。

 火星へ行くシミュレーション・ミッションを行っている男性の制限された食事と不自然な環境を利用して、ナトリウム摂取量が一定でも彼等のナトリウム量は大体6日から9日の長いサイクルで上がったり、下がったりすることを研究者達は発見した。

 結果はナトリウム収支の“現在のドグマとは少し違っている、”とミシシッピー大学の内分泌学者であるクリスチャン・コッホは言った。彼は研究に参加していなかった。

 人々の塩摂取量を管理することは現実の世界では難しいので、ドイツのフリードリッヒ-アレクザンダー大学のジェンス・ティツェはヨーロッパ宇宙機関の火星500宇宙シミュレーションに参加している男性を研究する好機に飛びついた。男性は窮屈な居住空間に似せるように設計された環境で数ヵ月間過ごし、火星への旅の業務を禁止した。彼等の食事は厳密に管理され、塩収支と腎機能に関与するホルモンやナトリウムの変化について尿をモニターした。

 これらはアルドステロンを含んでおり、そのステロイド・ホルモンの機能は塩の再吸収と血圧を制御する;そして他のステロイド・ホルモンであるコルチゾールはアルドステロンとして同じ受容器と結び付いているが、コルチゾンに変換されることによって腎臓内のこの受容器を過剰に刺激することから妨げられる。コルチゾールとコルチゾンの比をモニターすることは腎臓の健康を判断する代わりとなる、と論文の先任著者の一人であるフリードリッヒ・ルフトは言った。

 研究者達は2つの異なった火星500シミュレーションの105日と520日続いた全期間について全ての尿を集め、体重、血圧、全体重ナトリウムを測定した。塩6 g(アメリカ保健福祉省が勧めている最高値)9 g12 gのいずれかを含む食事を食べた。12 gはヨーロッパや北アメリカのほとんどの人々が毎日摂取している量に近い。しかし、塩摂取量に関わらず、ティツェと彼の同僚は、毎日のナトリウム()排泄量はシミュレーション期間中幅広く変化した。

 ナトリウム排泄量はパターンに従っているように思えた。そのサイクルは一般的な24時間周期のリズムよりは著しく長かった。520日火星シミュレーションの男性では、ナトリウム排泄量リズムは7 – 9 日間のサイクルで変化した。興味深いことに、6日間毎に夜勤になる105日シミュレーションに参加した男性は6日間サイクルに従うナトリウム排泄量リズムで、睡眠/覚醒サイクルはこのパターンを制御することに役立つらしいことを示唆している。

 体内の全ナトリウムも規則的なサイクルに従っているようにも思えるが、リズムはもっと長く、多分月単位で、したがって、男性は正確なパターンを決定するに十分な長さに従っていなかった、とルフトは言った。例えば、このサイクルが100日であれば、“サイクルを見出すために本当に火星に行く必要がある。”と彼は述べた。

 夜勤もアルドステロン値を押し上げるように思えることも研究者達は知った。アルドステロンはナトリウムを体内に保持するように働き、それによって血圧上昇をもたらす。結果は現実の条件下で反復されるべきであるが、多分、“夜勤の人々は夜勤でない人々よりももっとナトリウム摂取を控えるべきである”ことを結果は示唆している、とスイスのベルン大学病院の腎臓病学者であるマーカス・モハウプトは言った。彼は研究に参加していなかった。

 体がストレスを処理するのに役立つのが主要な機能であるコルチゾールはナトリウム排泄量と体内の総ナトリウム量を制御するかもしれないこともルフトとティツェは気付いた。アルドステロンとコルチゾールは体内で他の効果を持っており、アルドステロンの能力は脳で塩嗜好を制御する、とコッホは言った。塩摂取量の増加がこれらのホルモンを変えるとすれば、広範囲にわたって健康に影響を及ぼす、と彼は述べた。

 しかし、ナトリウム排泄量は日々幅広く変わると言う記述は新しくない、とロンドンのウォルフソン予防医学研究所の心血管医学のグラハム・マクレガー教授は主張した。“広い視点から、研究は全く影響を及ぼさない。”とマグレガーは言った。