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レビュー論文

ハロセラピー - 有益性と危険性

Halotherapy – Benefits and Risks

By Evgeniya Vladeva, Liliya Panajotova

Scripta Scientifica Salutis Publicae 2018;4:18-22

 

要約

 塩は、その健康利益と治療効果のために様々な文化で世界の様々な所で何千年間も使われてきた。ハロセラピーはハロゼネレイターと呼ばれる特別な装置で環境を作り上げる乾式塩療法である。最近の数十年間に、ハロセラピーは世界中の多くの人々から信頼を得てきて、多くの国々に素早く広がってきた。治療のポジティブな結果は1年間以上続く。薬物療法のように他の物理療法をハロセラピーと組み合わせる可能性はハロセラピーを

軽症と中症の気管支喘息、慢性閉塞性気管支炎、肺炎後の状態および皮膚疾患で治療法の選択をできるようにする。居心地の良い環境でこの治療の実施と共に取るに足らない副作用は成人患者と子供の精神的感情状態に及ぼす有益な効果である。

 論文の目的は肺疾患と皮膚疾患および幾つか他の健康状態を治療するための代替法としてハロセラピーの有益性を示すことである。主な治療因子、ポジティブな効果、ハロセラピーの適用のための禁忌そして治療中に起こるかもしれない幾つかの副作用だけでなく技術と適用法を述べる。

 

はじめに

 塩はその健康利益と治療効果のために様々な文化で世界の様々な所で何千年間も使われてきた。治療効果はポーランドの治療専門家フェリクス・ボツコウスキーによって1843年に初めて証明された。彼は、ポーランドの塩鉱山で働く人々が過酷な労働条件と十分な食糧の不足にもかかわらず、優れた健康状態にあることに気付いた。これに加えて、残った人々の間でしばしば観察される風邪や呼吸器疾患に彼等はほとんど罹らなかった。このことは医者に研究を行うことを促し、これは全て鉱夫達が毎日塩で飽和した空気を呼吸しているためであると彼は立証した。したがって、ポーランドや西ヨーロッパの塩鉱山は次第に人気のあるサナトリウムとなり、世界中から訪問者を引き付けた。新しい治療法が確立された-ハロセラピー(塩治療法)。後に多くの場所、特に東ヨーロッパで、塩鉱山を訪れ難さと高価な費用のために不快な気持ちになるために、人工的な塩部屋や洞窟が建設された。

 最近の数十年間で、ハロセラピーは世界中の多くの人々の信頼を得て、西ヨーロッパ、カナダ、イスラエル、北アメリカ、および多くの他の国々に素早く広がってきた。ハロセラピーの効果を証明した多くの研究と様々な疾患への適用が発表されている。

 論文の目的は肺疾患と皮膚疾患および幾つか他の健康状態を治療するための代替法としてハロセラピーの有益性を示すことである。

 

ハロセラピーと塩治療法-何が違う?

 塩治療法は乾式か湿式である。ハロセラピーは、ハロゼネレイターと呼ばれる特別な装置で供給される環境で提供される乾式塩療法である。ハロゼネレイターは微細な乾燥塩エアロゾルを塩部屋に分散させる。塩療法協会によると、2種類の塩部屋-アクティブとパッシブがある。アクティブ塩部屋はハロゼネレイターとして知られている特別な装置で提供される。それには純粋な塩化ナトリウムを入れ、塩部屋の空気に微粒子を分散させる。この種類の塩療法はハロセラピーと呼ばれる。湿式塩療法はうがい、塩水の飲水、塩浴または鼻洗浄を含む。

 他方、多くのSPA(療養温泉)には死海、ヒマラヤ、岩塩、地中海、カリブ海、などの様々な種類の塩で大量に満たした塩部屋がある。これらの部屋にはハロゼネレイターはなく、塩洞窟に見えるように作られているが、自然の塩洞窟にある同じ塩粒子を含む空気を提供していない。それらはパッシブ塩部屋として知られている。温度、湿度、気流は管理されているが、塩化ナトリウム濃度は乾式塩部屋よりも低く、これらの部屋に滞在することはハロセラピーとは考えられない。パッシブ塩部屋はリラックス、黙想に適した環境を提供し、ヒトの心理的感情的状態を改善する。多くの科学的調査の結果として、塩療法は呼吸器系の上部と下部への塩粒子吸入と皮膚への微粒子の浸透に基づいていることが証明されている。これはハロゼネレイターの使用によってのみ生じる可能性がある。そのことはアクティブ塩治療法とパッシブ塩治療法との差を明らかにしており、ハロジネレイターは塩療法である。

 

ハロセラピーの技術

 この技術の基盤はハロコンプレックスである。ハロコンプレックスはハロゼネレイター、壁、塩で覆われた床でできた部屋からなる。ほとんどの場合、壁と床は海塩でできており、実際の治療を提供しない。壁や床を覆う特別な塩は空気用の緩衝剤として作用する。乾燥塩化ナトリウムは特別な噴霧器-ハロゼネレイターによってこの部屋で生産される。ハロゼネレイターは塩部屋にきれいで乾燥した塩化ナトリウムの負に荷電した粒子で飽和された空気の流れをもたらす。ハロゼネレイターは部屋の温度、相対湿度、エアロゾルの質量濃度をモニターするマイクロプロセッサーで供給された。

 

適用法

 ハロセラピーを行うとき、患者が塩部屋または洞窟に45分間入り、塩で飽和された空気を呼吸する。塩粒子は副鼻腔と鼻腔だけでなく最小の気管支まで運ばれる。ハロセラピー部屋は低湿度、心地よい温度帯-22 – 24℃の空気で満たされている。部屋の低湿度は非常に重要である。特別な衣類や他の器機は必要ない。患者が裸足の場合、より効果がある。治療回数は患者の状態と治療する疾患による。それぞれ45分間で12回から20回であり、喘息、気管支炎、副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性疾患などの慢性肺疾患患者については短時間が勧められる。

 主な治療因子は2 – 5 ミリミクロンのエアロゾル粒子の塩化ナトリウムである。様々な肺疾患患者124人を含むチェルビンスカヤによる研究は、15 20日間毎日塩部屋に1時間滞在後に大多数の参加者で臨床状態の著しい改善を示した。同様の結果は慢性閉塞性気管支炎患者49人の化学発光試験に基づく別の研究でも観察された。ハロセラピーはフリーラジカルの酸化にポジティブな変化をもたらし、局所免疫や病気の臨床状態を改善する。

ハロセラピーの作用機構は多種多様である:

  ムコ多糖類を加水分解する

  抗菌性

  坑炎症性

  免疫調節

  減感作

ハロセラピーは深刻な副作用のない自然で安全な治療である。この方法は機能を改善し、呼吸器系から毒性物質を除去し、皮膚の機能と見栄えを改善し、免疫系を強化し、ストレスを緩和することによって人々の総合的な健康のために非常に有益である。

 吸入された乾燥塩粒子は殺菌性で、湿らせ坑炎症性質がある幾つかの科学的な研究からのエビデンスがある。それらのことは全呼吸管の炎症を減らし、気道を広げるらしい。塩粒子吸入は閉塞性肺疾患の悪化で観察される呼吸器不全のパラメーターを素早く改善する。乾燥塩粒子は粘液の移動、残留している毒性物質と外来アレルギー源の除去を促進させる。したがって、塩治療の適用は高い酸素摂取量で呼吸器系を清潔にし、エネルギーを増し、免疫系を改善する。

 ハロセラピーは癒やしや美容効果を提供する皮膚の表層や深層に影響を及ぼすことを科学研究者達は確認してきた。これは皮膚細胞のイオン・チャネル活性を増加し、電気生理学的活動を活性化し、皮膚の保護的な性質を改善する。ハロセラピーはpHを正常化させ、表皮と真皮の修復と再生のプロセスを刺激し、皮膚の硬さを増す。乾燥塩粒子は皮膚の微小循環と細胞膜活性を改善し、皮膚再生と弾力性を強化し、しわや浮腫を軽減する。

 

ハロセラピーのポジティブな効果

 塩療法の有効性は主として3つの理由による:

1.塩には抗菌性、抗真菌性、坑炎症性効果がある。( 塩部屋の環境は一番清潔に操作されている部屋よりも3倍無菌性であることが確立されてきた。)

2.塩は陰イオンを放出する自然能力を持っており、陽電荷を中和する。

3.塩は乾燥していると超吸湿性である。

 

使用の適応症:

 ハロセラピーは次のようなほとんどの呼吸器疾患で指摘されている:

 呼吸器管感染

 喘息

 アレルギー性慢性気管支炎

 頻繁な風邪

 咽頭炎

 副鼻腔炎

 鼻炎

 扁桃腺炎

 急性期後の肺炎

 嚢胞性繊維症

 ハロセラピーは症状に迅速に解決できる数多くの呼吸器疾患にポジティブな影響を及ぼす非常に有効な方法であり、器官の免疫と保護能力を増加させると共に、肺換気と過労の耐性を改善することが証明されてきた。

 免疫指標と心肺指標が有毒な粉塵性気管支炎と診断された88人の冶金者で研究された。行われた治療は正弦波変調電流と肋間領域の超音波、およびマッサージとハロセラピーを組みわせた呼吸運動からなっていた。患者は3グループに分けられた:

1. ハロセラピーと超音波治療

2. ハロセラピーと正弦波変調電流処理

3. ハロセラピーだけ

 学療法器機の使用とハロセラピーの組み合わせは塩治療の有効性を86.5%増加させることを研究は証明する。電流法とハロセラピーの組み合わせは有毒な粉塵性気管支炎における閉塞性症候群の治療と予防の両方に使われる。

 皮膚細胞イオン・チャネルの活力を増加させ、電気生理学的活動を活性化し、皮膚の保護的な性質を改善する表層および深い皮膚層に対するハロセラピーの影響のために、この治療は癒しと美容効果を提供できる。ハロセラピーはpHを正常化させる。ハロセラピーは表皮と真皮の修復と再生のプロセスを刺激し、その結果、皮膚の硬さが増加する。乾燥塩粒子は皮膚の微小循環と細胞膜活性を改善し、皮膚再生と弾力性を強化し、しわや浮腫を軽減する。ハロセラピーは以下のような皮膚疾患に適用される:

 乾癬

 湿疹

 皮膚炎

 にきび

 酒

 爪真菌症

 皮膚の老化

 ハロセラピーは快適で居心地良い環境で行われ、患者の精神的感情的状態に有益な効果を発揮する。この治療は以下を含む幾つかの心身症で使われる:

 ストレスと疲労

 頭痛と免疫反応性も高めるため

 塩療法はいくつかの小児疾患の追加治療として勧められる。ハロセラピーは安全で、非侵襲的で、副作用や潜在的な健康リスクはない。子供達はより早く、より集中的に反応することを臨床研究は証明した。頻繁に病気の子供達の予防のためにハロセラピーの高い有効性と慢性的な耳、鼻、喉の疾患、呼吸器と皮膚の問題で影響されている子供達の急性呼吸器疾患の治療のためにハロセラピー使用の可能性についてエビデンスがある。この治療は子供達に簡単に実行できる。子供達が落ち着いて快適に過ごせるおもちゃや家電製品を備えた特別な塩部屋がある。

 

副作用

 治療中に幾つかの副作用が観察される、例えば、咳の増加や分泌物の増加で、それは実際にはポジティブな効果と考えられている。呼吸器管を清浄にし、特定の刺激物に対する生物の変化と適合の合図であるからだ。

 皮膚炎は希な副作用で、通常、3回または4回までに解決される。粘膜炎症の結果としての結膜炎が希に観察される。それは治療を中断する理由ではない。そのような場合、塩部屋で過ごすときには目を閉じ続けることを勧める。

 禁忌には甲状腺機能亢進症、活動性結核、高度高血圧、心血管および呼吸不全、急性期血液障害、伝染病、発熱、開放創と悪性疾患がある。この治療を閉所恐怖症患者に処方するときには注意が必要である。

 

結論

 ハロセラピーは様々な呼吸器疾患や皮膚疾患で代替治療法である。些細な副作用がある。患者の精神的感情状態に有益な効果を及ぼす快適で居心地の良い環境で行われる。この治療法は子供達に容易に実行できる。ハロセラピーのポジティブな結果は1年間以上続く。それと薬物療法と同様に他の物理療法と組み合わせる可能性は、軽症と中症の気管支喘息、慢性閉塞性気管支炎、肺炎後の状態および皮膚疾患でハロセラピーを治療法の選択にできるようにする。