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高エネルギー密度全固体ナトリウム・イオン電池用の

ユビキタス元素から構成される塩化物電極

Chloride Electrode Composed of Ubiquitous Elements for High-Energy-Density All-Solid-State Sodium -Ion Batteries

 By Naoto Tanibata, Naoki Nonaka, Keisuke Makino, Hayami Takeda and

Masanobu Nakayama

Scientific Reports 2024; 14:2703   2024.02.01

 

要約

 エネルギー密度が高く、安価で安全なエネルギー貯蔵電池は、需要が高い(電気自動車や送電網レベルの再生可能エネルギー貯蔵など)。本研究では、ユビキタス元素であるNaFeCl4を全固体ナトリウム・イオン電池の電極材料として利用することに着目した。単斜晶系NaFeCl4は、最も資源的に魅力的なFe酸化還元材料であると期待されており、熱力学的にも安定している。単斜晶系NaFeCl4電極のFe2+/3+酸化還元反応は、塩素の貴な特性により、従来の酸化物電極(例:Na/Na+に対して1.5 VFesO3)よりも高い電位(Na/Na+に対して3.45 V)を持っている。さらに、NaFeCl4は、298 Kでの一軸プレス(382 MPa)で非常に高い変形能(ペレットの相対密度の99)を示す。NaFeCl4は、電解質を含まない電極系で333 Kで動作するため、安全性の高い次世代全固体電池を実現する。単純な粉末プレスのみを使用して、陽極当り281 Wh/kgという高いエネルギー密度を達成した。

 

はじめに

 持続可能な社会の実現に向けて、蓄電池の需要は年々高まっている。リチウム・イオン電池は、動作電位が高い(>3 V)ため、さまざまな携帯機器に使用されている。しかし、リチウムおよび酸化還元中心遷移金属(CoNiなど)の存在量が少ないこと、おびそれらの抽出に伴う土壌汚染などの環境への影響が問題となっている。これらの問題に対して提案されている代替解決策として、ナトリウム・イオン電池の使用が挙げられている。ナトリウム・イオン電池は、キャリア・イオンとしてのナトリウムを含むユビキタス元素で構成されており、高いイオン化傾向と安定した一価イオンなどのリチウムと同様の化学的特性を備えている。また、現在市販されているリチウム・イオン電池には可燃性の有機電解質が使用されており、電気自動車や大型蓄電池への応用が進む中で安全性が懸念されている。そこで、無機固体電解質を用いた全固体電池は安全性が高く、次世代電池として期待されている。さらに、全固体電池には電解液が含まれていないため、電解液に浸透する元素状硫黄や塩化物などの新しい電極材料を使用することができ、従来の電池を超えてエネルギー密度を高める可能性がある。

 塩化物は全固体電池の固体電解質として広く研究されている。広く注目されている酸化物や硫化物などの二価の陰イオンを含む化合物と比較して、塩化物など一価の陰イオンを含む陰イオン化合物は、拡散率が高いキャリア・イオンと限定的なクーロン相互作用を受ける。酸化物とは異なり、塩化物イオンは流出物と同様に、高い分極性と変形性を示す傾向がある。高い変形能力により、無焼結圧縮プロセスの使用が可能になり、全固体電池の製造に有利になる。緻密化のための焼結の使用の欠点は、副反応や元素の蒸発のため、特定の材料には使用できないことである。

 塩化物のさらなる利点は、硫化物(2.5 VLi/Li+)や酸化物(3.5 VLi/Li+)よりも高い耐酸化性(4.0 VLi/Li+)により、特に陽極において有望な電解質であることである。その起源は塩素の高貴な性質にある。この高い酸化耐性は、電極材料に使用される場合に高エネルギー密度に必要な高い作動電位の特徴である。前述したように、塩化物電解質は極性が高いため、液体電解質として使用した場合、電解液中の構成元素の溶解を引き起こすことがよくある。これにより、可逆的な充放電サイクルの回数が減少するため、電池のサイクル寿命に重大な影響を及ぼす。しかし、塩化物電極は固体電解質と組み合わせて使用すると溶解反応が抑制される。したがって、塩化物電極は、充電式全固体電池の高電圧陽極材料として使用するのに潜在的に適している。

 NaFeCl4には塩化ナトリウムと酸化還元中心の遷移金属としてユビキタス元素Feが含まれているため、本研究では全固体電池の電極材料としてNaFeCl4に焦点を当てた。NaFeCl4

ISCD25に登録されており、斜方晶系の結晶構造を持ち、塩化物イオンによって形成される四面体の中心にFeがある。Fe2+/3+酸化還元反応に基づく電極材料では、Na2Fe2(SO4)3は貴金属のため、従来の酸化物電極(Fe2O31.5 VNa/Na+)よりも高い電位(3.8 VNa/Na+)を示した。SO42-ユニットの高貴な特性(誘導効果がある)によるものであらからである。SO42-イオンによって誘発されたのと同じ効果が、より軽いCl-イオンにも期待され、電荷Fe2+/3+酸化還元対の放電特性は、NaFeCl4電極で評価された。この材料の理論容量は、NaFeCl4式単位当り1Na121 mAh/gである。また、電極複合体に電解質を添加しない電極を使用して全固体電池を組み立てた。従来の酸化物電極は変形能が低く、軟質硫化物電解質やその他の材料を添加することで製造できる。ただし、電解質の添加は電極複合体当りの理論エネルギー密度を低下させる効果があり、その場合、反応分布はより複雑になる。塩化物電極の場合、電極内の活物質は変形しやすい可能性がある。したがって、全固体電池では、固体電解質粉末を含まない電極複合体がエネルギー密度の点で従来の電池システムを超える可能性がある。

 

結果と考察

 一部省略。

 要約すると、ユビキタス元素で構成されるNaFeCl4電極は、高エネルギー密度と安全性を備えた低コストの蓄電池への応用について評価された。全固体電池は、塩化物イオンに由来する高い変形能力により、電解質を含まない電極を使用して333 Kで動作した。さらに、塩化物の誘導効果により、元素戦略の観点から最も魅力的なFe酸化還元反応(Fe2+/3+)高電位動作(3.45 VNa/Na+)が実証された。その結果、焼結や電極コーティング処理を行なわずに、従来のバルク型全固ナトリウム・イオン体電池としては優れたエネルギー密度(281 Wh/kg)を達成した。この研究は、電解質への溶出のためにこれまで評価が困難であった。高エネルギー密度電極材料としてのNaClベースの材料の可能性を実証する。